極稀少品 《ホールマーク》 ア・シールド キャリバー 723 による手巻ドライバーズ・ウォッチ 1938年頃



 1938年頃に制作されたドライバーズ・ウォッチ。自動車運転者用として作られた時計ですが、普段に使うことも可能です。ドライバーズ・ウォッチはもともと男性用ですが、1930年代の時計は現代の時計ほど大きくなく、なかでもドライバーズ・ウォッチは手首の側面に装着するゆえに小さく作られていますので、女性にもお召しいただけます。バンドは茶や赤などお好きな色に交換可能です。八十年前のアンティーク品にもかかわらず、保存状態はきわめて良好で、きちんと動作します。





 時計内部の機械をムーヴメント(英 movement)といいます。現代の時計の機械はクォーツ式ムーヴメントといって、電池で動作します。他方、1970年代以前の時計は機械式ムーヴメントといって、ぜんまいで動いています。本品は 1938年の時計で、やはりぜんまいで動きます。電池は必要ありません。

 電池ではなくぜんまいで動く機械式時計は、現代人にとって珍しく感じられますが、アンティーク時計はすべて機械式ですので、本品がぜんまいで動くのは普通のことです。しかしながら本品には非常に珍しい幾つかの特徴があります。

 第一の特徴は、竜頭の位置です。腕時計の三時の位置に突出しているツマミを、竜頭(りゅうず)といいます。現代の時計にも竜頭が付いていて、新しい電池を入れたときの時刻合わせに使います。機械式時計の場合、竜頭は時刻合わせと竜頭の巻き上げに使います。機械式腕時計の場合もクォーツ式腕時計と同様に、竜頭は三時の位置に付いているのが普通です。しかしながら本品の竜頭は、たいへん珍しいことに、十二時の位置に付いています。





 第二の特徴は、文字盤の向きです。ムーヴメントを保護する金属製の容器(時計本体の外側)をケース(英 case)といいます。本品のケースはレクタンギュラー型(長方形)です。1930年代には四角い時計が流行したので、レクタンギュラー型の時計は珍しくありません。しかしながらレクタンギュラー型の時計は 99.99パーセントが縦長ですが、本品は横長の特異な形をしています。

 本品のケースが横長であるのは、ムーヴメントが横倒しの状態で格納されているからです。ムーヴメントが横倒しであるゆえに、文字盤も横倒しになっており、通常の三時の位置が、本品の十二時になっています。竜頭が十二時に付いているのはこのためです。





 第三の特徴は、ケースとラグが極端に湾曲していることです。ラグ(英 lugs)とはベルトを取り付けるための突起のことです。本品のラグは、現代の腕時計と同様に、ケースの十二時側と六時側に二本ずつ付いています。しかしながら上の写真を見ればわかるように、本品はケースが湾曲しているのみならず、ラグが奇妙な角度で取り付けられ、時計の側面は極端な弧を描いています。





 本品がこのように奇妙な形状である理由は、本品の特殊な装着方法にあります。本品は自動車のハンドルを握ったまま時刻を確認できるように、手首の側面に装着する時計なのです。このような時計をドライバーズ・ウォッチといいます。

 アンティークの時代、時計はたいへん高価な品物で、気軽に買い替えることはできませんでした。ひとりの人が何本も所有することもありませんでした。それゆえ昔の時計は現代の物ほど多くの数が作られていません。ましてや動作する状態で現代まで残る 1930年代の時計はほとんどありません。アンティーク時計が実質的に一点ものになっているのは、この理由によります。

 特に珍しいのが、ドライバーズ・ウォッチです。この種類の時計が作られた期間は極めて短く、1930年代後半の数年間に限られます。動作する状態の 1930年代製時計はどれも貴重ですが、ドライバーズ・ウォッチに関しては、良い状態のものを見つけることはほぼ不可能です。





 本品のケース素材は、板状の金をベース・メタルに張り付けたロールド・ゴールド・プレートです。現代の金めっき(エレクトロプレート)に比べると、ロールド・ゴールド・プレートは金の厚みが数十倍に達し、摩耗に強く、見た目にも高級感があります。本品のケースに張られている金はおそらく十カラット・ゴールド(純度 10/24のゴールド)で、十八金に比べて金そのものの強度が格段に強く、色の点でも淡く上品なシャンパン・ゴールドをしています。実際、本品ケースに張られた金に特筆すべき摩滅は見られず、1930年代当時の美しい状態を保っています。

 時計ケースが傷みやすいのは、肌に触れる裏蓋です。裏蓋は肌と物理的に擦れ合うことで摩耗しやすいですし、表面に張られた金が摩滅してベース・メタルが露出すると、汗によって腐食します。これを避けるために、本品の裏蓋はステンレス・スティールでできています。ステンレス・スティールは肌と擦れ合っても摩耗しませんし、汗で腐食することもありません。金属アレルギーに関しても、まず大丈夫です。





 本品の文字盤は白あるいはライト・シルバーで、均一の古色がアンティーク時計ならではの趣(おもむき)を醸します。文字盤中央と十二時の中間に、黒の文字で「ホールマーク」(HALLMARK)のロゴが書かれています。本品の文字盤は 1930年代当時のオリジナルです。真正のアンティーク時計の文字盤が持つ雰囲気は、レプリカには決して真似ができません。

 文字盤の周囲十二か所にある長針五分ごと、短針一時間ごとの数字を、インデックス(英 index)といいます。本品のインデックスは打刻によると思われる浮き彫り状の立体インデックスで、金色のアラビア数字が毎正時を示し、光を美しく反射します。インデックスのデザインには時代ごとにはっきりとした流行があります。毎正時がアラビア数字で表示されるのは、1930年代と 1940年代の腕時計の特徴です。

 現代の時計は中三針(なかさんしん)式またはセンター・セカンド式といって、秒針が短針・長針と同様に、時計の中央に取り付けられています。これに対して 1950年代までの時計はごく少数の例外を除き、小秒針式またはスモール・セカンド式といって、六時の位置に秒針が取り付けられています。しかるに本品はドライバーズ・ウォッチ特有の装着方法ゆえに文字盤の面積が小さいので、小秒針は省かれています。本品に秒針が無いのは脱落逸失したのではなくて、もともと二針(にしん)の時計です。

 針は金色で、アンティーク時計にふさわしいモダン型です。いかにもヴィンテージ時計らしいクラシカルな針は、文字盤全体の上品なデザインに良く似合っています。





 本品はスイス製のトノー(樽)型ムーヴメント、「ア・シールド キャリバー 723」を搭載しています。「ア・シールド キャリバー 723」は、電池ではなくぜんまいで動く「手巻式」です。上の写真はムーヴメントをケースから取り出して撮影していますが、ユーザーが時計のケースを開けることはありません。ぜんまいは竜頭(りゅうず)を指先でつまんで回転させることにより、誰でも簡単に巻き上げることができます。

 秒針があるクォーツ式腕時計を耳に当てると、秒針を動かすステップ・モーターの音が一秒ごとにチッ、チッ、チッ… と聞こえます。デジタル式など秒針が無いクォーツ式腕時計を耳に当てると、何の音も聞こえません。これに対して機械式時計、すなわち本品のようにぜんまいで動く腕時計や懐中時計を耳に当てると、小人が鈴を振っているような小さく可愛らしい音が、チクタクチクタクチクタク…と連続して聞こえてきます。





 ムーヴメントには「ホールマーク時計会社」(THE HALLMARK COMPANY INCORPORATED)、「スイス製」(SWISS)、「七石」(SEVEN JEWELS)等の刻印があります。宝石のルビーはたいへん硬い鉱物ですので、時計部品として使用されます。七石というのは七個のルビーを部品として使用しているという意味です。機械式ムーヴメントでいちばん大切なのは、調速脱進機という部分です。調速脱進機には摩耗してはいけない部分が七か所あり、本品のムーヴメントは七か所すべてにルビーを使っています。

 上の写真の左端手前に、大きな環が振動(往復するように回転すること)しています。この環は振り子と同じ役割をする部品で、天符(てんぷ)といいます。七個のルビーのうちの一個が、天符の中心に写っています。





 機械式時計は振り子あるいは天符で時間を計っているので、ここに歪み等の不具合があると致命的な故障となります。このページに掲載したムーヴメントの写真は、いずれも天符が高速で振動しています。しかしながらどの写真においても、環の輪郭はまったくぶれていません。これは本品の天符に歪み等の問題が無いことを示します。

 静止した写真では分かりませんが、本品の天符は大きな角度で振動しています。これはひげぜんまいという部品が良い状態であることを示します。ひげぜんまいに問題があると時計はまともに動かず、致命的な故障となります。本品のムーヴメントは八十年前のものであるとは信じられないほど良好な状態です。





  ドライバーズ・ウォッチはもともと男性用として作られましたが、現代の時計に比べて小さめのサイズであり、たいへん上品であるゆえに、女性にもお使いいただけます。上の写真は女性モデルが本品を着用しています。

 バンドはお好きな色、素材のバンドに換えることができます。時計会社はバンドまで作っていませんので、アンティーク時計のバンドをお好みのものに取り換えても、アンティーク品としての価値はまったく減りません。時計お買上時のバンド交換は、当店の在庫品であれば無料で承ります。

 当店はアンティーク時計の修理に対応しております。アンティーク時計の修理等、当店が取り扱う時計につきましては、こちらをご覧ください。





 ドライバーズ・ウォッチが非常に珍しいのは、すぐに製造が中止されて、市場に出回らなかったからです。1930年代当時、自動車も腕時計も現在とは比較にならないほど高価でした。そのような時代に自動車を運転するとき専用の時計を発売しても、売れなかったのはやむを得ないことでした。あまりにも贅沢すぎる商品だったのです。そのような理由でドライバーズ・ウォッチはごく少数しか作られず、アンティーク・ウォッチのコレクターでも実際に目にした人がほとんどいない稀少品となっています。

 当店の時計は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(三回払い、六回払い、十二回払いなど。利息手数料なし)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。





本体価格 189,000円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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