(下) 男性による装着例


(下) 女性による装着例




(下) 男性による装着例







1910年頃の無銘トランジショナル・ウォッチ エマイユ(琺瑯)文字盤にニッケル製ケース スイス製 15石手巻ムーヴメント


スイス製 15石手巻ムーヴメント



ワイア・ラグ(ばね棒を使わない固定ラグ)式のニッケル製ケース

蝶番(ちょうつがい)式裏蓋

白色エマイユ(琺瑯 ほうろう)文字盤に、アラビア数字インデックス

ラジウムを塗布したブルー・スティール製針


ラグ(バンドを取り付けるための突出部分)と竜頭(りゅうず)を除いたケースの直径: 34.6 mm


1910年頃



 懐中時計から腕時計が生まれようとする時代にスイスで制作された最初の世代の腕時計。バンドを取り付けた腕時計ではありますが、エマイユ(琺瑯)文字盤、菊花形の竜頭(りゅうず)、蝶番式ケースに前世紀(19世紀)の面影を強くとどめています。このような時計は「トランジショナル・ウォッチ」、すなわち懐中時計から腕時計への移行期の時計と呼ばれています。本品には次のような特徴があります。





 本品の文字盤には白色不透明ガラスによるエマイユ(琺瑯 ほうろう)が施されています。エマイユ文字盤は懐中時計に使われていたものですが、制作に非常な手間がかかるため、後には作られなくなります。本品が制作されたのは懐中時計の時代と腕時計の時代が重なるタイミングであったために、懐中時計式のエマイユ文字盤が使用されています。エマイユ文字盤は変色が起こらない反面、ヘアライン(非常に細いクラック、ひび割れ)やフリーバイト(fleabite 微小な欠損)が生じる場合があり、本品にも4時付近と10時30分付近のエマイユにフリーバイトがあります。しかしながらいずれもベゼルで隠れてほとんど見えず、本品の文字盤は実質的に完品と言ってよい状態です。

 インデックスはローマ数字の輪郭線内部に放射性ラジウムによる夜光塗料を塗ってあります。放射性ラジウムは文字盤加工職人の被曝を防止するために現在では使用が禁じられており、アンティーク・ウォッチならではの仕様です。なお夜光塗料のラジウムで時計の使用者が被曝することはありません。12時のみ数字の輪郭線が赤いのは、懐中時計計と同様の特徴です。メーカーの名前が書かれていないため、非常に上品ですっきりと落ち着いたデザインに仕上がっています。6時の位置に秒針のための小文字盤があります。三本の針(時針、分針、秒針)の色は写真では黒っぽく写っていますが、実際には濃い青です。現代の時計の青い針はたいていの場合青く塗装していますが、本品のようなアンティーク・ウォッチの青い針は「ブルー・スティール」と言って、鋼を加熱して青い酸化被膜を作ったものです。「ブルー・スティール」は見た目が美しいことに加えて腐食(錆)に強くなります。放射性ラジウムによる夜光塗料は針にも塗られています。インデックスの塗料も針の塗料も劣化しており、現在では光りません。

 ケースは懐中時計と同様の蝶番(ちょうつがい)式です。蝶番に問題はなく、直角に開きます。




 竜頭(りゅうず)も懐中時計に使われていたのと同じタイプです。竜頭が摩耗していないかどうかはアンティーク時計を買う時に注意すべきポイントのひとつですが、本品の竜頭は実用上の問題が無い良好なコンディションで、たいへん扱いやすいサイズです。




 現代の腕時計ではバネ棒という部品を使ってバンドを取り付けますが、本品を含む古いヨーロッパの時計はワイア・ラグ方式です。ラグというのはバンドを取り付けるための金具のことで、ワイア・ラグとはこの部分が針金状でケースに溶接されているもののことをいいます。このタイプの時計には、ワイア・ラグ用バンドを取り付ける必要があります。

 ケース裏蓋の内側には材質を示す「ニッケル」(NICKEL) の刻印と、修理と整備の履歴を示す多数の符号が見えます。1910年代までの時計ケースはニッケル製が主流です。





 ムーヴメントはスイス製の手巻き式で、15個のルビーを使用しています。下の写真ではルビーが四個しか写っていませんが、あと11個は機械の裏側(文字盤側)や内部など、この写真に写らない部分に使われています。長大な板バネ状のコハゼばねは懐中時計に見られる方式で、時計が流れ作業的に制作されるようになる以前の、一個一個の時計制作に時間と手間がふんだんに掛けられていた古き良き時代の香りを伝えています。




 脱進機はクラブトゥース式で、天符の振り角は大きく、天真の曲がり、ひげぜんまいの巻き乱れ等の問題も一切ありません。ひげぜんまいは平ひげで、ひげ棒の間隔は現代の時計に比べてかなり広く作られています。主ぜんまいの巻き上げ機構及び時刻合わせ機構は現代の時計と同様のペンダント・ワインド、ペンダント・セットで、動作上の問題はまったくありません。


 本品は男性用として作られた時計ですが、20世紀中葉以前の時計は現在に比べて小さめのサイズであり、たいへん上品であるゆえに、女性にもお使いいただけます。下に示した写真のうち、最初の二枚は男性、最後は女性による装着例です。







 商品写真は明るい茶色のバンドを取り付けて撮影しましたが、お好きな色、質感のバンドに換えることができます。時計会社はバンドまで作っていませんので、アンティーク時計のバンドをお好みのものに取り換えても、アンティーク品としての価値はまったく減りません。時計お買上時のバンド交換は、当店の在庫品であれば無料で承ります。遠慮なくお申し付けくださいませ。





本体価格 88,000円 現状売り 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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