女性用金無垢時計 《ピンクゴールドのロレックス Rolex 5″F 手巻き十五石》 華やぎつつも力強いアール・デコのデザイン 1940年代中頃



 ロレックス社が制作した女性用手巻き時計。電池が要らない機械式時計で、一日に一回、手動でぜんまいを巻いて使います。時計の本体は一円玉ほどの可愛らしいサイズで、ロレックス社の現行品のようないかつさはありません。

  時計内部の機械をムーヴメント(英 movement)といいます。時計本体の外側はムーヴメントを保護する部分で、この金属製部をケース(英 case)といいます。ケースはめっきではない九カラット・ピンク・ゴールド(九金)でできています。このような時計を金無垢(きんむく)時計と呼んでいます。




 時計ケースのサイズには流行があります。

 大まかに言うと、いまから百年前の携帯用時計(ウォッチ、すなわち懐中時計と腕時計)は大きなサイズでした。当時は女性が男性に先んじて腕時計を使い始めた時代でしたが、時計ムーヴメントを小さく作る技術がまだ十分に発達していなかったので、女性用腕時計は昨今と同じぐらいの大きめサイズでした。いっぽう男性用腕時計は未だ存在せず、男性は懐中時計を使っていましたが、大きなサイズの懐中時計が流行していました。

 二十世紀も半ばになる頃には、男女とも現在に比べてかなり小さなサイズの腕時計が流行するようになります。機械は大きく作るよりも小さく作る方が難しいので、当時の時計各社は薄く小さな時計を作って技術力を誇示しました。

 1960年代後半頃になると小さな腕時計は徐々に飽きられ、サイズが再び大きくなってゆきます。こうして二十世紀末頃に、腕時計のサイズは再び大きくなりました。大きな腕時計の流行はしばらく続きましたが、最近になって時計は再び小さくなり始めています。腕時計の小型化・薄型化は今後も進行し、数十年後には二十世紀半ばのように小さなサイズになると予想されます。





 1960年代の女性用時計と比べると、本品はかなり大きいサイズです。1940年代の女性用時計としても大きめで、1930年代の時計ぐらいのサイズがあります。しかしながら男女ともに時計のサイズが小さくなった二十世紀半ばの品物ですので、サイズは一円硬貨ほどです。上の写真は本品と一円硬貨を実際に並べて撮影したもので、合成写真ではありません。

 現代の時計の場合、バンドを取り付けるための「ラグ」と呼ばれる突起が十二時側と六時側に二本ずつ突出し、バネ棒という部品を使用して、幅広のバンドを付けるようになっています。これに対して二十世紀半ばの女性用時計はラグが十二時側と六時側に一本ずつ突出し、革やファブリックの紐をそれぞれのラグの孔に通します。バネ棒は使いません。このようなバンドの取り付け方を、センター・ラグ方式といいます。本品もセンター・ラグ方式です。

 このページの商品写真は、本品に青紫色の革紐を取り付けて撮影しています。この紐はロレックス社が作っているわけではなく、写真を撮影した際、本品にたまたま取り付けられていただけのことです。他の色や材質が良ければ、お客様のご希望に合わせて無料で付け替えいたします。





 本品に登載されているムーヴメントは 1943年頃に開発された機種です。ケースの九カラット・ゴールド(9C 九金)はイギリスでよく使われた純度ですので、本品はスイスからイギリスに輸出されたものと思われます。

 スイスは第二次世界大戦中も中立を保ちましたが、当時のイギリスは世界大戦の当事者で、英仏海峡はドイツによって封鎖されていました。したがって本品がイギリスの輸出されたのは、おそらく第二次世界大戦後間もない時期でしょう。





 イギリスは 1929年から 1939年まで世界恐慌に苦しみましたが、第二次世界大戦が始まると、経済は却って好転しました。二十世紀前半は女性の社会進出が未だ進んでいませんでしたが、戦時下のイギリス人女性たちは出征した男性に代わって、航空機工場をはじめとする職場で熱心に働きました。開戦当初は男女が同じ仕事をしていても、女性は男性の六割程度の賃金でした。しかしながら 1940年以降、チャーチル戦時内閣の労働大臣アーネスト・べヴィン(Ernest Bevin, 1881 – 1951)の主導によって女性時の賃金は上昇し、金属工業や自動車産業では男性の八割程度、化学工業では男性の九割程度が支払われるようになりました。





 現代の時計(電池で動くクォーツ式時計)は安価ですが、二十世紀半ばまでの時計(ぜんまいで動く機械式時計)は、高級ブランドの時計や金無垢時計でなくても、たいへん効果でした。わが国でいえば、普通の人が使うセイコーやシチズンの時計であっても、初任給の二か月分ぐらいが相場でした。イギリスでも事情は同じで、男性は外で働く必要上、時計を身に着けていましたが、平時の女性は職業を持たず家庭の主婦である場合がほとんどだったので、腕時計を持っていない人も多かったのです。

 しかしながら戦時に工場などに動員された女性はおそらく人生で初めてまとまった金額の給与を受け取りました。当時高価であった時計の中でも、本品のような金無垢時計はとりわけ高価でしたが、女性がこの時計を購入した背景には、第二次世界大戦という大きな出来事がありました。





 時計において、時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を、文字盤(もじばん)または文字板(もじいた)といいます。本品の文字盤はライト・シルバー(明るい銀色)で、八十年近く前のアンティーク時計としては非常に綺麗な状態です。半艶消しに仕上げられ、柔らかな光を放つ文字盤の上部にロレックス社のロゴが、最下部にスイスの文字が、いずれも黒文字で書かれています。

 アンティーク時計の文字盤がひどく変色していて時刻が読みづらい場合、文字盤の表面を削ったり色を塗り直したりして、綺麗な状態にすることができます。このような作業を文字盤再生(リファービッシュ、リダン)といいます。本品文字盤の保存状態は良好すぎるほどですが、再生文字盤ではなく、制作当時のままのオリジナルです。





 文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の数字を、インデックス(英 index)といいます。本品のインデックスは金色のアラビア数字による立体インデックスです。棒や円のように抽象的な形を使わず、アラビア数字のみを使ったインデックスは、1940年代に制作された時計の特徴です。





 針は最も優雅なリーフ型です。本品をはじめ、二十世紀半ばの女性用時計はほとんどがドレス・ウォッチですので、秒針は初めからありません。





 上の写真はベゼルを取り外し、本品の文字盤を撮影しています。文字盤からはみ出て見えるのは、ムーヴメントの地板(じいた)です。

 針の表面はところどころが酸化していて、ガラス越しだと色が分かりづらいですが、本品の針はブルー・スティール製です。ブルー・スティールとは、鋼を加熱して青い酸化被膜を作ったものです。ブルー・スティールは見た目が美しいことに加えて腐食(錆)に強くなります。ブルー・スティールは貴金属ではありませんが、制作に手間がかかるので、現代の時計の青い針はたいていの場合青く塗装しています。本品の青い針は真正のブルー・スティールです。





 ぜんまいを巻いたり時刻を合わせたりする際のツマミを、竜頭(りゅうず)といいます。竜頭は三時の位置から突出しています。アンティーク時計は毎日ぜんまいを巻く必要がありますので、竜頭が摩耗しやすいですが、本品の竜頭は新品同様の良好な状態です。竜頭にはロレックス社のマークが入っています。

 なお時計を長年ご愛用いただいて竜頭が摩耗しても、当店にて汎用品に取り換え可能です。ご安心ください。竜頭のデザインを変更することもできます。シンプルな竜頭もありますし、石付きの竜頭もあります。





 本品の裏蓋に、歪み等の特筆すべき問題は何もありません。たいへん綺麗な状態です。





 上の写真は裏蓋を外し、ムーヴメント(時計内部の機械)を取り出して撮影しています。裏蓋の内側にはロレックス社の社名と「世界記録」(英 WORLD RECORD)の文字、金の純度を示す九カラット(9C)の文字が刻印されています。





 本品のムーヴメントは電池ではなくぜんまいで動いています。本品のようにぜんまいで動く時計を「機械式時計」といいます。良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはサファイアと同じコランダムで、たいへん硬い鉱物ですので、高級時計の部品として使用されるのです。

 上の写真に赤く写っているのがルビーです。ルビーは四つほどしか見えませんが、ムーヴメントの内部や文字盤側に、あと十一個のルビーが使われています。十五個のルビー製部品を使った十五石ムーヴメントは、必要な個所のほとんどにルビーを使用した良質の時計です。





 上の写真の左側に大きな歯車があります。これは角穴車(かくあなぐるま)といいます。角穴車の下には香箱(こうばこ)と呼ばれる薄い円筒状容器があって、その中にぜんまいが収納されています。

 本品の角穴車にはロレックス(ROLEX)、十五石(仏 15 RUBIS)、スイス製(英 SWISS MADE)の文字が刻印されています。角穴車の右に写っている大きなプレートは二番受けという部品です。二番受けにもロレックスの社名(ROLEX)が彫られています。





 上の写真で右側には、直線状の二本の腕で大きな環を支え、髪の毛のように細いぜんまいを中心に取り付けた部品が写っています。これは天符(てんぷ)といって、振り子の役割をします。天符の中央に見えるルビー(受け石)は、シャトン(仏 chaton 子猫)と呼ばれる金製の受けに嵌め込まれています。金は軟らかい金属なので、ルビーを押し込んで固定するために使われています。

 本品の天符の形状は非常に特徴的で、環状部分(天輪 てんわ)の外周に凹凸があります。筆者(広川)はこのような天輪を見たことがありません。天輪に重量があると勢いが出ますし、動きも安定しますから、おそらくその効果を狙って天輪に肉付けしているのでしょう。





 上の写真はぜんまいを巻いて、天符を振動させています。振動とは、往復するように回転することです。振動数は毎時一万八千回ほどと思いますが、高速で回転する天輪の軌跡は全くぶれておらず、天真に曲がりが無いことがわかります。ひげぜんまいも良い状態で、時間はきちんと合います。





 上の写真はムーヴメントの地板側で、針と文字盤を外して撮影しています。6931はレファレンス・ナンバー、またはムーヴメントのシリアル・ナンバーです。レファレンス・ナンバーとは、同一キャリバー内をさらに細分化したグレードを表す番号です。シリアル・ナンバーとは、個別のムーヴメントを表す番号です。





 本品のムーヴメントは受け側も良好な状態でしたが、地板側から見える竜真まわりや日の裏輪列もたいへん綺麗で、錆(さび)等の問題は一切ありません。裏押さえも折れていません。





 本品と同一機種のアンティーク時計をインターネットで探してみると、ステンレス・スティール製ケースのものを東京の同業者が四十万円強の価格で販売していましたが、他には見つけられませんでした。私はロレックス社の時計が嫌いで、通常であれば同社の製品は決して扱いません。しかしながら本品はたいへん珍しい機種である上に、アール・デコ様式のピンク・ゴールド無垢ケースが美しく、ムーヴメントの状態も極めて良好ですので、例外的に扱うことにしました。お支払方法は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払いでもご購入いただけます。





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電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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