フランスの女性用アンティーク 《カーラ 愛しいひと》 小さな手巻き時計 1970年代

CARA, France Ebauche cal. 163, 17 jewels, 1970s



 およそ四十年前、1970年代のフランス、ブザンソンで作られた女性用時計。本品はヴィンテージ品(アンティーク品)ですが、ほとんど使われていなかったらしく、新品同様の状態です。1970年代の時計は現代のものに比べて格段に小さく、本品は一円硬貨とほぼ同じサイズです。

 本品は電池が要らない機械式時計で、一日に一回、手動でぜんまいを巻いて使います。バンド幅は十一ミリメートルで、お好みの色に取り替えることができます。





 時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。ムーヴメントを保護する金属製の筐体(きょうたい)、すなわち時計本体の外側を「ケース」(英 case)といいます。ケースは「ベゼル」(英 bezel)と裏蓋に分かれます。ベゼルはムーヴメントを保護するとともに、風防(いわゆる「ガラス」)を嵌める枠としても機能します。

 本品の風防は「プレクシグラス」と呼ばれる高透明度のアクリル製で、緩やかなドーム状に盛り上がっています。盛り上がった風防は見た目が可愛いですが、平坦な風防に比べて瑕(きず)が付き易いという欠点があり、ガラス製風防の場合に大きな問題となります。一方プレクシグラス製風防は瑕を簡単に磨き落とすことができます。本品にプレクシグラス製風防が採用されているのは、このためです。





 時計において、時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を「文字盤」(もじばん)または「文字板」(もじいた)といいます。本品の文字盤は 1970年代に流行したカラー文字盤です。カラー文字盤は原色に近い派手なものも多いですが、本品の文字盤は落ち着いたダーク・ブラウンです。ダーク・ブラウンの文字盤は、正式な場や仕事にも使える上品さを有するとともに、白の針とインデックスを引き立てて、優れた視認性に寄与しています。

 文字盤の上部には「カーラ」(CARA)というブランド名が書かれています。「カーラ」(CARA)はラテン語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語で「愛しい女性」という意味です。本品はフランスの時計で、「カーラ」はフランス語では「シェール」(CHÈRE)または「シェリ」(CHÉRIE)に当たりますが、ブランド名が「カーラ」となっているのは、イタリア語の明るい響きが好まれたせいでしょう。





 文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の数字を「インデックス」(英 index)といいます。本品のインデックスはアラビア数字で、曲線部分が蔓(つる)のように巻いた可愛い字体です。

 十二か所のインデックスが全てアラビア数字であるのは 1940年代以前に作られた時計の特徴で、1960年代以降に作られた時計は、通常、棒状の「バー・インデックス」を有します。筆者(広川)は長年に亙って女性用アンティーク時計を扱っていますが、1960年代及び 1970年代に作られた時計がアラビア数字インデックスを有する例は、数えるほどしか目にしていません。アラビア数字による本品のインデックスは、この年代の時計としては極めて珍しいデザインです。


 本品には秒針がありません。秒針が無いのはドレス・ウォッチの特徴で、本品は可愛さと矛盾しない高級感をまとっています。秒針が無ければ動いているかどうかわからないと思われるかもしれませんが、そのような心配は無用です。本品を耳に当てると、機械式時計特有の囁くような動作音が「チクタクチクタク…」と聞こえてきます。



 時計を毎日愛用すると、肌に触れるケース裏蓋が摩耗します。これを避けるため、本品のケース裏蓋はステンレス・スティールでできています。裏蓋はネジ式で、埃や水分が侵入しにくくなっています。





 1960年代に作られた女性用時計は、現代のものよりも小さなサイズです。他方、ムーヴメント(時計内部の機械)には或る程度の厚みがあります。したがって現代の時計に比べると、女性用アンティーク時計は厚みがあるデザインに仕上がります。

 三時の位置でケース側面から突出するツマミを「竜頭」(りゅうず)といいます。本品をはじめ、アンティーク時計(ヴィンテージ時計)は「機械式」で、電池ではなく、ぜんまいで動いています。時計のぜんまいを巻き上げるとき、及び時刻合わせを行うときに、竜頭を操作します。竜頭の操作方法はとても簡単です。竜頭を右回りに回転させると、ぜんまいが巻き上がります。竜頭を一段階引き出して右回りまたは左回りに回転させると、針を早回しすることができます。





 時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。本品のムーヴメント(時計内部の機械)は電池ではなくぜんまいで動いています。電池で動くクォーツ式腕時計が完全に普及したのは、1980年代のことです。本品が製作された時代の腕時計は、ぜんまいで動いていました。

 本品のようにぜんまいで動く時計を「機械式時計」といいます。クォーツ式時計と機械式時計は、耳に当てたときに聞こえる音が全く異なります。秒針があるクォーツ式腕時計を耳に当てると、秒針を動かすステップ・モーターの音が一秒ごとに「チッ」、「チッ」、「チッ」 … と聞こえます。デジタル式など秒針が無いクォーツ式腕時計を耳に当てると、何の音も聞こえません。これに対して機械式時計、すなわち本品のようにぜんまいで動く腕時計や懐中時計を耳に当てると、小人が鈴を振っているような小さく可愛らしい音が、「チクタクチクタクチクタク…」と連続して聞こえてきます。





 上の写真は本品の裏蓋を開けたところで、ムーヴメントが見えています。現代のクォーツ・ムーヴメントはプラスチック製ですが、機械式時計のムーヴメントは丈夫な金属で作られています。

 赤く見えるのはルビーです。良質の機械式腕時計、懐中時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはモース硬度「九」と非常に硬い鉱物(コランダム Al2O3)ですので、時計の部品として使用されるのです。本品のムーヴメントには十七個のルビーが使用されています。写真ではルビーが五個しか見えませんが、あとの十二個は機械の裏側(文字盤側)など、上の写真に写っていない部分に使われています。本品のように十七個のルビーを使用した「十七石」(じゅうななせき)のムーヴメントは、摩耗してはならない箇所のほぼすべてにルビーを使用しており、「ハイ・ジュエル・ムーヴメント」(英 high jewel movement)と呼ばれる高級品です。

 本品の製作当時、ハイ・ジュエル・ウォッチの価格は初任給のおよそ三カ月分でした。現代のクォーツ時計に比べるとずいぶんと高価ですが、現在スイスで作られている機械式時計も、価格はやはり数十万円です。ほとんどのクォーツ時計には、実はおもちゃのようなプラスチック製ムーヴメントが入っていて、そのせいで安く手に入るようになったのですが、良質の機械式時計の値段は、昔も今も変わりません。





 本品のムーヴメントはトノー型の手巻きムーヴメント「キャリバー 163」で、フランス東部ブザンソンにある時計会社、フランス・エボーシュ社(France Ebauches, Besançon )の機械です。「フランス・エボーシュ キャリバー 163」が作られた1970年代は、機械式時計が現在(二十一世紀)の機械式時計と同じ技術レベルに到達した時代です。「フランス・エボーシュ キャリバー 163」もたいへん優れた機械で、振動数(f = 21600 A/h)、パワー・リザーヴ(43 hs)とも現代の機械式時計に引けを取りません。

 アンティーク時計を実用品として購入するのであれば、ムーヴメントの状態を確かめることが重要です。しかしながらムーヴメントの状態は、時計の外側を見ても分からないのはもちろん、日差を測っても分かりません。時計の寿命に大きく関わるひげぜんまいの状態が悪くても、時計は外見上正常に動くからです。しかしながら当店ではムーヴメントの状態をきちんと把握し、必要な整備を行ったうえで販売していますので、お客様には安心してご購入いただけます。またアンティーク時計はどこの店でもほぼ現状売りで、修理にはなかなか対応してもらえませんが、当店ではアンティーク時計の修理に対応しています。フランス・エボーシュ社の各種パーツも豊富に確保しておりますので、ご安心ください。当店の修理対応につきましては、こちらをご覧くださいませ。


 時計とバンドは別々のメーカーが作っていますから、アンティーク時計とバンドの組み合わせに必然性はありません。アンティーク時計に元々取り付けられていたバンドが破損している場合は取り換える必要がありますし、バンドが使える状態で残っているとしても、それは時計をもともと所有していた人が自分のサイズや好みに合うバンドを取り付けたのがたまたま残っているというだけのことです。ですからバンドは自分に合うものを選ぶのが、アンティーク時計との正しい付き合い方です。

 バンドは消耗品ですから、長く使用していると必ず傷みますが、取り付け部の幅さえ合っていれば、市販のバンドにいつでも交換できます。本品に適合するバンドのサイズ(時計に取り付ける部分で測ったバンドの幅)は、十一ミリメートルです。商品写真は茶色のバンドを付けて撮影しましたが、当店の在庫にお好きな色がございましたら、無料で付け替えいたします。





 時計は無料でオーバーホール(分解掃除)をした後にお渡しいたします。お買い上げ後も期限を切らずに修理に対応しますので、日々安心してご愛用いただけます。お支払方法は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払いでもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。バンド等付属品に関すること、お支払方法に関することなど、どうぞ遠慮なくご相談ください。





本体価格 88,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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