きらきら光る手巻時計 ホワイト・ゴールド無垢のアンティーク・オメガ 宝石のようなカット・クリスタル 一円玉に乗るサイズ 1953年


 スイスのオメガ社が制作した女性用手巻き時計。電池が要らない機械式時計で、一日に一回、手動でぜんまいを巻いて使います。銀色の部分は十四カラット・ホワイト・ゴールド(十四金)でできており、「金無垢(きんむく)時計」と呼ばれる高級品です。

 時計の本体は一円玉よりも小さく、現代の時計には見られない可愛いサイズです。バンドの取り付け部がケース本体から大きく突出していますが、「ラグ」と呼ばれるこの部分は自由に動くようにピンで留められており、綺麗な曲線を描いて手首を飾ります。





 時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。時計本体の外側はムーヴメントを保護する部分で、これを「ケース」(英 case)といいます。ケースはベゼル(英 bezel)と裏蓋(英 back)に分かれます。ベゼルはムーヴメントを保護するとともに、風防(いわゆる「ガラス」)を嵌める枠としても機能します。


 時計ケースのサイズには流行があります。

 大まかに言うと、いまから百年前の携帯用時計(ウォッチ、すなわち懐中時計と腕時計)は大きなサイズでした。当時は女性が男性に先んじて腕時計を使い始めた時代でしたが、時計ムーヴメントを小さく作る技術がまだ十分に発達していなかったので、女性用腕時計は昨今と同じぐらいの大きめサイズでした。いっぽう男性用腕時計は未だ存在せず、男性は懐中時計を使っていましたが、大きなサイズの懐中時計が流行していました。

 二十世紀も半ばになる頃には、男女とも現在に比べてかなり小さなサイズの腕時計が流行するようになります。機械は大きく作るよりも小さく作る方が難しいので、当時の時計各社は薄く小さな時計を作って技術力を誇示しました。

 1960年代後半頃になると小さな腕時計は徐々に飽きられ、サイズが再び大きくなってゆきます。こうして二十世紀末頃に、腕時計のサイズは再び大きくなりました。大きな腕時計の流行はしばらく続きましたが、最近になって時計は再び小さくなり始めています。腕時計の小型化・薄型化は今後も進行し、数十年後には二十世紀半ばのように小さなサイズになると予想されます。





 本品が作られた 1950年代は、腕時計が極小化した時代です。上の写真からもお分かりいただけるように、本品のケース本体は一円硬貨よりも小さなサイズです。他方、ムーヴメント(時計内部の機械)には或る程度の厚みがあります。したがって現代の時計に比べると、女性用アンティーク時計はころころと可愛らしいデザインに仕上がります。実際の厚みは現代の時計と変わらず、本品の厚みも現代の時計に比べてむしろ薄いですが、ケースの直径が小さいために、高さ(厚み)が強調されて感じられます。


 本品のケースはめっきではない金そのもの、正確に言うと「十四金」という金合金でできています。このような時計を「金無垢時計」といいます。

 時計のケースは手首に直接触れるので、ベース・メタル(貴金属ではない金属)を使うと、敏感な方に金属アレルギーの症状が出ることがあります。金(ゴールド)は金属アレルギーを起こしにくいので、時計ケースの素材として優れています。

 純金を木槌で叩くと、薄く伸びて箔になります。このことからも分かるように、金はたいへん軟らかい金属です。純金は軟らかすぎて容易に変形し、実用品に使うことができません。したがってジュエリーや時計ケースを金で作る場合には、実用的な強度を持たせるために、ニッケル、銅、銀などを混ぜて意図的に純度を落とし、合金とします。わが国でよく目にする「十八金」は純度二十四分の十八の金合金、アメリカ合衆国で使われる「十四金」は純度二十四分の十四の金合金です。本品のようなホワイト・ゴールドは、金とニッケルの合金です。

 「十四金」は「十八金」に比べて丈夫である点が優れています。時計は日々着用する品物ですから、ケースの素材には耐久性が必要です。十八金は摩耗や変形を起こしやすいですが、十四金であれば大丈夫です。





 バンドを取り付けるための突起をラグ(英 lugs)といいます。現代の時計は十二時側と六時側にそれぞれ二本ずつのラグがあります。現代の時計バンドは革や布でできた薄く幅広の形状で、バネ仕掛けで伸縮する小さなピン(バネ棒)により、それぞれの側のラグに固定されています。

 しかしながら二十世紀中頃の女性用時計はとても小さいので、ほとんどの場合、十二時側と六時側にそれぞれ一本ずつのラグが突出し、バンドをラグの孔に通す「センター・ラグ」方式が採用されていました。本品もそのような時計のひとつです。

 本品のラグは植物の葉か鳥の羽根のような形で、ケース本体から大きく突出しています。ラグがケース本体から大きく突出すると、時計の外観が細長くなってスマートな印象を与えてくれます。しかしながらその一方で、手首に時計を装着した際にラグの先端が浮き上がってしまい、見た目の点でも装用感の点でも問題が起こります。しかるに本品のラグはケース本体にピンで連結されており、ジョイント部が自由に動きます。このためラグを含めた時計全体は、長めのサイズにかかわらず、手首の丸みに綺麗に沿って、ドレッシーな印象を崩しません。





 時計会社はバンドを作っていません。アンティーク時計とバンドの組み合わせに必然性は無く、以前の所有者が自分のサイズや好みに合ったものを付けているというだけのことです。したがってアンティーク時計のバンドに関して、「オリジナル」にこだわる必要はまったくありません。バンドは消耗品ですので、傷んでいれば取り替える必要がありますし、当時のバンドが使える状態で残っている場合でも、自分のサイズや好みに合わなければ取り替えて構いません。

 時計ケースと同色の金属製バンドは、ラグが可愛い形をしていても、せっかくのデザインを目立たなくするという欠点があります。本品のラグは植物か鳥の羽根のように美しく造形されているので、当店にて黒いコード・バンド(紐のバンド)を取り付けました。コード・バンドは使い慣れないうちは着脱の操作が少し面倒ですが、金属製バンドよりも高級感があり、小さな時計を引き立ててくれます。コード・バンドは慣れればスムーズに着脱できるようになります。コード・バンドを使いこなせるかどうか不安な場合は、金属製バンドに容易に変更できますので、どうぞご安心ください。





 本品の風防は厚みがあり、真横から見ると台形に盛り上がっています。材質はサファイアガラスで、周辺にファセット・カットが施され、宝石そのものの輝きを放っています。

 サファイアガラスとは、無色透明の人工サファイア結晶をダイヤモンド・ダストで研磨したものです。サファイアガラスに使われるサファイアは、天然サファイアと同じ物質(コランダム Al2O3)です。コランダムはモース硬度(引っ搔き硬度)が「九」で、硬度七のミネラルガラス(普通のガラス)に比べると、格段に瑕(きず)がつきにくいという特長があります。またミネラルガラスの光沢は宝石学用語で言う「ガラス光沢」ですが、コランダムの光沢は「強いガラス光沢」あるいは「亜金剛光沢」と表現され、ベリルトルマリン等、ほとんどの宝石よりも強く光ります。本品の風防にはカットが施されていますが、これはサファイアをカットしたのと同じことです。本品を手首に装着すると、手首が動くたびにきらきらとした光がファセットを移動し、宝石の煌めきを放ちます。

 モース硬度は引っ掻きに対する強さの指標です。しかるにある鉱物のモース硬度が高いからと言って、絶対に破損しないわけではありません。宝石は硬いですが、脆(もろ)いので、衝撃によって破損することは充分にあり得ます。ダイヤモンドやサファイアは鋼鉄の鑢(やすり)で引っ掻いてもまったく瑕が付きませんが、靭性(じんせい 粘り強さ)に欠けていて脆いので、金槌で叩くと容易に断口を生じ、あるいは粉砕されてしまいます。本品の風防はサファイア製で、通常のガラス製風防に見られるような引っ掻き傷は容易に付きませんが、カットの稜線部分のところどころにフリー・バイト(英 flea bites 蚤がかじったように小さな欠損)があります。ただしこれらの欠損は非常に微細で、肉眼で見ても気づかない程度ですので、気になりません。





 時計において、時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を「文字盤」(もじばん)または「文字板」(もじいた)、文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の数字を「インデックス」(英 index)といいます。本品の文字盤はライト・シルバー(明るい銀色)で、経年により微かに色づいています。ところどころにごく小さなキズもありますが、真正のアンティーク時計としては十分に綺麗な状態です。半艶消しに仕上げられ、柔らかな光を放つ文字盤の上部には、「オメガ」(OMEGA)のロゴが黒文字で書かれています。

 インデックスは小さな棒状部品を文字盤に取り付けた立体インデックスで、十二時のみが大文字のオメガ(Ω ギリシア語アルファベットの最後の文字)になっています。十二時以外のインデックスは金属光沢のあるシンプルなバー(英 bar 棒)型で、1960年代の流行を先取りしています。針、インデックス、文字盤はいずれも銀色を基調としますが、光沢と色合いが異なるゆえ視認性に問題は無く、見易いデザインです。なお本品をはじめ、二十世紀半ばの女性用時計はほとんどがドレス・ウォッチですので、秒針はありません。





 ぜんまいを巻いたり時刻を合わせたりする際のツマミを、竜頭(りゅうず)といいます。竜頭は三時の位置から突出しています。アンティーク時計は毎日ぜんまいを巻く必要がありますので、竜頭が摩耗しやすいですが、本品の竜頭は新品同様の良好な状態です。

 なお時計を長年ご愛用いただいて竜頭が摩耗しても、当店にていつでも取り換え可能です。ご安心ください。竜頭のデザインを変更することもできます。シンプルな竜頭もありますし、石付きの竜頭もあります。





 本品の裏蓋に、歪み等の特筆すべき問題は何もありません。上の写真では可動式ラグのジョイント構造がよくわかります。ジョイント部分にも摩耗等の問題は何もありません。





 本品のムーヴメント(時計内部の機械)は電池ではなくぜんまいで動いています。本品のようにぜんまいで動く時計を「機械式時計」といいます。良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはサファイアと同じコランダムで、たいへん硬い鉱物ですので、高級時計の部品として使用されるのです。上の写真に赤く写っているのがルビーです。ルビーは五つしか見えませんが、ムーヴメントの内部や文字盤側にも、あと十二個のルビーが使われています。

 必要な部分すべてにルビーを入れると、「十七石」(じゅうななせき)のムーヴメントになります。十七石のムーヴメントは「ハイ・ジュエル・ムーヴメント」(英 high jewel movement)と呼ばれる高級品です。本品のムーヴメントは十七石のハイ・ジュエル・ムーヴメントで、「セヴンティーン・ジュエルズ」(17 SEVENTEEN JEWELS 十七石)、「スイス」(SWISS スイス製)、「オメガ・ウォッチ・カンパニー」(OMEGA WATCH Co. オメガ時計会社)等の刻印があります。





 ギリシア語アルファベットのオメガ(Ω)に添えられた三桁の数字(212)は、ムーヴメントの機種名(キャリバー名)です。「オメガ キャリバー 212」は女性用時計の手巻ムーヴメントです。これの元になった「オメガ キャリバー 210」には十五石のものもありますが、「キャリバー 212」はすべて十七石で、ハイ・ジュエルの高級機です。

 上の写真で手前に写っている八桁の数字(13555075)は、世界に一つしかない本品固有のシリアル番号です。この番号を記録と照合すると、本品が 1953年頃に製作された時計であることが分かります。





  上の写真の右側に写っている金色の大きな環は「天符」(てんぷ)という部品で、振子の役割をします。時計が動いているとき、「オメガ キャリバー 212」の天符は一時間に 9,000回、往復するように回転します。この天符をはじめ、機械式時計の部品はマイクロメートル(千分の一ミリメートル)の精度で制作されています。現代ではコンピュータ制御の産業ロボットを使って微細な加工ができますが、二十世紀半ばはすべての精密加工が人の手によるものでした。

 「オメガ キャリバー 212」は一円硬貨よりも小さなサイズですから、その製作には熟練した時計師の技術が必要であったことは言うまでもありません。1953年当時、ハイ・ジュエルの金無垢時計である本品の価格は、初任給の五か月分以上に相当しました。現在の貨幣価値に換算すれば、八十万円から九十万円位でしょうか。良質の時計はたいへん高価であったわけですが、しかしながらこれは「ブランド代」ではなくて、「一生もの」と呼べるだけの内実、実質的価値を伴っていました。ムーヴメントにルビー製部品を多用するのも、優れた耐久性と長寿命を確保するためです。

 アンティーク時計はどこの店でも原則的に「現状売り」で、壊れた場合に修理が困難ですが、アンティークアナスタシアでは他店で不可能な修理に対応しています。「オメガ キャリバー 212」のような高級ムーヴメントは特に手に入りにくいので、部品用ムーヴメントの確保にも力を入れています。詳しくはこちらをご覧ください。バンド交換、バンドの種類の変更も可能です。高級感のあるコード・バンドがお薦めですが、お好みにより金属製バンドに変更することもできます。バンド交換は無料で承ります。





 本品はファセット・カットされたサファイアの煌めきが美しく、手首の曲線に沿うホワイト・ゴールドが、肌の色を美しく引き立ててくれます。時計は無料でオーバーホール(分解掃除)をした後にお渡しいたします。お買い上げ後も期限を切らずに修理に対応しますので、日々安心してご愛用いただけます。

 お支払方法は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払いでもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。





本体価格 218,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




女性用金無垢時計と銀無垢時計 メーカー名 《OからU》 商品種別表示インデックスに戻る

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