透明石による装飾文字盤 《スイス製 コート CORT 七石》 アール・デコそのもののようなアンティーク時計 1950年代初頭



 いまからおよそ七十年前、1950年代初頭頃に制作された手巻き時計。本品はもともと男性用ですが、この時代の時計は現代に比べると小ぶりのサイズですので、女性にも快適にお召しいただけます。バンドは茶や赤などお好きな色に交換可能です。古い年代にもかかわらず、本品の保存状態はきわめて良好で、きちんと動作します。





 時計内部の機械をムーヴメント(英 movement)といいます。現代の時計の機械はクォーツ式ムーヴメントといって、電池で動作します。他方、1970年代以前の時計は機械式ムーヴメントといって、ぜんまいで動いています。本品はぜんまいで動く機械式時計で、電池は必要ありません。

 ムーヴメントを格納する金属製ぼ筐体(きようたい 容器)、すなわち時計本体の外側を、ケース(英 case)といいます。本品のケースは正方形で、突出部分を除く一辺の長さは 22 ミリメートル、風防と裏蓋を含む時計全体の厚みは 9ミリメートルです。ケース本体あるいはベゼル部分は、おそらく十カラット・ロールド・ゴールド・プレートです。裏蓋は摩耗に強いステンレス・スティール製です。






 アンティーク時計を制作年代ごとに分類・比較すると、ケースの形やサイズ、風防の形、文字盤の意匠に、時代に従って明確な違いが認められます。

 ケースの形とサイズに関して言うと、当時の男性の間では四角い時計に人気が集中しました。この時代の男性用時計に、円形ケースの機種はほとんどありません。当時の時計は男性用、女性用ともに、現代の時計よりもずっと小さなサイズです。本品のサイズは大まかに言って五百円硬貨ほどです。男性が使う場合、時計が大きいと長袖シャツの袖が引っ掛かりますが、本品はスーツ着用時にもドレッシーに使いこなせます。本品は現代の女性用時計に近いサイズですので、女性にも快適にお使いいただけます。





  時計において、時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を文字盤(もじばん)または文字板(もじいた)といいます。本品の文字盤は白で、経年による軽度の古色を呈しつつも、たいへん綺麗な状態です。真正のアンティーク時計の文字盤が持つ雰囲気は、レプリカには決して真似ができません。

 文字盤の周囲十二か所にある長針五分ごと、短針一時間ごとの数字を、インデックス(英 index)といいます。インデックスの様式にも年代ごとの流行があります。大体の傾向として、1940年代半ば以前の時計ではアラビア数字のインデックスが多く見られますが、1940年代後半から 1960年代半ば頃までの時計では 12時、3時、9時がアラビア数字で、これとバー・インデックス(棒状のインデックス)が混用されます。1960年代後半から 1970年代の時計は十二時以外のすべてがバー・インデックスです。





 本品はケースの形状、文字盤の様式とも 1950年代の様式によりますが、三か所のアラビア数字はアール・デコ様式による個性的な字体で、各インデックスは無色カット石のメレに飾られています。このように個性的な文字盤は 1950年代の時計の特徴です。

 インデックスを飾る石はダイヤモンドではありませんが、たいへんよく光ります。ダイヤモンドの類似石と言えばキュービック・ジルコニアが最初に思い浮かびますが、1950年にはキュービック・ジルコニアは存在しませんでした。品物の年代を考えると、ガラスでなければGGG(gadolinium gallium garnet)であろうと思いますが、検査はしていません。





 本品は六時の位置に小文字盤があって、小さな針が回っています。これは小秒針(スモール・セカンド・ハンド)と呼ばれる小さな秒針です。現代の時計は中三針(なかさんしん)式、あるいはセンター・セカンド式と言って、文字盤の中央に秒針が付いています。中三針式(センター・セカンド式)のムーヴメントは作るのが難しく、1960年代になってようやく普及しました。それ以前の時計は小秒針式(スモール・セカンド式)で、六時の位置に小さな秒針が付きます。本品もそのような時計の一つで、六時の位置には長さ三ミリメートルの可愛らしい秒針が回っています。

 文字盤中央と十二時の中間には、黒い文字で「コルト ド・リュクス」(コート デラックス)と書かれています。小秒針の下にはスイス製(SWISS)と表示されています。長針と短針は金色で、アンティーク時計にふさわしいモダン型です。いかにもヴィンテージ時計らしいクラシカルな針は、文字盤全体の上品なデザインに良く似合っています。





 本品はぜんまいで動く機械式時計で、電池は必要ありません。本品は手巻き式時計ですので、一日一回ぜんまいを手動で巻き上げる必要があります。

 時計の三時部分に突出するツマミを、竜頭(りゅうず)といいます。上の写真で手前に写っているのが竜頭です。竜頭を指先でつまんで回転させれば、誰でも簡単にぜいまいを巻くことができます。竜頭を一段階引き出して回転させると、時刻合わせができます。これは現代の腕時計と同じです。

 電池で動くクォーツ式時計にも竜頭は付いていますが、操作する機会はほとんど無いので、たいへん小さなサイズです。しかるに機械式時計は毎日竜頭を操作するので、ぜんまいを巻き上げ易いように大きな竜頭が付いています。本品がアンティーク風のレプリカではなく、本物の機械式時計であることは、竜頭のサイズを見てもわかります。





 本品はスイス製の手巻きムーヴメント、「ア・シールド キャリバー 970」を搭載しています。ア・シールド社はスイス時計産業の中核を為すメーカーのひとつで、いくつもの重要なムーヴメントを制作・供給しています。なかでも本機「キャリバー 970」は 1935年から 1967年まで三十年以上に亙って作り続けられ、多種類のキャリバーが派生する基本ムーヴメントとなりました。筆者(広川)は「ア・シールド キャリバー 970」を、同社のキャリバー 976、フォンテンメロン社のキャリバー 60と並ぶ汎用小型ムーヴメントの名品と考えています。





 良質の機械式時には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはモース硬度 9と非常に硬い鉱物(コランダム Al2O3)ですので、時計の部品として使用されるのです。機械式時計のムーヴメントにおいて最も大切なのは、調速脱進機という部分です。本品の調速脱進機には七個のルビーが集中的に使用されて重要部品の摩耗を防ぎ、正確な歩度(ほど 時間の進み方)を保証しています。









 本品はもともと男性用時計として作られましたが、1950年代初頭の時計は現代の時計に比べて小さめのサイズであり、たいへん上品なデザインであるゆえに、女性にもお使いいただけます。







 バンドはお好きな色、素材のバンドに換えることができます。時計会社はバンドまで作っていませんので、アンティーク時計のバンドをお好みのものに取り換えても、アンティーク品としての価値はまったく減りません。時計お買上時のバンド交換は、当店の在庫品であれば無料で承ります。

 当店はアンティーク時計の修理に対応しております。アンティーク時計の修理等、当店が取り扱う時計につきましては、こちらをご覧ください。

 下記は本体価格です。当店の時計は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(二回払い、三回払い、五回払いなど。利息手数料なし)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。





本体価格 75,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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