レイディ・エルジン アール・デコ調高級ドレス・ウォッチ ミモザ色の文字盤

1952年

ムーヴメントの種類: Elgin cal. 655



14カラット・イエロー・ゴールド・フィルドのケース

金色のバトン型針

ミモザ色の文字盤に、アラビア数字と小さなピラミッド形による金色の立体インデックス



 アメリカでおよそ百年に亙って高級時計を作り続けたエルジン社が、自社製の機械として最後に作ったムーヴメントのひとつ、「エルジン キャリバー 655」を搭載した高級ドレス・ウォッチ。いまから60年以上前の 1952年に製作された「手巻き式」時計です。1952年は、電池式の「クォーツ時計」が開発されるよりも以前の時代ですので、この時計も電池ではなくぜんまいで動いています。

 1950年代はアメリカ合衆国が繁栄を極めた黄金時代でした。本品をはじめ、この時代にアメリカで製作された時計のデザインには、自信と誇り、余裕、華やぎが溢れています。ムーヴメント(時計内部の機械)もたいへん高級で、21個のルビー製部品を使用しています。21個のルビーを使用したムーヴメントには非常に優れた耐久性があり、一生ものとして使うことができます。


【文字盤と針】

 文字盤はミモザの花のように優しい黄色で、針とインデックスは金色です。アラビア数字と小さなピラミッド形で構成された立体インデックスのデザインは、すっきりとしたバトン型の針とともに、アール・デコの香りがします。金色の針、インデックスは、黄色の文字盤と調和し合いつつもきらきらと輝いて、良好な視認性が確保されています。





 本品の文字盤は再生処理を施しておらず、オリジナルです。文字盤には「レイディ・エルジン」(LADY ELGIN) の文字と、エルジン社のマークが書かれています。この時代のエルジン社の製品はいずれもハイ・ジュエルの高級時計ですが、文字盤には通常「エルジン」(ELGIN) とのみ書かれます。本品に「レイディ・エルジン」(LADY ELGIN) と書かれているのは、高級品ぞろいのエルジン製時計のなかでも、この時計が最上級の特別な品物であるからです。


 ちなみにこの「レィディ・エルジン」に対しては、その男性版ともいうべき時計、「ロード・エルジン 《ブラック・ナイト(黒騎士)》」が存在します。「ロード・エルジン 《ブラック・ナイト》」も本品と同様に21石の高級品です。


(下) ロード・エルジン 《ブラック・ナイト》 21石アジャステッド 当店の商品です。





【エルジンの自社製ムーヴメント、「キャリバー 655」について】

 電池ではなくぜんまいで動く時計を「機械式時計」といいますが、良質の機械式時計のムーヴメント(時計内部の機械)には、重要な部品の摩耗を防ぐために、ルビーが使われています。ルビーとサファイアはコランダムという鉱物で、いずれもモース硬度「9」と、たいへん硬い宝石です。ルビーを使うのが望ましい箇所は15箇所あって、そのすべてにルビーを入れると17個の石が使われることになります。17石のムーヴメントは「ハイ・ジュエル」(high-jewel) と呼ばれる高性能の機械です。





 しかるに本品は通常のハイ・ジュエル・ウォッチよりさらに四石多い21個のルビーを使っています。

 時計の機械には潤滑油が差されています。潤滑油が失われると摩擦抵抗が増えて時計の精度が悪くなり、部品も摩耗します。21石ムーヴメントにおいては、この問題への完全な対策が講じられており、輪列(主ぜんまいの力を伝えるカナと歯車の列)全体に亙って潤滑油が完全に守られています。潤滑油が失われなければ、摩擦抵抗の低減によって計時の精度は向上し、部品の寿命も長くなります。21石の機械式ムーヴメントは、実用的意味のあるすべての箇所にルビーを入れた最高級品です。1952年当時、この時計の価格は初任給の3カ月から4カ月分でした。



 第二次世界大戦中、エルジンをはじめとするアメリカの時計各社は一般向けの時計の生産を取りやめ、総力を挙げて軍用時計を生産しました。その間に、アメリカの民生用時計市場はスイス製時計に奪われてしまいます。その結果、アメリカの時計各社は戦争終結後に経営状態が徐々に悪化し、エルジン社を含む大手メーカー数社が倒産してしまいます。

 1950年代半ば以降、エルジン社は自社製ムーヴメントの開発と生産から撤退し、スイス(ア・シールド、フォンテンメロン、ユニタス、フルリエなど)、ドイツ(PUW)、フランス(リップ)、日本(セイコー)等、他メーカーからムーヴメントの供給を受けるようになります。たとえば「エルジン キャリバー 653」は AS 1323 ですし、「エルジン キャリバー 657」は Lip R40、「エルジン キャリバー 659」は FHF 73 です。

 本品が製作された1952年は、エルジンがまだ勢いを失っていない最後の時代でした。「エルジン キャリバー 655」は他社製品ではなく、エルジンのれっきとした自社製ムーヴメントです。ムーヴメントの受けに刻まれた "21 jewels" "Adjusted" "USA" の文字に、スイス製よりもはるかに高級・上質であったアメリカ製時計の誇りが表われています。この「レイディ・エルジン」は、およそ百年に亙って高級時計メーカーの名声を欲しいままにしてきたエルジンの、まさに到達点ともいうべき上質のドレスウォッチなのです。



【お勧めポイント】

 個々の美術品や工芸品、建築物のデザインは、多くの場合、ロマネスク式、ゴシック式、ルネサンス式、バロック式など、美術史上の特定の様式にはっきりと分類されます。時計のような「商品」の場合、その時代の消費者に受け容れられる必要があるゆえに、商品の「インダストリアル・デザイン」は、美術品よりもいっそう敏感に時代の空気を反映します。

 本品の大胆なデザインは、黄金時代を迎えた「1950年代のアメリカ」でしか生まれ得なかったものです。同時代のスイス製時計や日本製時計には、これほど自信に溢れた造形を見ることはできません。アンティーク・ウォッチを愛する私は、他の時代、他の場所で生まれ得なかった上質の時計、まさに本品のような時計に、最も心を惹かれます。



 実用性の点でも、本品は申し分ありません。ヴィンテージ・ウォッチは現代の時計よりも小さなサイズであるゆえに、これぐらい大胆なデザインでちょうど良いと感じます。ラグ(バンドを取り付ける突起)が12時側と6時側に二本ずつ出た作りは現代の時計に共通で、バンド交換も容易です。バンドの色や素材を変えることにより、何通りもの楽しみ方が可能です。





本体価格 126,000円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




女性用腕時計 商品種別表示インデックスに戻る

女性用腕時計 一覧表示インデックスに戻る


腕時計 商品種別表示インデックスに移動する


時計と関連用品 商品種別表示インデックスに移動する



アンティークアナスタシア ウェブサイトのトップ・ページに移動する




Ἀναστασία ἡ Οὐτοπία τῶν αἰλούρων ANASTASIA KOBENSIS, ANTIQUARUM RERUM LOCUS NON INVENIENDUS