直径 1センチメートルの黒文字盤 《グリュエン・プレシジョン 17石》 リボンとハートの高級アンティーク時計 1947 - 52年頃


 ケースの十二時側と六時側にリボンのような飾りが付いたおしゃれなアンティーク時計。いまから六十年以上前、1947年から52年頃にスイスで製作された「手巻式」の時計で、一円硬貨よりも小さなサイズです。二個のハート、円形文字盤、丸みを帯びたアラビア数字と小さな円形インデックスはいずれも愛らしいデザインですが、黒い文字盤が甘さを引き締め、上品で優雅なリーフ型の針が大人の女性にふさわしい上質感を見せています。

 グリュエン社の女性用時計にはユニークなデザインのものが多いのですが、この時計はとりわけ稀少なモデルのひとつです。高級ファッションブランドの製品など、ユニークなデザインの時計は、その年の服に合わせるアクセサリーとして位置づけられています。それゆえにデザインは美しくても耐久性が無く、時計として見ると安物である場合が往々にしてあります。これに対して本品は初めから「時計」として真面目に作られており、17個のルビー製部品を使用した高級なムーヴメント(時計内部の機械)を搭載しています。17個のルビーを使用したムーヴメントには優れた耐久性があり、一生ものとして使うことができます。本品は大人の女性にこそふさわしい上質さを持つ高品質のドレス・ウォッチです。





 時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。時計のムーヴメントには、電池で動く「クォーツ式」と、ぜんまいで動く「機械式」があります。現代の時計はほぼすべて「クォーツ式」ですが、これは 1970年代から使われ始めたものです。本品が製作された 1947年から52年頃には、クォーツ式ムーヴメントはまだ存在していませんでした。

 ムーヴメントを保護する金属製の容器(時計本体の外側)を「ケース」(英 case)といいます。本品のケースは10カラットの金張り(ゴールド・フィル gold fill)でできています。

 最も古い時代の腕時計には、ニッケル製ケースがよく使われました。しかしながらニッケルはしばしばアレルギーの原因になります。それゆえ時計ケースの表面には金が張られるようになりました。現代の金めっき(エレクトロプレート)は金の厚さが数ミクロン程度ですが、昔の「金張り」(ゴールド・フィル)、「ロールド・ゴールド・プレート」は金の厚さが現代のめっきの十倍から数十倍に達し、美しさの点でも丈夫さの点でも優れた時計ケース素材となっています。





 上の写真は本品の裏側で、ケースの裏蓋に「グリュエン」「10カラット・ゴールド・フィルド」(10K GOLD FILLED) の刻印が見えます。」「10カラット・ゴールド・フィルド」とは、ベース・メタル(金、銀、プラチナ以外の金属)の表面に、10カラット・ゴールドの板を高温高圧で鑞付け(ろうづけ)した素材です。

 「金張り」(ゴールド・フィル)と同時代の技法に、「ロールド・ゴールド・プレート」(rolled gold plate) があります。後者には金の量に関する規定が無いのに対して、前者においては金の重量が製品の重量の20パーセント以上であることが必須です。すなわち「10カラット・ゴールド・フィルド」(10K gold filled 十金張り)の時計ケースには、ケース重量の20パーセント以上の十金が張られています。

 「ロールド・ゴールド・プレート」であっても、現代のエレクトロプレートに比べれば、金の層ははるかに厚いですが、「金張り」(ゴールド・フィル)は「ロールド・ゴールド・プレート」よりもさらにグレードが高く、高級なアンティーク時計、ヴィンテージ時計に使われます。グリュエン社の金張りはときに厚さ 80ミクロンに達し、分厚いことで知られています。


 本品の金張りに使われている「10カラット・ゴールド」(10 karat gold) は、十金、すなわち純度二十四分の十の金を指します。金は軟らかい金属ですので、純金(二十四金)を使って実用性がある品物を作ることは行われません。ジュエリーや時計に使う金は、強度を増すために、必ず他の金属との合金になっています。本品のケースの表面に張られている10カラット・ゴールド(十金)は、十八金や二十金等に比べて強度がはるかに優れています。時計は毎日使うものですので、強度は大切です。また色の点でも、本品は上品なシャンパン・ゴールド(淡い金色)であるゆえに、濃い金色のジュエリーが好きではない方にも抵抗なくご愛用いただけます。





 1950年頃の時計と現代の時計を比べると、動く仕組みが異なるだけでなく、サイズの点でも大きく異なります。1930年代から 1970年代までは男性用、女性用ともに現代よりも小さな時計が流行していました。特に本品はクッション型のムーヴメントを採用しつつ、ケースの形状を工夫することで直径約 1センチメートルの円形文字盤を実現し、小さな時計をより一層小さく見せています。上の写真は本品を一円硬貨の上に載せて撮影したものです。

 時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を「文字盤」(もじばん)または「文地板」(もじいた)、文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の印を「インデックス」(英 index)といいます。本品は文字盤よりも一段高くなった「立体インデックス」を採用し、12時から三時間ごとが丸みを帯びたアラビア数字、それ以外が小さな丸になっています。文字盤は艶やかな黒で、グリュエン社のロゴ (GRUEN) と、ハイ・ジュエル・ウォッチであることを示す「プレシジョン」(PRECISION)、及び「スイス」(SWITZERLAND) の表示が金色の文字で書かれています。文字盤は再生(リファービッシュ、リダン)したものではなく、時計が製作された当時のオリジナルで、新品時のままの状態です。

 金色の針は最も優雅なリーフ型で、漆黒の文字盤との組み合わせがドレッシーです。この時代の女性用時計に秒針はありません。





 上述したように、時計のムーヴメント(内部の機械)には「クォーツ式」と「機械式」があり、本品はぜんまいで動く「機械式ムーヴメント」を搭載しています。本品のムーヴメントは機械式のなかでも「手巻ムーヴメント」と呼ばれる種類で、一日一回、手動でぜんまいを巻き上げる必要があります。ぜんまいは竜頭(りゅうず ケース外側に突出したつまみ)を回すことで簡単に巻き上げることができます。

 本品のように長針と短針のみを有する時計を「二針」(にしん)の時計と呼びます。腕時計の秒針はもともとストップウォッチの代用として取り付けられた機構で、秒針を備えた「三針」の時計は、時計の世界においてはあくまでも「測定用の道具」と位置付けられます。これに対して「二針」の時計はドレス・ウォッチであり、「三針」の時計よりも地位が高く、ドレッシーです。構造も「三針」の時計より簡単で、メンテナンス性に優れています。特に本品のような手巻ムーヴメントの時計は、故障が最も起こりにくく、安心して使えます。





 本品のように良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはサファイアと同じく「コランダム」(Al2O3) という鉱物で、モース硬度「9」と非常に硬いので、高級時計の部品として使用されます。必要な部分すべてにルビーを入れると、「十七石」(じゅうななせき)のムーヴメントになります。十七石のムーヴメントは「ハイ・ジュエル・ムーヴメント」(英 high jewel movement)と呼ばれ、高精度、長寿命の高級機です。

 上の写真は本品のムーヴメント、「グリュエン キャリバー 275」で、赤く写っているのがルビーです。ルビーは四つしか入っていないように見えますが、写真に写らない部分を含めて、十七個のルビーが使われています。「グリュエン キャリバー 275」は 1947年から 1954年まで製作された手巻ムーヴメントで、地板のサイズは 12.5 x 16.5ミリメートル、毎時 18,000振動 (f = 18000 A/h)、パワー・リザーヴ四十時間のハイ・ジュエル機です。





 1940 - 50年代当時、ハイ・ジュエルの時計は初任給のおよそ 3カ月分の価格でした。現代のクォーツ時計に比べるとずいぶんと高価ですが、現在スイスで作られている機械式時計も、価格はやはり数十万円です。ほとんどのクォーツ時計には、実はおもちゃのようなプラスチック製ムーヴメントが入っていて、そのせいで安く手に入るようになったのですが、良質の機械式時計の値段は、昔も今も変わりません。高級品が多く載っている雑誌には、一本数十万円から数百万円もする時計が掲載されています。当店のアンティーク時計は、簡単にいえばそのような現行品と同じ水準の品物で、「一点もの」の魅力が加わっています。

 初任給の3カ月分の価格で売られていたハイ・ジュエルの時計は、適切なメンテナンスによって数十年間動き続ける「一生もの」です。「一生もの」である事を考えると、「初任給の2カ月分から3カ月分」という当時の価格は決して高くはありません。現代のクォーツ時計でも、ブランド物を買えば数十万円しますが、クォーツ・ムーヴメントの心臓である「回路」の寿命は、高級時計のメーカー自身が言うところではおよそ七年、長く見積もってもせいぜい十年ちょっとです。もともとの価値の半分以下、ときには数分の一で手に入るアンティーク時計(ヴィンテージ時計)は、たいへんなお買い得品です。

 故障の際に部品が手に入らないという理由で、アンティーク時計はお買い上げ後の修理、メンテナンスに対応しない「現状売り」となるのが普通ですが、当店では長期に亙り修理に対応いたします。アンティーク時計はどこの店でも原則的に「現状売り」で、壊れても修理が困難ですが、アンティークアナスタシア店主にはアンティーク時計に関する十分な専門知識があり、部品も豊富に揃っているため、他店で不可能な修理に対応できます。お買い上げ後も期限を切らずに修理に対応しますので、日々気軽にご愛用いただけます。デリケートなイメージのアンティーク時計ですが、日常使用は十分に可能です。時計はオーバーホール(分解掃除)済みで、順調に動作しています。どうぞ安心してお買い上げくださいませ。





 お支払方法は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(三回払い、六回払い、十二回払いなど。利息手数料なし)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。





本体価格 95,000円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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