最後のハミルトン 金とプラチナの宝飾時計 キャリバー 761 22石 現状の全長 19 cm


ムーヴメントの種類: Hamilton cal. 761


900プラチナ製ケース

白色文字盤に、ホワイト・ゴールドまたはプラチナの立体インデックス

銀色のアルファ型針


1961 - 69年



 かつてスイス時計を凌ぐ品質で知られたアメリカ時計の到達点、1960年代のハミルトンによる美しいジュエリー・ウォッチ。シンプルで飽きが来ない円形のデザインは、時計の原点ともいえるクラシカルな形です。一円硬貨よりも少し小さなサイズは、宝飾時計の上質感のうちに大人の女性の可愛さを表してくれます。





 時計内部の機械を保護する金属製の容器(時計本体の外側)を「ケース」(英 case)といいます。本品のケースは10パーセントのイリジウムを含んだ「900プラチナ」でできています。純金が軟らかくて実用性に欠けるのと同様に、純粋なプラチナも軟らかすぎて時計ケースに使えません。そのためジュエリーや時計ケースのプラチナにはイリジウムを混ぜて合金とし、硬度を上げて実用性を高めます。「900プラチナ」は化学的安定性が非常に高く、アレルギーも起こしません。

 本品のべゼル(文字盤を取り巻く部分)にはラウンド・ブリリアント・カットのダイアモンドが二十個、嵌め込まれています。すべてのダイアモンドを宝石用ルーペでひとつずつ精査しましたが、これらは時計用ダイアモンドではなく、すべてジュエリー用ダイアモンドです。大きな実力を備えた時計会社であるハミルトン社は、世界で最も豊かなアメリカ合衆国において、最高の宝飾時計メーカーとしての地位を築いていました。時計用ダイアモンドではなくジュエリー用ダイアモンドのみを使用した宝飾時計は、ハミルトン社の矜持(きょうじ 誇り)のあらわれです。





 文字盤はわずかにクリーム色がかった白で、プラチナまたはホワイト・ゴールド製と思われる銀色の立体インデックスが植字されています。「インデックス」(英 index)というのは短針一時間ごと、長針五分ごとの位置に付けられた文字盤上のマークのことです。三時、六時、九時、十二時のインデックスは、1960年代に流行したバー・インデックスの流れを汲む細長い二等辺三角形です。その他の箇所は銀色の玉で、可愛らしい半球状に盛り上がっています。大文字アルファベットによるハミルトンのロゴ (HAMILTON) が、十時から二時にかけて弧を描いています。

 本品のように長針と短針のみを有する時計を「二針」(にしん)の時計と呼びます。腕時計の秒針はもともとストップウォッチの代用として取り付けられた機構で、秒針を備えた「三針」の時計は、時計の世界においてはあくまでも「測定用の道具」と位置付けられます。これに対して「二針」の時計はドレス・ウォッチであり、「三針」の時計よりも地位が高く、ドレッシーです。構造も「三針」の時計より簡単で、メンテナンス性に優れています。特に本品のような手巻式の時計は故障が最も起こりにくく、安心して使えます。

 本品のガラスは正確にいうとガラスではなく、人工のサファイア(Al2O3)でできています。周囲にはファセット・カットが施され、きらきらと輝いています。





 時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。時計のムーヴメントには「クォーツ式」と「機械式」があり、本品はぜんまいで動く「機械式ムーヴメント」を搭載しています。本品のムーヴメントは機械式のなかでも「手巻ムーヴメント」と呼ばれる種類で、一日一回、手動でぜんまいを巻き上げる必要があります。ぜんまいは竜頭(りゅうず ケース外側に突出したつまみ)を回すことで簡単に巻き上げることができます。

 この時計に搭載されているのは、ハミルトンの自社製手巻ムーヴメント「キャリバー 761」です。 「キャリバー 761」は一円硬貨よりもずっと小さな「21/0サイズ」ですが、振り子の役割をする「天符(てんぷ)」は一秒間に二往復半し(振動数 f = 18000 A/h)、十分な計時性能を確保しています。

 本品のように良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはサファイアと同じく「コランダム」(Al2O3) という鉱物で、モース硬度「9」と非常に硬いので、高級時計の部品として使用されます。必要な部分すべてにルビーを入れると、「十七石」(じゅうななせき)のムーヴメントになります。十七石のムーヴメントは「ハイ・ジュエル・ムーヴメント」(英 high jewel movement)と呼ばれ、高精度、長寿命の高級機です。

 上下の写真に赤く写っているのがルビーです。5個しか入っていないように見えますが、写真に写っていない文字盤下の地板やムーヴメントの内部に入っていたり、箇所によって二重に入っていたりして、ハミルトン「キャリバー 761」には全部で22個のルビ-が使われています。ムーヴメントの中央あたりに "22 JEWELS" (22石)と刻まれているのは、この意味です。機械式時計に使われるルビーの数は 17個でじゅうぶんとされていますが、ハミルトンが誇る最高級機である本品「キャリバー 761」は、さらに五個のルビーを追加して万全を期しているのです。





 高級ファッションブランドの時計は、その年の服に合わせるアクセサリー(付属品)として位置づけられています。それゆえにデザインは美しくても耐久性が無く、時計として見ると安物である場合が往々にしてあります。宝飾ブランドの時計は貴金属と良質の宝石を使っていますが、ファッションブランドの品物と同様に、時計として優れているわけではありません。ヴァンクリーフ・アンド・アーペルズやカルティエなどの現行品も、時計のムーヴメントはごくふつうの汎用品にすぎません。これに対して本品は老舗時計メーカーであるハミルトン社が威信をかけて開発した高性能ムーヴメントを搭載し、一生ものとして使える高級品に仕上がっています。

 1960年代当時のハイ・ジュエル・ウォッチは、本品のような宝飾時計でなくても、初任給のおよそ三カ月分の価格でした。現代のクォーツ時計に比べるとずいぶんと高価ですが、現在スイスで作られている機械式時計も、価格はやはり数十万円以上です。ほとんどのクォーツ時計には、実はおもちゃのようなプラスチック製ムーヴメントが入っていて、そのせいで安く手に入るようになったのですが、良質の機械式時計の値段は、昔も今も変わりません。高級品が多く載っている雑誌には、一本数百万円から一千万円以上もする時計が掲載されています。簡単にいえば本品はそのような現行品と同じ水準の品物で、「一点もの」の魅力が加わっています。

 初任給の3カ月分の価格で売られていたハイ・ジュエルの時計は、適切なメンテナンスによって数十年間動き続ける「一生もの」です。宝飾時計ではない普通の機種であっても、昔の時計は「初任給の三カ月分」もしたわけですが、「一生もの」である事を考えると、当時の価格は決して高くはありません。現代のクォーツ時計でも、ブランド物を買えば数十万円しますが、クォーツ・ムーヴメントの心臓である「回路」の寿命は、高級時計のメーカー自身が言うところではおよそ七年、長く見積もってもせいぜい十年ちょっとです。もともとの価値よりもずっと安く手に入るアンティーク時計は、修理の問題さえクリアすれば、実はたいへんなお買い得品です。




(上・参考画像) 1940年代のハミルトンの広告 当店蔵


 第二次世界大戦前の世界では、アメリカ、ヨーロッパ、日本が時計製造国でしたが、アメリカとヨーロッパを比較すると、アメリカの時計の品質は後者をはるかに凌いでいました。そのためスイス製の時計はアメリカ市場に食い込むことができませんでした。しかしながらアメリカの時計産業は太平洋戦争をきっかけに衰退してしまいます。1892年にペンシルヴェニア州ランカスターで創業し、数々の名作ムーヴメントを世に送り出したハミルトンも、1950年代頃からスイス製エボーシュを使い始め、1969年には自社工場でのムーヴメント生産を完全に停止します。

 ムーヴメントの自社生産を止める十五年前の1954年、ハミルトンは名作と讃えられる男性用22石手巻ムーヴメント「キャリバー 770」を世に送り出しました。その翌1955年から生産が開始されたのが、「キャリバー 770」の女性版ともいえる22石手巻ムーヴメント「キャリバー 757」ですが、本品が搭載する「キャリバー 761」は、「キャリバー 757」をさらに進化させた名品です。

 ハミルトンの女性用ムーヴメント「キャリバー 757」(1955 - 1961年)とその後継機「キャリバー761」(1961 - 1969年?)は、高温、低温、アイソクロニズム、五つの姿勢差に関するアジャストメントという驚異的な性能を誇ります。「キャリバー 770」、及び「キャリバー 757」と「キャリバー761」は、私にはハミルトンの「白鳥の歌」(Plato, "Phaedo" 84e - 85b,) と思えてなりません。

 アメリカの時計産業が衰退した歴史的経緯に関する解説は、こちらをクリックしてください。





 本品には14カラット・ホワイト・ゴールド製のバンドが取り付けられています。着用時に有効な長さを平置きして測ると、時計を含む全長は 19センチメートルです。14カラット・ゴールド(十四金)はアメリカ合衆国のジュエリーに使われる金の純度です。瑕(きず)が無いシングル・カットのダイアモンドが 42個、嵌め込まれています。

 わが国の金製品によく使われるのは「十八金」です。スイスの時計にも十八金が使われます。私は宝飾時計を長年に亙って扱っていますので、女性用時計に取り付けられた十八金のバンドが摩耗して、孔が開いたり破断したりした例を数多く見てきました。時計を着用したときに、最も大きな力がかかるのはバンドです。女性用時計のバンドは男性用時計のものよりもずっと華奢ですから、これに大きな力が毎日かかり続けると、どうしても摩耗してしまいます。しかるに14カラット・ゴールド(十四金)は18カラット・ゴールド(十八金)よりもはるかに丈夫で、900プラチナと同等の耐久性があります。





 ダイアモンドのカットの方式から判断すると、本品のバンドは時計よりも二十年くらい前に作られたものです。以前に別の時計に付けられていたバンドを外して本品に取り付けたようですが、摩耗はまったく認められません。

 バンドには「ミル打ち」と呼ばれる非常に細かい彫金が施されています。「ミル打ち」はアンティーク・ファイン・ジュエリーの技法で、制作にはたいへん手間がかかります。それゆえアンティーク品の宝飾時計には見られますが、現代の宝飾時計には、一千万円以上もするような品物であっても、ミル打ちが施されているのを見たことがありません。昔と今では、時間の流れがきっと変わってしまったのでしょう。





 故障の際に部品が手に入らないという理由で、アンティーク時計はお買い上げ後の修理、メンテナンスに対応しない「現状売り」となるのが普通ですが、当店では長期に亙り修理に対応いたします。アンティーク時計はどこの店でも原則的に「現状売り」で、壊れても修理が困難ですが、アンティークアナスタシア店主にはアンティーク時計に関する十分な専門知識があり、部品も豊富に揃っているため、他店で不可能な修理に対応できます。お買い上げ後も期限を切らずに修理に対応しますので、日々気軽にご愛用いただけます。デリケートなイメージのアンティーク時計ですが、日常使用は十分に可能です。どうぞ安心してお買い上げくださいませ。





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