美しいボックス付き 女性用アンティーク 《ヘルブロス 金色のハイ・ジュエル手巻き時計》 サンバースト・インデックスの二色文字盤 ブルー・スティールの優雅な針 スイス 1940年代


本体価格 88,000円



 1940年代に制作された女性用の手巻き時計。一円硬貨よりも小さなサイズです。長寿命のハイ・ジュエル機で、熟練の時計職人によるオーバーホール(分解掃除と調整)を実施されています。本品は実用的な精度を保ってきちんと動作しており、日々ご愛用いただけます。






 本品はおよそ八十年前に制作された腕時計で、幾つかの点が現代の時計と大きく異なります。


 現代の時計と異なる第一の点は、サイズが非常に小さいことです。上の写真は本品を一円硬貨の上に置いて撮影しています。

 時計の十二時側と六時側から突出する部分を、ラグ(英 lugs)といいます。ラグはバンドを取り付けるための突起です。本品はラグが大きくデザインされているために、時計本体は実際よりも大きめに見えますが、それでも長径は一円硬貨の直径とほぼ同じです。





 現代の時計と異なる第二の点は、バンドの取り付け方です。

 現代の女性用時計はサイズが大きいので、男性用時計と同様に、十二時側と六時側からそれぞれ二本ずつ、計四本のラグが突出します。しかしながら 1960年代までの女性用時計は本品のように小さな機種が多いので、十二時側と六時側からそれぞれ一本ずつ、計二本のラグが突出するセンター・ラグ方式が普通でした。本品もセンター・ラグ方式です。

 現代の時計に使われる平たいバンドは、センター・ラグ方式の時計に取り付けることができません。現代の平たいバンドは、バネ棒という部品を使って時計に取り付けます。バネ棒は一種の突っ張り棒で、左右二本のラグ間でこれを突っ張らせ、幅広のバンドを固定します。しかるにセンター・ラグ式ではバネ棒を使わず、金属製バンドの両端をラグの孔に引っ掻けて固定するか、あるいは布紐や革紐をラグの孔に通してバンドにします。





 本品に取り付けられているバンドは、バネによる伸縮式です。伸縮式バンドは切れ目が無いゆえに着脱が容易ですし、着脱時に誤って落とす事故が起こりにくいのも大きな利点です。本品のバンドは表面に太縄状のパターンがあり、ラグのデザインとよく合っています。バンドの内側はステンレス・スティール製で、アレルギーが起こりにくいよう工夫されています。

 アンティーク時計において、時計とバンドの組み合わせに必然性はありません。アンティーク時計のバンドは自分のサイズや好みに合わせて交換できます。本品も現状では金属製バンドが付いていますが、ファブリックや革の黒い紐バンドに交換すれば、非常にクラシカルな雰囲気に変わります。





 現代の時計と異なる第三の点は、風防(いわゆるガラス)の形状です。

 1970年代以降の女性用時計は、現代の物と同様に、平たい風防を用います。しかるに 1960年代以前の女性用時計、特に本品のようなトノー型(樽型)ケースの時計は、かまぼこ型の風防を多用します。本品の風防もかまぼこ型です。





 現代の時計と異なる第四の点は、ケースに美しい彫金が施されていることです。

 時計内部の機械をムーヴメント(英 movement)、ムーヴメントを保護する金属製の容器(時計本体の外側)をケース(英 case)といいます。ケースは風防(いわゆるガラス)の枠であるベゼル(英 bezel)と裏蓋で構成されます。本品のベゼルには美しい彫金が施されています。これは型で打刻したものではなく、手作業による真正の彫金です。

 最初の携帯用時計(英 watch)は懐中時計でしたが、懐中時計の時代から腕時計時代の初期にかけて、時計ケースの制作会社にはオォッチ・エングレーヴァーという職人芸術家がいて、繊細な彫金を時計ケースに施していました。ケースに施された彫金は時計が贅沢品であり、半ば工芸品であった時代の特徴です。時計が工業製品となって量産されるにしたがい、ケースの彫金は姿を消しました。1940年代は時計ケースに彫金が施された最後の時代であり、本品は懐中時計以来の伝統を留める最後の腕時計と言えます。

 本品のケースはベース・メタルにイエロー・ゴールドの金張りとなっています。金張りとはベース・メタル(卑金属 銅合金など)に金の板を鑞付け(ろうづけ 溶接の一種)した素材のことで、現代の金めっきと比べて格段に厚い金の層を誇ります。本品はおよそ八十年前の品物ですが、金張りに大きな剥落は見られません。





 現代の時計と異なる第五の点は、文字盤のデザインです。

 時計において時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を文字盤(もじばん)、または文字板(もじいた)といいます。本品の文字盤は上品な艶消しの白または明るい銀色で、美しい古色を呈します。古色とは経年による変色のことで、真正のアンティーク時計ならではの特徴です。八十年の歳月を考えると、本品の文字盤は非常に綺麗な状態ですが、再生処理(リファービッシュ、リダン)を施したものではなく、この時計が製作された当時のオリジナルです。

 文字盤の周囲十二か所にある長針五分ごと、短針一時間ごとの数字を、インデックス(英 index)といいます。インデックスの様式には年代ごとの流行があります。大体の傾向として、1940年代以前の時計では、インデックスはすべてアラビア数字です。1950年代の時計では、十二時、三時、六時、九時のみがアラビア数字で、他の部分は線または楔(くさび)形のバー・インデックスです。1960年代の時計はすべてがバー・インデックスです。

 本品のインデックスは如何にも 1940年代の時計にふさわしく、黒色のアラビア数字となっています。1920年代から 40年代にかけて、サンバースト(英 sunburst)と呼ばれる型の、数字を放射状に配列したインデックスが流行しました。本品のインデックスもサンバースト型で、各数字は太陽から発する光のように配列されています。インデックスの背景はつややかな銅(あかがね)色で、白色部分との組み合わせが華やかな文字盤に仕上がっています。


 アンティーク時計の針にはいろいろな様式がありますが、本品の針は最も優雅なリーフ型です。針の材質はスティール(鋼)で、青焼きと呼ばれる手法により、鮮やかな青色に輝いています。なおこの時代の女性用時計に秒針はありません。





 上の写真は本品のムーヴメント(時計内部の機械)を取り出して撮影しています。本品のムーヴメントはフォンテンメロン キャリバー 120、またはオロール=ヴィルレ キャリバー 120という高級機で、1940年代の女性用時計によく採用されました。我が国で良く知られるロレックス社も、当時の女性用時計にこの機種を使っています。


 現代の時計と異なる第六の点は、ぜんまいが動力であることです。

 現代の時計はクォーツ式と言って、電池で動きます。しかしながらほぼ全ての人がクォーツ式腕時計を使うようになったのは 1980年代以降のことで、それ以前の時計はぜんまいで動いていました。本品もぜんまいを動力とする手巻き式で、一日一回、手動で竜頭(りゅうず)を回転させてぜんまいを巻き上げる必要があります。時計の三時の位置にある円盤型のツマミが竜頭で、回転させるときに滑らないように、周囲に刻み目が付けられています。上の写真で、竜頭はムーヴメントの下部に写っています。

 本品の竜頭はたいへん扱いやすく、ぜんまいを巻くのはとても簡単で誰にでもできますから、初めての方でもまったく心配いりません。また時計を使わない日にぜんまいを巻く必要はありません。

 秒針があるクォーツ式時計を耳に当てると、秒針を動かすステップ・モーターの音が一秒ごとにチッ、チッ、チッ … と聞こえます。デジタル式など秒針が無いクォーツ式時計を耳に当てると、何の音も聞こえません。本品のような機械式時計を耳に当てると、小人が鈴を振っているような小さく可愛らしい音が、チクタクチクタクチクタク…と連続して聞こえてきます。


 本品のようにぜんまいで動く時計を機械式時計といいます。良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはモース硬度 9 と非常に硬い鉱物(コランダム Al2O3)ですので、高級時計の部品として使用されるのです。必要な部分すべてにルビーを入れると、十七石(じゅうななせき)のムーヴメントになります。十七石の機械はハイ・ジュエル・ムーヴメント(英 high jewel movement)と呼ばれ、高精度、長寿命の高級機です。

 上の写真で赤く写っているのがルビーです。ルビーは四個しか入っていないように見えますが、写真に写っていない文字盤下の地板やムーヴメントの内部に入っていたり、箇所によって二重に入っていたりして、全部で十七個のルビ-が使われています。







 本品はスイスのヘルブロス社が制作した腕時計です。当店にはアンティーク時計の箱(保管・ディスプレイ用ボックス)が多数所蔵されており、ヘルブロス社に関しても同時代の美しい箱が在庫しています。通常であれば箱は別売りですが、今回に限り写真の箱を無料で差し上げます。









 当店は数少ないアンティーク時計の修理対応店です。アンティーク時計はどこの店でも現状売りが原則で、壊れても修理が困難ですが、アンティークアナスタシア店主にはアンティーク時計に関する十分な専門知識があり、部品も豊富に揃っているため、他店で不可能な修理に対応できます。デリケートなイメージのアンティーク時計ですが、当店の時計は日常使用が十分に可能です。上で説明いたしました通り、バンドの変更も可能です。





 上の写真は女性が本品を着用しています。

 商品説明で解説いたしました通り、本品には現代品とは異なる数多くの特徴があります。繊細な彫金を施した金張りケースは工芸品としての完成度も高く、さらには時計としての性能(ムーヴメントの性能)も優れています。また珍しすぎて部品が手に入らず修理ができないのであれば困りものですが、当店にはフォンテンメロン キャリバー 120の代替ムーヴメントも十数点以上が在庫しています。お買い上げ後も期限を切らずに修理に対応しますので、日々ご愛用いただけます。どうぞ安心してお買い上げくださいませ。

 お支払方法は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(三回払い、六回払い、十二回払いなど。利息手数料なし)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。





本体価格 88,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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