ブロバ 《バロネス》 17石
ムーヴメントの種類： Bulova cal. 6AZ
10カラット・ロールド・ゴールド・プレート（分厚い金めっき）のケース
白色文字盤に金色の立体インデックス
ブルー・スティールのバトン型針
1938年
1938年に発売されたブロバ社の女性用時計「バロネス」(Baroness)。すっきりとしたアール・デコ様式のデザインは、本品と同時代の 1930年代に完成したアメリカ繁栄の象徴、エンパイア・ステイト・ビルディングを連想させます。白い文字盤とシャンパン・ゴールドの立体インデックスの組み合わせは、目に優しく且つ視認性に優れています。
上品さと実用性を兼ね備えた時計の表情に、ブルー・スティールの針がアクセントを添えます。現代のアンティーク風クォーツ時計に見られる青い針は塗装してありますが、本品の青い針は真正のブルー・スティール（青焼き）です。
本品の文字盤は長方形に近く、かなり細長い形です。これに対して本品のムーヴメント（時計内部の機械）はトノー形（樽形）です。トノー形の「バロネス」を細長い長方形に近く見せるために、1930年代特有の「ステップト・ケース」(stepped
case) が採用されています。
ここでいう「ケース」とは、ムーヴメントを保護する金属の筐体（きょうたい）、つまり「時計本体」として見えている部分のことです。本品のケースはムーヴメントに合わせてトノー形であるゆえに、長方形に近い文字盤に比べると、三時方向及び九時方向に大きく張り出しています。この部分に階段状の「ステップ」を付けて後退させることにより、張り出しを目立たなくさせているのです。
1930年代は四角い時計が流行した時代でした。しかるに大部分のムーヴメントは円い形をしていました。この矛盾を解決するために考案されたのが「ステップト・ケース」です。「ステップト・ケース」の時計は
1930年代という時代を色濃く映した、この時代ならではのデザインです。
本品に搭載されているムーヴメント、ブロバ「キャリバー 6AZ」は、スイスのフォンテンメロン社製「キャリバー 120」(FHF120)、またはオロール＝ヴィルレ社（ベルノワーズ社）製「キャリバー
120」(AV120) をエボーシュとした17石のハイ・ジュエル機（17個のルビーを使用した高級機）で、1937年から 1940年まで製作されました。サイズは縦横 15.3 x 18.2ミリメートル、厚さ 3,5ミリメートルと一円硬貨よりも小さく、振動数は毎時 18,000振動 (f = 18000 A/h)、パワー・リザーヴは40時間です。
下の写真は本品のムーヴメントを実物の70倍の面積に拡大しています。ルビーは5個ほどしか見えませんが、地板（文字盤の下）等、写真に写らない部分を含めると全部で
17個が使われており、二番受けに「17石」(SEVENTEEN JEWELS) と刻印されています。
角穴車の横、「スイス製」(SWISS) と表示された隣にあるクレセント（弦月）の刻印は、1938年製を示すブロバ社のデイト・コード（製造年記号）です。時計製作が機械化されず、丁寧な手仕事によっていたこの時代、全ての受け（裏蓋を取ると見える大きな板状部品）は面取りされ、鏡のように磨き上げられています。時計製作の機械化が進んだ後代、すなわち1970年代頃から現在に至る時代の機械式ムーヴメントは粗削りで、全ての金属製部品を研磨するような面倒な作業はほとんど行われなくなりますが、1938年製の本品は熟練した職人が丁寧な手作業で製作しています。
写真は真上から撮影していますので分かりづらいですが、ブロバ「キャリバー 6AZ」のひげぜんまいは「巻き上げひげ」（ブレゲひげ）です。巻き上げひげは、プロ中のプロと呼ぶべき熟練者による人間離れした職人技で製作されます。また下の写真でもわかるように、天符の受け石座は天符受けの裏側からネジ留めされています。
本品のクリスタル（風防）は、当時のデッド・ストック品（新品）に入れ換えました。優雅なアーチを描くクリスタルは、20世紀前半の女性用時計の特徴です。
時計の十二時側及び六時側に、青色石付きの馬蹄形金具が見えますが、この金具はバンドの一部です。バンドは消耗品ですので、将来バンドを交換する際に、この青色石と馬蹄形金具は無くなります。現状のバンドはおおよそ16ないし17センチメートルの手首周りに対応しています。
なお当店にはヴィンテージ時計バンドが豊富に在庫していますので、別のバンドに交換することが可能です。現状のバンドは取り外す際に壊れる可能性があるので、異なるバンドに付け替えた写真を撮影しませんでしたが、下の例のようにナイロンまたは革（あるいは合成皮革）のコードを使うと、いっそうアンティークらしく優美な雰囲気となります。またコード・バンドであれば、黒、紺、ワイン色等さまざまな色に変更できます。
（下） ハミルトン 「バリ」 1962年製 当店の商品です。
本品のモデル名「バロネス」は、英語で「男爵夫人」のことです。宝飾時計に比べて普段使いし易い表情の中にも、生まれ育ちの良さ、気品を漂わせたデザインは、どのようなシーンでも活躍します。いまから七十数年前という古い年代にもかかわらず、いまでも動き、日常使いが可能であるという事実は、1938年の「ハイ・ジュエル・ウォッチ」が既に到達していた品質の高さを証明しています。
本体価格 89,000円 販売終了 SOLD
電話 (078-855-2502) またはメール（procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp）にてご注文くださいませ。
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