マースレニコフ時計工場 《旧ソ連製 ズィム 2602》 直径44ミリメートルの特大サイズ 透明感ある緑色 コート・ド・ジュネーヴ装飾文字盤 1958 - 59年


ムーヴメントの種類 Зим 2602

ケースの直径 44 mm   風防と裏蓋を含む厚さ 11 mm



 1950年代末に製作された旧ソヴィエト連邦の時計。研磨機の回転によって、コート・ド・ジュネーヴ(仏 côtes de Genève /côtes droites / vagues de Genève)装飾を施した文字盤は、この時期のソ連製腕時計に見られる特徴です。





 本品のケース本体はクロムめっきを施した真鍮またはブロンズ製で、直径四十四ミリメートルと非常に大きなサイズです。斜めになったベゼル部分には、ミル(コイン周縁部のギザ)状の装飾が施されています。竜頭(竜頭)はベゼルの切り欠きに収納されて突出せず、竜頭に刻まれたミルの幅もベゼルのミル幅と一致して、視覚的統一性がよく保たれています。

 通常の腕時計において、バンドの取り付け部はケース外に突出します。しかるに本品のバンドはベゼル裏側の切り欠きに取り付けられており、本品はこの点でも洗練されています。バンドの取り付けはバネ棒式で、適合するバンド幅は十八ミリメートルです。十八ミリメートルは現代の標準的なバンド幅と同じで、通常のヴィンテージ・ウォッチ(十六ミリメートル)に比べて幅広ですが、本品は時計自体がたいへん大きいので、バンドが細く見えます。





 文字盤はグラデーションのある綺麗な緑色で、経年による古色は無く、時計製作時の状態を保っています。回転体を用い、手作業のバフ掛けで生み出されたコート・ド・ジュネーヴの装飾パターンが、柔らかな光を反射しています。

 共産圏の独自性は、インダストリアル・デザインによく表れます。時計もその例外ではありません。カラー文字盤の腕時計は、西側世界においては 1970年代に流行しました。男性用腕時計に大型ケースが流行したのも 1970年代以降です。しかるに 1950年代末に作られた本品において、これらの特徴は十数年先の西側のデザインを取りしています。





 現代の時計は中三針(なかさんしん)式といって、時針、分針、秒針がいずれも文字盤の中央に取り付けられています。しかしながら秒針を文字盤の中央に取り付ける加工は難しく、中三針式の時計は 1960年代に入って以降にようやく普及しました。1950年代以前の時計は、どの国で製造された物であっても、六時の位置に秒針が付いています。このような方式を小秒針式(スモール・セカンド式)といいます。本品も小秒針式です。

 文字盤の周囲十二か所にある長針五分ごと、短針一時間ごとの数字を、インデックス(英 index)といいます。本品のインデックスは白色のアラビア数字で、時計の文字盤用にデザインされた高視認性フォントによります。





 インデックスの様式には年代ごとの流行があります。西側諸国の流行でいえば、大体の傾向として、1940年代以前のインデックスはすべてアラビア数字です。1950年代の時計では、アラビア数字と線状のインデックスが混用されます。1960年代の時計では、線状のインデックスのみが使われます。

 本品は 1950年代に製作されたにもかかわらず、インデックスはすべてアラビア数字で、西側の時計と比べて保守的です。しかしながらその一方で、西側の時計であればムーヴメントに施すのが普通であったコート・ド・ジュネーヴ装飾を、ムーヴメントではなくカラー文字盤に施し、大きなアラビア数字を大胆に配した前衛的デザインとなっています。





 十二時のインデックスの少し下には、キリル文字の筆記体でズィム(Зим)と書かれています。ズィム(Зим)はザヴォティミェニ・マースリニカヴァ(露 Завод имени Масленникова マースレニコフ時計工場)から三文字を取って作ったブランド名です。マースレニコフ時計工場はモスクワから東南東に 870キロメートルほど隔たった都市サマーラ(Самара)にあり、1990年まで存続しました。

 文字盤の最下部にはズヂェーラナ・ヴェセセール(露 Сделано в СССР エセセール製)と書かれています。エセセール(СССР)とはサユース・サヴィエーツキク・サツィアリスティーチスキク・リスプーブリク(露 Союз Советских Социалистических Республик ソヴィエト社会主義共和国連邦)の略称です。





 ケース裏蓋はこじ開け式で、ステンレス・スティールでできています。





 本品の機械は「ズィム 2602」で、11 1/2リーニュの十五石手巻きムーヴメントです。本品の天符の下に、"Зим 2602" の刻印があります。

 時計マニアを自称する素人には、旧ソ連製の時計を不当に低く評価する人がいますが、筆者(広川)にはその理由がわかりません。ズィム 2602は、フランスのリップ社が設計したムーヴメント、リップ R26と同じもので、毎時一万八千振動(f = 18000 A/h)、パワー・リザーヴ三十七時間の極めてまともな機械です。ズィム 2602 は 1953年からおよそ半世紀に亙って作り続けられ、パビェーダ(Победа)、スラーヴァ(Слава)、ヴァストーク(Восток)、ラキェータ(Ракета)にも搭載されました。





 ズィム 2602 の天符はグルシデュール(Glucydur)製で、チラネジが有るものと無いものがあります。本品はチラネジが無いタイプです。ズィム 2602 のひげぜんまいは、外端を時計の裏蓋側に持ち上げた巻き上げひげです。巻き上げひげはアブラアン・ブレゲというフランス人時計師が考案した仕組みで、この人の名前を取ってブレゲひげ(Breguet hairspring, spiral Breguet)とも呼ばれています。巻き上げひげ(ブレゲひげ)が変形すると修正は困難ですが、本品の巻き上げひげ(ブレゲひげ)は歪みが無く、たいへん良い状態です。

 ズィム 2602 のオシドリは 1957年までがネジ式で、1958年以降はプッシュ式です。また円穴車のネジは 1959年までは二本で、それ以降は一本です。本品はオシドリがプッシュ式、円穴車のネジが二本ですから、製作年は 1958年ないし 1959年に絞られます。

 裏蓋を開けた写真はムーヴメントを動作させて撮影しています。振動する天環の軌跡がぶれていないことからも分かるように、天真に曲がりはありません。ひげぜんまいも良い状態で、天符は安定的に大きな振り角で振動しています。文字盤を外して地板側もチェックし、錆その他如何なる問題も無いことを確認しています。





 時計会社はバンドまで作っていませんので、アンティーク時計のバンドをお好みのものに取り替えても、アンティーク品としての価値はまったく減りません。本品にはイタリア製の新品のバンドを取り付けています。バンドは消耗品ですが、本品のバンド幅は現代の多くの時計と同じ十八ミリメートルですので、取り換え用のバンドは容易に手に入ります。

 時計は無料(追加料金無し)でオーバーホールをした後にお渡し致します。当店はアンティーク時計の修理に対応しております。アンティーク時計の修理等、当店が取り扱う時計につきましては、こちらをご覧ください。

 下記は本体価格です。当店の時計は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(三回払い、六回払い、十二回払いなど。利息手数料なし)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。





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電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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