フランス製 銀無垢バングル・ウォッチ 《アジュール》 十七石 1960年代


 洋服や髪形や化粧に時代ごとの特徴があるのと同じように、女性用時計のデザインにも時代ごとの特徴があります。1900年代から1910年代は懐中時計の特徴を色濃く残したトランジショナル・ウォッチの時代、1920年代は華やかな彫金装飾のある細長い時計の時代、1930年代から1940年代は装飾を控えめにした小さな時計の時代、1950年代は個性的なデザインの小さな時計が一挙に花開いた時代でした。

 本品はその次の年代である1960年代に、モード最先端のフランスで作られた時計です。時計全体のデザインには、この時代を特徴づけるミニマリスムを大胆に取り入れています。時計全体のサイズは大きくなり、現代の時計に近づいています。





 本品の文字盤は艶消しあるいは半艶消しのシルバーで、わずかにクリーム色がかった白、あるいは明灰色に見えます。五十年前の時計ですので、新品同様というわけにはゆかず、ところどころにくすみ(変色)があります。しかしながら本品の変色はごく軽度で、アンティーク時計が好きな方であれば全く気になりません。

 文字盤には上品な小文字で「アジュール」(azur)とだけ書かれています。「アジュール」はフランス語で「青」「紺碧(こんぺき)」「蒼穹(そうきゅう 青空)」のことです。





 文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の数字を、「インデックス」といいます。本品のインデックスは銀色の小さな部品を植字した立体インデックスで、半艶消しの文字盤を背景に、針と共に銀色に輝いています。この時代の女性用時計に秒針はありません。

 時計内部の機械を「ムーヴメント」、ムーヴメントを保護する金属製の容器(時計の外側)を「ケース」といいます。本品のケースは純度八十パーセントの銀でできています。このような時計を「銀無垢時計」(ぎんむくどけい)といいます。本品は時計全体が上品な輝きを放ち、高級感があります。

 銀の時計を長期間放置すると、表面が空気中の硫黄分と反応して硫化銀ができ、黒ずみます。しかしながら時計を日頃から使っていれば、洋服の袖などと擦れ合うことで知らず知らずのうちに磨かれ、黒ずみません。複雑な凹凸があるデザインの場合、窪んだ部分は洋服と擦れ合わないので、どうしても黒ずみがちです。しかしながら本品は凹凸がほとんど無いので黒ずみが起こりにくく、また長期間使わずにいて黒ずんだ場合でもクリーニングは容易です。





 銀は貴金属であり、アレルギーを引き起こしにくいので、優れたケース素材です。金ほど軟らかくないので摩耗や変形を起こしにくいのも良い点です。銀の比重は金よりも小さいですが、鉄や銅よりは大きく、本品を手に取ると心地よい重量感があります。本品の重さは 54.5グラムで、五百円硬貨八枚分に相当します。

 本品はベゼル(文字盤を取り巻く部分)、裏蓋、マンシェット(仏 manchette バンドに相当する部分)のすべてが銀でできています。マンシェットはベゼルの裏側に溶接され、可動式にはなっていません。マンシェットの幅は十六ミリメートル、開口部の広さは二十六ミリメートルです。





 上の写真で、裏蓋の中央に見える小さなくぼみ、及び右上に見えるベゼル裏側の小さなくぼみは、フランスにおいて「アルジャン 800」(仏 argent 800 純度八十パーセントの銀)を示す「蟹」のポワンソン(仏 poinçons ホールマーク、貴金属検質印)です。







 マンシェットにも「蟹」のポワンソンが刻印されています。





 本品のムーヴメント(時計内部の機械)は電池ではなくぜんまいで動いています。本品のようにぜんまいで動く時計を「機械式時計」といいます。良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはたいへん硬い鉱物ですので、高級時計の部品として使用されるのです。必要な部分すべてにルビーを入れると、「十七石」(じゅうななせき)のムーヴメントになります。

 十七石のムーヴメントは「ハイ・ジュエル・ムーヴメント」(high jewel movement)と呼ばれる高級品です。本品のムーヴメントはフランス・エボーシュ社の「キャリバー 68」(FE/Femga 68)という高品質ムーヴメントで、「セヴンティーン・ジュエルズ」(17 SEVENTEEN JEWELS 十七石)の刻印があります。「フランス・エボーシュ キャリバー 68」は「5.75 x 6.75 リーニュ」というサイズで、レディース・ウォッチ用ムーヴメントのなかでも特に小さい機械です。

 機械式ムーヴメントの振動数は、ムーヴメントの性能を決める大きな要因です。振動数が大きくなればなるほど、時計の計時性能(正確さ)が向上します。小さな女性用アンティーク時計には、毎時一万八千振動の優れた機械、「アー・シールド キャリバー 1012」がよく使われています。本品に搭載されている「フランス・エボーシュ キャリバー 68」は前者と同じサイズですが、振動数は二万一千六百振動で、前者よりも優れています。上の写真の手前に写っている金色の環は「天符」(てんぷ)という部品で、振子の役割をします。時計が動いているとき、「「フランス・エボーシュ キャリバー 68」の天符は一時間に 21,600回の振動(往復するように回転すること)を繰り返します。


 天符をはじめ、機械式時計の部品はマイクロメートル(千分の一ミリメートル)の精度で制作されています。現代ではコンピュータ制御の産業ロボットを使って微細な加工ができますが、1960年代当時はすべての精密加工が時計師の手によるものでした。本品のムーヴメント「フランス・エボーシュ キャリバー 68」は一円硬貨よりもずっと小さなサイズですから、その製作には熟練した時計師の技術が必要であったことは言うまでもありません。1960年代当時、ハイ・ジュエルの銀無垢時計である本品の価格は、初任給の三か月分以上に相当しました。現在の貨幣価値に換算すれば五十万円位でしょうか。良質の時計はたいへん高価であったわけですが、しかしながらこれは「ブランド代」ではなくて、「一生もの」と呼べるだけの内実、実質的価値を伴っていました。ムーヴメントにルビー製部品を多用するのも、優れた耐久性と長寿命を確保するためです。





 アンティーク時計の長所は、同じものが手に入らない「一点物」であること、非常に高価であったハイ・ジュエル・ウォッチが当時の数分の一の価格で手に入ることです。「アンティーク品」と「中古品」の違いに関して言えば、「中古品」は「新品ではない」というだけの意味で、多くの場合、より大きな金額を払えば新品が手に入ります。これに対して「アンティーク品」は単なる中古品ではなく、その品物が作られた時代ならではの作りやデザイン、現代では再現できない技法などによって製作されています。本品のミニマリスティックなデザインも、フランスでこのような時計が作られたのは 1960年代に限られ、現代の北欧デザインによる薄型の時計とも一線を画しています。





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