ヨーロッパの女性用アンティーク 《インドゥス》 銀無垢ブレスレットのハイ・ジュエル・ウォッチ 全長十七センチメートル 1978年から1980年代初頭

INDUS, Durowe cal. 1980, 17 jewels, total length 17 cm, 1978 to early 1980s



 1978年から1980年代初頭にヨーロッパで作られた女性用時計。ぜんまいで動く機械式時計としては最終世代に当たります。ケースとバンドは銀でできており、時計とバンドを合わせた全長(手首に装着する際に有効な長さ)は、およそ十七センチメートルです。





 時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。ムーヴメントを保護する金属製の筐体(きょうたい)、すなわち時計本体の外側を「ケース」(英 case)といいます。ケースは「ベゼル」(英 bezel)と裏蓋に分かれます。ベゼルはムーヴメントを保護するとともに、風防(いわゆる「ガラス」)を嵌める枠としても機能します。

 三時の位置でケース側面から突出するツマミを「竜頭」(りゅうず)といいます。本品をはじめ、アンティーク時計(ヴィンテージ時計)は「機械式」で、電池ではなく、ぜんまいで動いています。時計のぜんまいを巻き上げるとき、及び時刻合わせを行うときに、竜頭を操作します。竜頭の操作方法はとても簡単です。竜頭を右回りに回転させると、ぜんまいが巻き上がります。竜頭を一段階引き出して右回りまたは左回りに回転させると、針を早回しすることができます。





 本品のケースとバンドは純度 835パーミル(835/1000、または 83.5パーセント)の銀製で、ケースの裏蓋及びバンドの留め金に "835" の刻印があります。

 銀にはロジウムめっきが掛かっていないので、しばらく使わないでいると表面が硫化して黒ずみます。私(広川)は古い物の趣(おもむき)が好きなので、ロジウムめっきを施さない生地(きじ)の銀が好きですが、黒ずみが気になる場合は、ジュエリー磨き用の布が安価に市販されていますので、それで軽く磨けば簡単にクリーニングできます。なお本品を普段使いしていれば、洋服の袖や肌などに接触して自然に磨かれるので、銀の黒ずみは起こりません。


 時計において、時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を「文字盤」(もじばん)または「文字板」(もじいた)といいます。本品の文字盤はおそらく銀製ですが、コーティング処理がされているので、硫化して黒ずむことはありません。

 文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の数字を「インデックス」(英 index)といいます。本品のインデックスは脚付きの小部品を文字盤に植字してあり、形の上では 1960年代、70年代を中心に流行したバー・インデックス(棒状のインデックス)です。ひと口にバー・インデックスといってもさまざまなバリエーションがありますが、本品は細い銀線の中央に黒のラインを入れたシンプルなもので、上品さと見やすさを兼ね備えています。





 本品はヴェンテージ時計(アンティーク時計)としては最も新しい時代に属しますが、およそ四十年前に作られた機械式時計であり、ヴィンテージ風に作られた現行品ではありません。本品が真正のヴィンテージ品であることは、機械式時計特有の「チクタクチクタク…」という動作音でも分かりますし、秒針を持たないことでも分かります。ヴィンテージ風に小さく作られた現代の時計は中三針式で、秒針があります。

 本品のように秒針を持たず、時針と分針のみを持つ時計を、「二針」(にしん)の時計と呼びます。二針の時計は、ドレス・ウォッチです。

 現代の時計は「中三針(なかさんしん)式」といって、時針、分針と同じ位置、すなわち文字盤の中央に、秒針が取り付けられています。しかしながら秒針を時針、分針と同じ位置に取り付けるのは技術的に難しいことで、古い時代の時計は、ほとんどの場合、六時の位置にスモール・セカンド(小秒針)を取り付けていました。よほど特殊なものを除いて、懐中時計はみなスモール・セカンド式ですし、1950年代以前の男性用腕時計もスモール・セカンド式です。女性用腕時計に関しては、昔は女性の社会進出が少なかったために、女性用時計に秒針は不要と考えられていました。看護師として活躍する女性は大勢いましたが、医師や看護師はストップ・ウォッチを持っていました。一般女性が使う時計は一円硬貨よりも小さく、そのような時計に小秒針を取り付けるのは困難でもあり、極小の小秒針を仮に取り付けてもどこを指しているのか見分けが付かず、ほとんど用を為しません。それゆえ女性用腕時計には秒針を付けないのが普通でした。

 本品は一円硬貨よりもずっと小さなムーヴメントを有しますが、本品のムーヴメントが開発された 1970年代は機械式時計の製作技術が最高水準に達した時代であり、小さな中三針式ムーヴメントを作ることは十分に可能でした。また本品の文字盤はムーヴメントに比べて大きく、見易いサイズのセンター・セカンド針(中三針式の秒針)を付け得るサイズです。それにもかかわらず本品が秒針を持たないのは、時計全体の優雅さが秒針によって損なわれると考えられたからです。上述したように、秒針はもともと実用的な目的を有します。逆に言えば秒針が無い本品は、純然たるドレス・ウォッチです。ドレス・ウォッチである本品は、カジュアルな普段着のみならず、ドレス・アップした装いにもよく似合います。





 文字盤の上半部には、「インドゥス」(INDUS)のロゴがあります。筆者の記憶が正しければ、インドゥスは 1950年代末か 1960年頃に、オランダまたはベルギーで設立された時計会社です。筆者はこれまでに数点の「インドゥス」を見ましたが、いずれも清楚なデザインで、ハイ・ジュエル(後述)の良質なムーヴメントを搭載していました。本品もそのような時計のひとつです。

 ちなみに「インドゥス」というブランド名は、おそらく「インドゥストリエル」(独 industriell)、「アンデュストリエル」(仏 industriel)、「インダストリアル」(英 industrial)等に由来する造語で、インドやインダス川とは無関係です。スイスのティソ社が同じ「インドゥス」というブランド名で製品を出していましたが、ティソ社の「インドゥス」はクロック、及びクロック用ムーヴメントのブランドですので、これも本品とは無関係です。


 文字盤の下半部には「インカブロック」(INCABLOC)の文字があります。「インカブロック」の意味については、後に説明します。


 本品のクリスタル(風防)は高透明度のアクリル樹脂(プレクシグラス、ルーサイト)で、緩やかなドーム状に盛り上がっています。盛り上がった風防は優雅な曲線を描き、女性用時計にふさわしい優しさを本品に与えています。ドーム状の風防は平坦な風防に比べて瑕(きず)が付き易いという欠点があり、ガラス製風防の場合に大きな問題となりますが、本品に採用されているプレクシグラス製風防は瑕を簡単に磨き落とすことができますので、安心して使えます。





 時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。上の写真は本品から取り出したムーヴメントです。

 本品のムーヴメントは電池ではなくぜんまいで動いています。ぜんまいで動く「機械式腕時計」から、電池で動く「クォーツ式腕時計」への交代は、1980年代に起こりました。1970年代末ないし1980年代初頭に製作された本品は、間もなく姿を消すことになる「機械式時計」の最終世代です。

 良質の機械式腕時計、懐中時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。上の写真で赤く見えるていのが、ルビーです。ルビーはモース硬度「九」と非常に硬い鉱物(コランダム Al2O3)ですので、機械式時計の部品として使用されていました。本品のムーヴメントには十七個のルビーが使われています。写真ではルビーが五個しか見えませんが、あとの十二個は機械の裏側(文字盤側)など、上の写真に写っていない部分に使われています。本品のように十七個のルビーを使用した「十七石」(じゅうななせき)のムーヴメントは、摩耗してはならない箇所のほぼすべてにルビーを使用しており、「ハイ・ジュエル・ムーヴメント」(英 high jewel movement)と呼ばれる高級品です。





 本品のムーヴメントは、ドイツのドゥロヴェ社(DUROWE, Deutsche Uhrenrohwerke 「ドイツ・エボーシュ社」の意)が製作した「キャリバー 1980」です。「ドゥロヴェ キャリバー 1980」(INT 1980)は 1965年から 1972年にかけて製作された「キャリバー 1977」の後継機です。「ドゥロヴェ キャリバー 1980」のサイズは、一円硬貨(直径二十ミリメートル)よりもはるかに小さく、15 x 13ミリメートルしかありません。それにも関わらず、毎時二万一千六百振動、パワー・リザーヴ四十四時間の性能を誇る「ドゥロヴェ キャリバー 1980」は、ハイ・ジュエル・ウォッチ用の高級機です。

 1970年代、本品のような銀無垢ハイ・ジュエル・ウォッチの価格は、初任給のおよそ三カ月分でした。現代のクォーツ時計に比べるとずいぶんと高価ですが、現在スイスで作られている機械式時計も、価格はやはり数十万円です。ほとんどのクォーツ時計には、実はおもちゃのようなプラスチック製ムーヴメントが入っていて、そのせいで安く手に入るようになったのですが、良質の機械式時計の値段は、昔も今も変わりません。





 上の写真の右端に大きな輪が写っています。この輪は「天符」という部品で、機械式時計の心臓部分です。天符の中央に見える大きなルビーは、リュラ(竪琴)のような形状の板バネで押さえられています。これは「インカブロック」(INCABLOC)という耐震装置(耐衝撃装置)で、時計を誤って落下させたときなどに、衝撃を緩和する働きがあります。

 本品のムーヴメントは天符の振り角も大きく、良好な状態です。インカブロックも装備しているので、今後に起こり得る衝撃に関しても安心です。オシドリの嵌まる竜真の窪み、キチ車と鼓車の噛み合わせ部分、裏押さえの腕部分等、消耗しやすい部分にも異常はありません。アンティーク時計はどこの店でもほぼ現状売りで、修理にはなかなか対応してもらえませんが、当店ではアンティーク時計の修理に対応していますので、ご安心ください。当店の修理対応につきましては、こちらをご覧くださいませ。





 本品の全長(手首に装着する際に有効な長さ)は、およそ十七センチメートルです。時計は無料でオーバーホール(分解掃除)をした後にお渡しいたします。お買い上げ後も期限を切らずに修理に対応しますので、日々ご愛用いただけます。お支払方法は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(二回、三回、六回、十回、十五回など。金利手数料不要)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。どうぞ遠慮なくご相談ください。





148,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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