(下) 文字盤を外して日の裏側を撮影















ビューレン キャリバー 195 《グラン・プリ》 15石手巻ムーヴメントの極美品 スイス 1930年代から1940年代初頭



 1930年代から1940年代初頭頃にスイスのビューレン社が制作した腕時計。もともと男性用として作られた時計ですが、女性にもお使いいただけます。七十年以上前の古い品物にもかかわらず、驚くほど良好な保存状態で、新品のまま保管されていたものと思われます。





 上の写真で白く写っている部分(数字が書いてある板状の部品)を「文字盤」、時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)、ムーヴメントを保護する金属製の容器(時計本体の外側)を「ケース」(英 case)といいます。本品のケースと文字盤は四角形の四辺を外側に膨らませた「クッション型」です。





 19世紀は懐中時計の時代でした。初期の懐中時計はムーヴメントが大きく分厚かったのですが、技術が進歩して小型化が進み、およそ百年前には手首に装着できる小型ムーヴメントが製作されるようになりました。男性は大きな時計、女性は小さな時計を使っていましたから、小さな時計を手首に装着しはじめたのは、女性たちでした。このようにして、およそ百年前に、まず女性が腕時計を身に着け始めました。上に示した写真は、いずれも 1910年頃に撮影されました。写真に写っている二人の女性は、小さな懐中時計にバンドを取り付けたものを、「腕時計」として装着しています。

 腕時計は懐中時計から発達しました。懐中時計のムーヴメントはすべて円形です。四角形や八角形など、円形以外の懐中時計も稀(まれ)にありますが、それらは円形ムーヴメントを多角形のケースに入れているだけで、懐中時計のムーヴメントそのものは常に円形です。したがって腕時計のムーヴメントも、初期においてはすべて円形でした。




(上) 1930年代後半の時計の広告。円い時計が流行ではなかったことがわかります。エルジン社のもの。


 1930年代に入って男性の間にも腕時計が本格的に普及し始めた頃、男女ともに四角い時計が流行しました。腕時計はもともと女性用の時計として誕生しましたので、1930年代の時点で女性用腕時計は男性用よりも進歩しており、細長い女性用ムーヴメントが既に登場していました。しかしながらこの時代の男性用ムーヴメントは、円形のものしかありませんでした。したがって四角い男性用時計を作るには、円形ムーヴメントを使いつつも、ケースの形状を工夫して、時計を四角く見せる必要がありました。これには次のような方法があります。

  1. 四角形のケースの中に、ひとまわり小さな円形ムーヴメントを入れる。

  2. 長方形ケースの三時側と九時側に膨らみを持たせ、円形ムーヴメントを入れる。この方法を採ると長方形ケースではなくなるが、三時側と九時側の膨らみを目立たせないようにデザインを工夫し、長方形ケースのように見せる。

  3. ケースや文字盤を六角形やクッション型にすることで、円形ムーヴメントを用いつつも長方形に近いデザインとする。




(上) 左から順に、「ロード・エルジン 《グレード 531》」(1937年)、「ブローバ 《アメリカン・クリッパー》」(1936年)、「ブローバ 《ライタングル》」(1938年)、「ウエストフィールド 《ハドソン》」(1940年)


 上の写真は 1930年代後半から 1940年にかけて製作された男性用時計です。いずれも円形ムーヴメントを搭載していますが、上記の方法のいずれか、あるいは上記の方法の組み合わせによって、「円くない時計」を実現しています。





 本品は1930年代から1940年代初頭頃にスイスのビューレン社が製作した時計で、円形ムーヴメントを搭載していますが、文字盤とケースをクッション型にすることで、四角く見せるデザインを実現しています。





 本品の文字盤は清潔感のある白で、"BUREN SWISS"(ビューレン、スイス製)の文字、及びアラビア数字による立体インデックスを配します。「インデックス」(英 index)とは、文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の数字です。本品のインデックスはケースと同色の明るい金色で、光を反射して美しく光ります。インデックスの外側には黒色の細かい目盛、インデックスの内側にはクッション型を描く金色の立体的な線があり、文字盤を引き締めています。

 1960年代から現代に至るまで、インデックスや時計メーカーのロゴマークなど、一部が立体的になった文字盤は、平坦な文字盤に別作の部品を植字して作るのが普通です。ところが本品の文字盤の立体部分、すなわちクッション型の金色の線とインデックスは植字ではなく、文字盤に浮き彫りにされています。時計職人の手作りに近い高級品であった1930年代の時計と、大量生産品として効率よく生産された後の時代の時計の違いは、このようなところにも表れています。





 現代の時計の秒針は「センター・セカンド」といって、短針、長針と同様に、時計の中央に取り付けられています。これに対して 1950年代までの時計の秒針は、ごく少数の例外を除き、「スモール・セカンド」といって、六時の位置に取り付けられています。時計の中央に秒針を取り付ける方式のムーヴメントを制作するのは技術的に困難で、「センター・セカンド」が普及するのは1960年代です。1930年代の時計の秒針はすべて「スモール・セカンド」方式で、本品も例外ではありません。

 本品の文字盤はたいへん綺麗な状態ですが、再生(リファービッシュ、リダン)したものではなく、時計が製作された当時のオリジナルです。よく使われた時計の場合、ケースを開けて文字盤を見ると、周辺部分(ケースと接する部分)が傷んでいるのが普通です。しかしながら本品の文字盤はまったく傷みが無く、新品のまま、あるいはほとんど新品のまま、七十年以上に亙って大切に保管されてきたことがわかります。

 針は上品で高級感のあるリーフ型で、やはり当時のオリジナルです。柳の葉のようにスマートな曲線を描くリーフ型の針は、ゆったりと時を刻むアンティーク時計にたいへん良く似合っています。

 本品のケースはロールド・ゴールド・プレート、裏蓋は丈夫かつアレルギーを起こしにくいステンレス・スティール製です。「ロールド・ゴールド・プレート」とは板状の金をベース・メタルに張り付けたもので、現代の金めっき(エレクトロ・プレート)に比べると、金の厚みは十数倍ないし数十倍に達します。金の層が厚いため、摩耗に強く、見た目にも高級感があります。本品のケースに張られている金は 10カラット・ゴールド(純度 10/24のゴールド)で、十八金に比べて金そのものの強度が格段に強く、色の点でも淡く上品なシャンパン・ゴールドをしています。





 写真では分かりにくいですが、ケースの裏蓋は緩やかな曲線を描いており、手首に心地よくフィットします。ケースの裏蓋が手首に沿うように曲線を描くのは、1930年代から40年代に制作された四角い男性用時計の特徴です。

 商品写真に写っているバンドはバネで伸縮するタイプで、表(おもて)は時計と同じ 10カラット・ロールド・ゴールド・プレート、裏はステンレス・スティールでできています。現代の腕時計は、十二時側と六時側に二本ずつ、バンドを取り付けるための金具が突き出ており、バネ棒という部品を使ってバンドを取り付けます。本品もこれと同じ方式ですので、写真に写っている金属製の伸縮式バンドの代わりに、革製バンドを取り付けることも可能です。

 アンティーク時計のバンドは元々取り付けられていた「オリジナル」でなくても構いません。革製のものは言うまでも無く、バンドはすべて消耗品ですし、昔のバンドが使える状態で残っていたとしても、それは前の所有者が自分に合うサイズ、好みのデザインのバンドを取り付けているだけのことです。時計会社はバンドまで作っていませんから、自分に合うサイズとデザインのバンドを取り付けるのが、アンティーク時計との正しい付き合い方です。

 ただし本品は適合するバンドの幅(ラグ間の距離)が 15ミリメートルしかありません。取り付け部の幅が 15ミリメートルのバンドは、現代の時計でいえば女性用サイズに相当するため、このサイズの革製バンドはいかにも女性用らしく、末端がたいへん細くなるものがほとんどです。したがって男性が本品に革製バンドを取り付けて使う場合、幅が末端に向けて細くならないバンドを選ぶ必要があります。写真に写っているような金属バンドであれば、このような問題は生じません。

 写真に写っている金属バンドの長さは、まったく伸びていない状態で測って 17センチメートル(時計を含む)です。バネはそれほど強くないので、手首がこれよりも太い方が装着しても圧迫感はありません。手首がこれよりも細い方の場合は時計が手首で回ってしまうので、短い金属製バンドを追加料金無しでご用意します。







 本品のムーヴメント(時計内部の機械)は電池ではなくぜんまいで動いています。電池で動く「クォーツ式」腕時計が普及したのは、1970年代以降のことです。本品が製作された 1930年代は、クォーツ式腕時計はまだ存在せず、腕時計はすべてぜんまいで動いていました。

 秒針があるクォーツ式腕時計を耳に当てると、秒針を動かすステップ・モーターの音が一秒ごとに「チッ」、「チッ」、「チッ」 … と聞こえます。デジタル式など秒針が無いクォーツ式腕時計を耳に当てると、何の音も聞こえません。これに対して機械式時計、すなわち本品のようにぜんまいで動く腕時計や懐中時計を耳に当てると、小人が鈴を振っているような小さく可愛らしい音が、「チクタクチクタクチクタク…」と連続して聞こえてきます。

 良質の機械式腕時計、懐中時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはたいへん硬い鉱物ですので、良質の時計の部品として使用されるのです。本品のムーヴメントは「ビューレン キャリバー 195」という機種で、15個のルビーを使用しています。上の写真ではルビーが八個しか見えませんが、あとの七個は機械の裏側(文字盤側)など、上の写真に写っていない部分に使われています。15個のルビーを使用した「15石」(じゅうごせき)のムーヴメントは、摩耗してはならない個所のほぼすべてにルビーを使用した上質の機械です。

 





 上は文字盤を外したところで、これがビューレンの自社製ムーヴメントであることを示す刻印 "BAA" が見えます。この写真では天符の地板側受け石が割れているようにも見えますが、撮影時の光の加減でこのような写り方になっただけで、実際には割れておらず、罅(ひび)も入っていません。

 ビューレン社は1873年、スイス北西部の古い町ビューレン・アン・デア・アーレ(Büren an der Aare ベルン州ビューレン郡)で創業した時計会社で、歴史があるだけでなく、優れた技術力によっても知られています。本品は手巻き式ですが、ビューレン社は自動巻き(オートマティック 手首の動きによって自動的にぜんまいを巻き上げる方式)のムーヴメントでも有名で、1945年頃にはバンパー・オートマティック、1953年にはセンター秒針またはパワー・リザーヴ・インディケイター(ぜんまい残量計)のある「ロトワインド」(Rotowind)、1954年には薄型の自動巻ムーヴメントを可能にする「ミニローター」(Minirotor) を開発しています。1954年の「ミニローター」は特に有名で、ピアジェ、アイ・ダブリュ・シー、ボーム・エ・メルシエ、ブローバ、ハミルトンの高級時計に採用されました。1969年には竜頭が左側にあるクロノグラフ用自動巻ムーヴメント「キャリバー 11」を、ブライトリンク、ホイヤー=レオニダス、デュボワ・デプラと共同開発しています。ビューレンはこの年にハミルトンの傘下に入り、ハミルトンのムーヴメントを製作するようになりますが、クォーツ式時計の台頭によって事業継続が困難となり、1972年に創業を停止しました。









 この時計は当時の箱と組み合わせてご提供いたします。箱も時計と同様に、内外ともに良好な保存状態です。





 本品は男性用として作られた時計ですが、20世紀中葉以前の時計は現在に比べて小さめのサイズであり、たいへん上品であるゆえに、女性にも十分にお使いいただけます。バンドはお好きな色、質感、長さのバンドに換えることができます。時計会社はバンドまで作っていませんので、アンティーク時計のバンドをお好みのものに取り換えても、アンティーク品としての価値はまったく減りません。時計お買上時のバンド交換は、当店の在庫品であれば無料で承ります。

 当店の時計は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(三回払い、六回払い、十二回払いなど。利息手数料なし)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。





118,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




男性用(男女兼用)腕時計 メーカー名 《AとB》 商品種別表示インデックスに戻る

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