アール・デコのドレス・ウォッチ

エテルナ 15石 3アジャストメンツ

ムーヴメントの種類: Eterna cal. 82


金色文字盤に黒色アラビア数字インデックス

スペード型(ポワール型)針

エングレーヴィングによる装飾ベゼル


1924年



 高級時計メーカーとして今日も存続するスイスのエテルナ社は、 1856年、「ジラール・エ・シルト社」(Girard & Schild) として創業し、1905年、「エテルナ社」(Eterna) に社名変更しました。本品はこのメーカーが「エテルナ社」となってから20年足らずの 1924年頃に製作されたアール・デコ様式の女性用時計です。





 1930年代後半以降、女性用時計のサイズは一円硬貨よりも小さくなります。しかしながら本品はいまから約90年前、1924年に製作されています。この時代の女性用時計は後代の物よりもひと回り大きく、現代の女性用時計に近い大きさです。本品のケース・サイズは、ラグ(バンドを取り付ける突起)と竜頭(りゅうず)を除き、縦横いずれも26ミリメートルで、五百円硬貨とほぼ同じです。

 時計のサイズが大きいのは、この時代の技術水準ではムーヴメント(時計内部の機械)の小型化が困難であったからですが、後に流行する極端に小さな時計に比べると視認性に優れ、また存在感のある服飾アクセサリーとして手首を美しく飾ってくれます。


 本品は円形ムーヴメントを八角形のケースに入れています。ケースには、クリスタル(風防)を取り巻くベゼル部分に、八輪の花と葉から成る繊細な植物文様が彫金されています。

 「八」はわが国でも好まれる数ですが、ヨーロッパ文明圏においても良い意味を持つ数です。すなわちヨーロッパでは神が天地創造に要し給うた日の数である「七」を、物事の完結性、完全性を象徴する「完全数」と考えますが、「八」は「七」の次の数であるゆえに、物事の新たな始まり、新生、生まれ変わり、新しい命の象徴とされています。



 本品のケースの材質は「金張り」です。「金張り」(ゴールド・フィル gold fill)とはベース・メタルの表面に金の板を張り付けたもので、現代の金めっきに比べて金の層がはるかに厚く、美しさと耐久性に優れます。厚い金張りであっても角(かど)の部分は磨滅しますが、実物を見ても金の磨滅箇所が判別困難で気にならないことは、本品を手に取っていただければおわかりいただけます。

 ケースの裏蓋に、歪(ゆが)みや金の磨滅等、特筆すべき問題はまったくありません。下の写真では裏蓋上に青い格子のようパターンが見えますが、これは写真撮影の際に当店の天井が写り込んだものです。




 本品は15石手巻きムーヴメント、エテルナ「キャリバー 82」を搭載しています。ムーヴメントとは時計内部の機械のこと、「手巻き」とは電池ではなくぜんまいで動く「機械式時計」であるということ、また「15石」とはムーヴメントの部品として15個のルビーが使われているという意味です。下の写真ではルビーは4個しか見えませんが、地板(文字盤の下)等、写真に写っていない部分を含めると、全部で 15個が使われています。






 ムーヴメントの中央部に見える大型で細長い金属製部品(二番受け)に、エテルナ社の社名 (ETERNA Watch Company)、「スイス製」(Swiss) の表示と並んで、「15石」(FIFTEEN JEWELS)、「スリー・アジャストメンツ」(3 adjustments) と刻印されています。「スリー・アジャストメンツ」とは、寒暖やぜんまいの残量、時計の向き(姿勢差)によって計時の正確さに影響が出ないように、時計の心臓部分である「天符」(てんぷ)が特別に注意して製作されているという意味です。






 写真では分かりづらいですが、「受け」と呼ばれる大型の部品はすべて丁寧に面取りされ、受けを含む各部品の表面は鏡のように磨きあげられています。香箱(こうばこ ぜんまいを内蔵した一番車)の逆回転を防ぐ爪状の部品「コハゼ」は、香箱受けにネジ留めした大型のバネで押さえられています。大型のコハゼバネを香箱受けにネジ留めするのは手間がかかる方式であり、時計生産の機械化が進む1930年代以降には見られなくなる贅沢な仕様です。



 コード・バンド(紐)は他の色に変更できます。写真のバンドは黒ですが、藍色、深緑、臙脂(えんじ)なども本品によく似合うでしょう。現代の時計に使われるような幅広の革バンドが良い場合は、取り付け部の幅 12~13ミリメートルのワイア・ラグ用バンドを使うことになります。またお好みにより金属製バンドを取り付けることも可能です。

 そもそも時計バンドは消耗品ですし、時計メーカーはバンドまで作っていないので、元々付いていたバンドにこだわる必要はまったくありません。仮に当時のバンドが付いたまま残っていたとしても、それは以前の所有者が自分の好みやサイズに合わせて付けたバンドが、時計に付いたまま残っているというだけのことです。アンティーク時計にはお客様ご自身の好みに合うバンドを取り付けて、自由にカスタマイズしてください。


 本品はおよそ90年前に製作されたエテルナ社初期の時計ですが、ぜんまいを巻くとスムーズに始動し、機械の品質の高さがよくわかります。デザインの美しさと視認性の良さを兼ね備えた魅力的なアンティーク時計です。





本体価格 89,000円 オーバーホール済、現状売り 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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