キャリバー 7AK搭載の名機 《ブローバ エクセレンシー 二十一石》 丸みを帯びたピンクの金張りケース 愛らしい銀の珠 女性にも使いやすいドレス・ウォッチ 1946年


ラグと竜頭を除くケースのサイズ  33 x 22ミリメートル (概寸)

風防と裏蓋を含む厚み  11ミリメートル (概寸)



 いまから七十年以上前、1946年のアメリカで製作された腕時計。電池ではなく、ぜんまいで動く機械式時計です。太平洋戦争を挟んで息を吹き返したレクタンギュラー型ケースに、筒形穹窿状(かまぼこ状)の風防を組み合わせたスタイリッシュなデザインは、平和を取り戻した明るい喜びを映し出しています。

 本品はもともと男性用に作られた時計ですが、二十世紀中頃の時計は現代の製品に比べて小ぶりで、本品はとりわけスリムなデザインですので、女性にも違和感なくお使いいただけます。本品にはお好みの色、材質のバンドを取り付けることが可能です。





 時計内部の機械をムーヴメント(英 movement)と呼びます。ムーヴメントを保護する容器、すなわち時計本体の外側に見えている金属製の部分をケース(英 case)と呼びます。ケースはベゼルと裏蓋に分かれます。ベゼル(英 bezel)とはケースの前面にあって、文字盤と風防を取り囲む部分のことです。

 本品のケースの材質は、十四カラット・イエロー・ゴールドによるゴールド・フィルドです。ゴールド・フィルド(英 gold filled)とは板状の金をベース・メタルに張り付けたもので、ヴィンテージ時計(アンティーク時計)のケースに最もよく使われる素材です。現代の金めっき(エレクトロプレート)に比べると、ゴールド・フィルドの金の厚みは十数倍ないし数十倍に達します。層が厚いために金が剥げにくく、見た目にも高級感があります。本品のケースに張られている金は十四カラット・ゴールド(純度 14/24のゴールド 十四金)で、十八カラット・ゴールド(純度 18/24のゴールド 十八金)に比べて金そのものの強度も格段に強く、日々使用する時計ケースの素材として優れています。





 上の写真はケースの裏蓋で、「十カラット・ゴールド・フィルド」(10K GOLD FILLED)の文字と、ケースのシリアル番号が刻印されています。ケース裏蓋の最も突出した部分に金の摩滅が見られますが、まだまだ心配なく使える状態です。





 時計ケースの形状や、文字盤とインデックスのデザインには、時代ごとに特徴があります。太平洋戦争を挟んで 1940年代初頭及び後半の時計はクラシカルな正統美を備え、ドレス・ウォッチにふさわしい気品を湛えます。こののち 1950年代に入ると、時計デザインには 1920年代に次いでアール・デコ様式の特徴が表れ、華やかな個性を競うようになります。

 1946年製の本品はクラシカルな薫りを有しつつも、アール・デコの華やぎを備え始めています。すなわち本品のケースは正面から見るとすっきりとした長方形ですが、ケースは単純な箱型でなく、側面とベゼルが描くグラマラスな曲線が、アール・デコ期に流行した流線型を髣髴させます。ヴィンテージ・ウォッチのかまぼこ型風防は、通常であれば三時と九時を結ぶ線が最も盛り上がります。しかしながら本品の風防は通常の風防とは対照的で、十二時と六時を結ぶ線が最も突出しています。すなわち本品の風防が有する曲面は、曲がる方向がケース側面及びベゼルの曲面と一致しており、アール・デコ様式に基づく造形美を自然な形で強調しています。





 時計において、時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を文字盤(もじばん)または文字板(もじいた)といいます。文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の数字を、インデックス(英 index)といいます。

 インデックスの様式にも年代ごとの流行があります。大体の傾向として、1940年代以前の時計ではアラビア数字のインデックスが多く見られますが、1950年代から 1960年代半ば頃までの時計では 12時、3時、9時がアラビア数字で、これとバー・インデックス(線状のインデックス)が混用されます。1960年代後半から 1970年代の時計は十二時以外のすべてがバー・インデックスです。本品はケースの形状、文字盤の様式とも 1950年代の様式を先取りしていますが、後にバー・インデックスとなる部分には銀色の愛らしい珠が取り付けられて、1950年代以降の時計とは一線を画します。


 六時の位置に小文字盤があって、小さな針が回っています。これは小秒針(スモール・セカンド・ハンド)と呼ばれる小さな秒針です。現代の時計は中三針(なかさんしん)式、あるいはセンター・セカンド式と言って、文字盤の中央に秒針が付いています。中三針式(センター・セカンド式)のムーヴメントは作るのがむつかしく、1960年代になってようやく普及しました。それ以前の時計は小秒針式(スモール・セカンド式)で、六時の位置に小さな秒針が付いています。本品もそのような時計の一つです。

 なお上の拡大写真は、実物よりもはるかに大きなサイズですので、文字盤の小きずがよく識別できます。しかしながら実物は写真よりもずっと小さく、さらに風防(ガラス)越しに見ますから、本品の文字盤は上の拡大写真よりもずっと綺麗に見えます。アンティーク品が長い年月をかけて獲得した風合いを、古色といいます。古色は真正のアンティーク品ならではの風合いで、レプリカには見られません。筆者(広川)はアンティーク品の古色が好きで、保存状態が良すぎるとむしろ物足りなく思います。本品の文字盤は、アンティーク品としては充分に綺麗です。





 本品をはじめ、四角い時計のケースはほとんどすべて「こじ開け式」です。写真に撮るのを忘れましたが、裏蓋を外した内側には、ブローバ(BULOVA)、ニューヨーク五番街(FIFTH AVE., NEW YORK)の刻印が見えます。ブローバ・ウォッチ・カンパニーの本社は、当時、ニューヨーク五番街に置かれていました。





 上の写真は本品が搭載する 7 3/4 x 11リーニュの手巻きムーヴメント、「ブローバ キャリバー 7AK」です。「ブローバ キャリバー 7AK」はドレス・ウォッチ用に開発された二十一石の高級ムーヴメントで、軍用時計には使われていません。

 筆者(広川)の考えによると、「キャリバー 7AK」は、ブローバが 1930 - 40年代に製作した最高のムーヴメントです。「キャリバー 7AK」の製作時期は、1936年から 1949年です。本機は 1946年製ですから後期の機械ということになります。


 ブローバのムーヴメントはスイス製エボーシュを基に製作されることが多く、「キャリバー 7AK」も ETA社の「キャリバー 735」を基にしています。しかしながら「ETA キャリバー 735」と「ブローバ キャリバー 7AK」を比べると、輪列の配置こそ同じですが、ひげぜんまいも天真も異なります。「ブローバ キャリバー 7AK」のひげぜんまいは、高級なブレゲひげに変更されています。地板と受けの形状も、裏押さえをはじめとする細部の形状も変更されています。石数も「ETA キャリバー 735」が十五石あるいは十六石であるのに対し、「ブローバ キャリバー 7AK」は五個ないし六個のルビーを加えて、二十一石としています。改変の規模が大きすぎて、これではブローバの自社製ムーヴメントと呼ばざるを得ません。実際、「ブローバ キャリバー 7AK」の受けには「アメリカ合衆国」(U. S. A.)の文字が刻まれています。





 上の写真は 1966年のブローバ社の広告で、写真に写っている時計はすべての部品が自社で制作されていることを示ししています。広告の下部には、ブローバ社が石(軸受等に使われるルビー)以外の部品を、他のどの時計会社よりも高い比率で自社製としていることが説明され、「思い通りのものが欲しければ、自分で作ろう」(If you want something done right, do it yourself.)と書かれています。

 この広告が示すように、ブローバ社は非常に高い時計製作技術を持っていました。「ブローバ キャリバー 7AK」も、「ETA キャリバー 735」の原形をほとんど留めないまでに改変しています。これほど手を加えるのであれば、設計・開発と製作の全てを自社で行えばよいと思いますが、何らかの経営的判断があったのでしょうか。とにかく「ブローバ キャリバー 7AK」は、ETA製エボーシュ(仏 ébauche ムーヴメントの半完成品)を基にしつつ、元よりもはるかに良い機械へとチューンナップされた興味深いムーヴメントです。





 機械式時計はクロックとウォッチに分かれ、クロックの多く、特に壁掛け用機械式時計のほとんどは振り子式です。振り子は機械式時計の本体であり、機械式時計は振り子の規則的な振動(往復運動)によって時を計っています。しかるにウォッチすなわち携帯用時計(懐中時計と腕時計)には、振り子を取り付けることができません。時計が傾くと、振り子の動きが止まるからです。そこで考案されたのが、ひげぜんまいを有する天符(てんぷ)です。ひげぜんまいを有する天符は、振り子と同様の等時性を以て振動し、傾けても止まりません。

 上の写真で上方右寄りに写っている大きな輪が、天符です。「ブローバ キャリバー 7AK」の振動数は一万八千振動(A/h = 18,000)で、これは天符が一秒間に二・五回、一時間に九千回の割合で振動する(往復するように回る)という意味です。上の写真では天符が高速で振動しているため、天輪の腕とチラネジがぶれて写っています。しかしながら天輪はあたかも動いていないかのようにくっきりとした軌跡を描いており、天真(てんしん 天符の中心軸)に曲がりが無いことがお分かりいただけます。天符の左側にムーヴメントの型式(7AK)が刻印されています。左上の少し離れたところに刻印された小さな四角形は、1946年を示すブローバ社のデイト・コードです。





 良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはたいへん硬い鉱物ですので、高級時計の部品として使用されるのです。必要な部分すべてにルビーを入れると、十七石(じゅうななせき)のムーヴメントになります。十七石のムーヴメントはハイ・ジュエル・ムーヴメント(英 a high jewel movement)と呼ばれる高級品です。ルビーの数は十七石あれば十分とされますが、本品はさらに四個のルビーを付加し、二十一石のムーヴメントとしています。上の写真の手前左、ムーヴメントの縁に近いところに、二十一石(21 JEWELS)の文字が刻まれています。





 「ブローバ キャリバー 7AK」は電池で動くクォーツ式ではなく、ぜんまいで動く機械式です。機械式ムーヴメントには手巻きと自動巻きがありますが、「ブローバ キャリバー 7AK」は手巻きムーヴメントですので、時計を使用する人が、一日一回、ぜんまいを自分で巻き上げる必要があります。ケースの三時方向から外側に、竜頭(りゅうず)と呼ばれるツマミが突出しています。竜頭を指先でつまんで回転させると、誰でも簡単にぜんまいを巻き上げることができます。

 「ブローバ キャリバー 7AK」は「パワー・リザーヴ四十七時間」といって、ぜんまいを完全に巻き上げると、およそ二日間、止まらずに駆動します。機械式腕時計のパワー・リザーヴは三十八時間ぐらいが普通ですから、「ブローバ キャリバー 7AK」はたいへん優秀な機械です。

 機械式時計はぜんまいを巻いて放置するとやがて止まりますが、しばらく使わないのであればそのまま放っておいて構いません。クォーツ式時計を長期間使わずに放置すると、古い電池が液漏れを起こして時計が壊れます。しかしながら機械式時計には電池が入っていないので、何十年、何百年、何千年と放置しても壊れません。ただし極端に長く放置すると潤滑油が固まり、分解掃除が必要になります。数年に一度の分解掃除はいずれにせよ必要ですが、手首に装着しない場合でもときどきぜんまいを巻いて動かしてやると、潤滑油が固まりにくくなります。





 時計の十二時側と六時側には、バンドを取り付けるための突起があります。この突起をラグ(英 lugs)といいます。時計に適合するバンド幅とは、時計に取り付ける部分の幅のことで、これは左右のラグ間の距離と同じです。革製バンドの場合、本品に適合するバンド幅は十六ミリメートルです。金属製バンドは十四ミリメートルのものが適合します。

 本品に限らずアンティーク時計全般に共通していえることですが、時計のメーカーとバンドのメーカーは別です。アンティーク時計に付いているバンドは、たまたまその時計に取り付けられているだけのことで、時計とバンドの組み合わせに必然性はありません。本品の場合も事情は同じで、バンドの種類や色はお好みに合うものをお使いいただけます。バンドの色を変更すると、ずいぶん雰囲気が変わります。

 本品はもともと男性用として作られた時計ですが、アンティーク時計は男性用であっても現代のものほど大きくないので、女性にもお使いいただけます。上の写真は女性モデルが本品を着用しています。







 アンティークアナスタシアはアンティーク時計の修理に対応していますので、本品は日々安心してご愛用いただけます。女性にとっては上品な優雅さを、男性にとっては紳士の落ち着きを、いずれも引き立て際立たせてくれるドレス・ウォッチです。


 当店の時計は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(三回払い、六回払い、十回払いなど。利息手数料なし)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。遠慮なくご相談くださいませ。





88,000円 

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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