大型の額入り 教皇レオ13世のアグヌス・デイ 貝殻と金色のロープワークによる装飾 39 x 34 x 8センチメートル 1914年


アグヌス・デイ(蝋)本体のサイズ 11 x 9 cm

縁を含めた全体のサイズ 縦 39 x 横 34 cm  厚さ 8 cm


フランス  1914年



 縦 39センチメートル、横 34センチメートル、厚さ 8センチメートルと大きなサイズの額に入れたアグヌス・デイ。中心に置いたアグヌス・デイを、金色のロープ、パプロール(paperoles 渦状に巻いた紙片)、貝殻、ペルル・ド・ジャカンで飾っています。1914年に制作された工芸品です。





 「アグヌス・デイ」(AGNUS DEI) はラテン語で「神の子羊」という意味ですが、信心具「アグヌス・デイ」の本体は、ローマ、サンタ・クローチェ聖堂のシトー会修道院で製作された蝋製の円盤です。この蝋製円盤は、「ろうそく祝別の日」(キリスト奉献の祝日、聖母清めの祝日 2月2日)のために教皇に捧げられた蝋燭、及びローマの七つのバシリカで使われた復活祭の蝋燭を融かして作ったものです。16世紀以来行われている方式に則り、教皇が聖油とバルサム入りの水にこれらのろうそくを浸して祝別し、アグヌス・デイ用の蝋を得ます。アグヌス・デイを身近に置くと罪の赦しが得られ、厳しい気候や洪水、火事、疫病、悪魔、突然の死から守られるといわれています。

 アグヌス・デイは直径 1センチメートルほどの小さな物が多いですが、本品のアグヌス・デイはおよそ 11 x 9センチメートルと非常に大きく、「神の子羊」をカメオ状(浮き彫り状)に造形しています。アグヌス・デイの制作年は額全体よりも古く、教皇ピウス13世の祝福を受けた蝋を使って 1903年に制作されています。





 アグヌス・デイの表面には、十字架を持った子羊が、「ヨハネの黙示録」五章に記されている書物の上に乗っています。十字架は旗竿になっており、十字架をあしらった軍旗型の旗が付いています。子羊をアーチのように取り囲んで、「エッケ・アーグヌス・デイー・クイー・トッリス・ペッカータ・ムンディー」(ECCE AGNUS DEI QUI TOLLIS PECCATA MUNDI) と書かれています。これはラテン語で「見よ。世の罪を除き給う神の子羊」という意味で、洗礼者ヨハネがイエス・キリストを見て発した言葉(「ヨハネによる福音書」 1: 29)です。

 この面の下半分にはレオ13世の紋章を中心に、「レオー・テルティウス・デキムス、ポンティフェクス・マークシムス アンノー・クイーントー・ウィーケーシモー、1903」(LEO XIII PONTIFEX MAXIMVS, ANNO XXV, 1903) と書かれています。これはラテン語で「教皇レオ13世 在位二十五年目である1903年に」の意味です。レオ13世 (Leo XIII, 1810 - 1878 - 1903) は 1878年に即位した十九世紀最後の教皇で、このアグヌス・デイを祝福して数週間後の 1903年 7月 20日に没しています。





 楕円形のアグヌス・デイは背景よりも高く突出しており、金色の紐とパプロールに取り巻かれています。「パプロール」 (paperoles) とは幅数ミリメートル、長さ数センチメートルのリボン状の紙片を巻いたもので、紙の切り口に金彩を施して金線細工を模しています。聖画等をパプロールで飾るのは 17世紀以来フランドルやフランス、ドイツで行われている方法です。





 アグヌス・デイに近いところにベビーパールが連なっています。このパールは模造真珠ですが、20世紀半ば以降によく見られるスペイン製の「マジョリカ」ではなく、フランス南部、オーヴェルニュで手作りされた「ペルル・ド・ジャカン」です。「ペルル・ド・ジャカン」(perle de Jacquin) はパリのロザリオ職人ジャカン (Jacquin) が 1680年頃に発明した古いタイプの模造真珠で、フランスでは 1920年代まで作られていました。





 アグヌス・デイの上部には雲形あるいはロカイユ風の帯が立体的に固定されています。帯には金色の箔が張られており、膠を混ぜたインクで次の言葉が記されています。

  Agnus Dei béni par Sa Sainteté Le Pape Léon XIII  教皇レオ13世聖下に祝福されたアグヌス・デイ





 アグヌス・デイの下部には金糸とペルル・ド・ジャカンで飾られた盾形の銘板が立体的に固定されています。銘板には金色の箔が張られており、膠を混ぜたインクで次の言葉が記されています。

  Souvenir du 14 Janvier 1914  1914年1月14日の記念





 この日付にどんな出来事があったのか不明ですが、おそらく洗礼か初聖体、結婚のいずれかを記念しているのでしょう。19世紀から20世紀初頭のフランスでは、結婚の際、本品のように奥行きがある額に造花を封入し、ルリケール風の記念物が作られることがよくありました。本品は桜色の貝殻を使って数多くの花を作っているので、結婚を記念するルリケール風の作例のようにも思えます。





 現在では「アグヌス・デイ」は作られなくなったので、アンティークの「アグヌス・デイ」は、いずれも貴重品ですが、とりわけ本品の蝋円盤は筆者がこれまでに見た中で最大のサイズです。蝋をはじめ全体の保存状態の点でも、周囲を取り巻く細工の美しさの点でも、本品は最も優れた作例のひとつです。

 本品の制作からおよそ半年後の 1914年 6月 28日、オーストリア=ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナント大公がサラエヴォで暗殺され、これをきっかけに第一次世界大戦が始まります。時のローマ教皇ピウス10世は、レオ13世を継いだ教皇ですが、未曽有の世界大戦勃発に衝撃を受けて、同年八月に死去します。第一次世界大戦では各国の軍人だけでも二千万人近くが戦死しましたが、特にフランスは国土が戦場となり、国中に戦死者、戦災死者、戦争寡婦、戦争孤児があふれました。本品が関わる新生児、子供、あるいは新婚夫妻の身の上が気になりますが、本品が子孫まで無事に伝えられたわけですから、このアグヌス・デイに祝福され、庇護されて、無事であったに違いありません。





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