ギョーシェ彫り文字盤が魅力的な女性用腕時計 ブローバ 二十一石 とても小さな高級品



ムーヴメントの種類: ブローバ キャリバー 5AD

竜頭を除くサイズ 縦 23 x 横 14 ミリメートル  風防と裏蓋を含む厚さ 7 ミリメートル



 「ミッド・センチュリー」(英 mid-century 「世紀の半ば」の意)と呼ばれる二十世紀中ごろは、建築や家具の歴史において、未来を志向したモダンなデザインが特徴的な時代です。ミッド・センチュリーは時計の歴史においても特徴的な時代で、この時代の時計は現代の時計に比べて格段に小さく作られています。女性用時計はとりわけ華奢(きゃしゃ)で、ほとんどのモデルは現行の一円硬貨よりも小さなサイズです。





 サイズが極小化したミッド・センチュリーの女性用時計の中でも、とりわけ小さいのがこのブローバです。ブローバ(Bulova)は現在も存続する時計会社の名前です。ブローバは現在ではスイスに本社がありますが、もともとはアメリカ合衆国の時計メーカーで、ミッド・センチュリー当時はニューヨークの五番街に本社を構えていました。

 この時代にブローバが作っていた女性用時計には、二通りのサイズがあります。いずれのサイズも一円硬貨よりも小さいですが、本品のムーヴメント「キャリバー 5AD」はその中でも一層小さな機械で、世界最小クラスのサイズを実現しています。





 時計において、時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を、文字盤(もじばん)または文字板(もじいた)といいます。本品の文字盤は銀色で、美しいギョーシェ彫りが施されています。

 「ギョーシェ彫り」とはフランス語で「ギヨシャージュ」(仏 guillochage)と呼ばれる彫金技法のことで、「ギヨシェ」(仏 guilloché)または「ギヨシ」(仏 guillochis)と呼ばれる弧状の溝を交差させるように刻んでゆきます。本品の文字盤に施されたギョーシェ彫りは、一ミリメートルの間に何本ものギヨシェ(溝)を刻んでおり、あたかも光の細粒をちりばめたようにきらきらと輝きます。





 文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」のマーカー(目印)を、「インデックス」(英 index)といいます。本品のインデックスは小さな部品を文字盤上に植字した「立体インデックス」で、上下左右の四か所がアラビア数字、他の八か所が木の葉型マーカーとなっています。本品のようにアラビア数字と木の葉型または棒型のマーカーを混用したインデックスは、1950年代初頭から 1960年頃までに作られた時計の特徴です。

 本品のインデックスは、アラビア数字が縦一ミリメートル、木の葉が縦一ミリメートル強と、いずれもたいへん小さいですが、銀色の文字盤を背景に金色にきらめいてよく目立ちます。視認性に関する問題はまったくありません。





 針はインデックスと同じ金色です。針は柳の葉のように細長い「リーフ型」で、アンティーク時計の針の中でも最もドレッシーで優雅なスタイルです。リーフ型の形状は、木の葉型のマーカーともよく調和しています。


 時計内部の機械をムーヴメント(英 movement)といいます。現代の時計は「クォーツ式時計」といって、電池で動くクォーツ・ムーヴメントを使っています。クォーツ式時計が普及したのは 1970年代後半以降で、それ以前の時計は電池ではなくぜんまいで動いていました。

 電池で動く時計を「クォーツ式時計」と呼ぶのに対して、ぜんまいで動く時計を「機械式時計」といいます。アンティーク時計はすべて機械式時計です。本品も機械式時計で、電池ではなくぜんまいで動きます。電池は不要なので、本品のムーヴメントには電池を入れる場所がありません。

 三時の横に突出したツマミを竜頭(りゅうず)といいます。ぜんまいはこの竜頭を指先でつまみ、回転させて巻き上げます。ぜんまいを十分に巻き上げると、この時計は三十九時間動作します。そのまま放っておくと止まるので、一日一回ぜんまいを巻き上げてください。





 上の写真は本品のムーヴメントを取り出し、一円硬貨の上に載せて撮影しています。

 良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはたいへん硬い鉱物ですので、高級時計の部品として使用されるのです。必要な部分すべてにルビーを入れると、「十七石」(じゅうななせき)のムーヴメントになります。十七石のムーヴメントは「ハイ・ジュエル・ムーヴメント」(英 high jewel movement)と呼ばれる高級品です。

 本品のムーヴメントには「トウェンティ・ワン・ジュエルズ」(21 JLS 二十一石)、「アメリカ合衆国」(U.S.A.)、「ブローバ」(BULOVA)等の刻印があります。

 機械式ムーヴメントは十七石あれば必要な個所すべてにルビーが入った高級品ですが、ブローバ社はさらに四個のルビーを追加し、本品を「二十一石」の最高級ムーヴメントとしています。上の写真で赤く写っているのがルビーで、五個しか入っていないように見えますが、この写真に写っていない文字盤下の地板やムーヴメントの内部に入っていたり、箇所によって二重に入っていたりして、全部で二十一個のルビ-が使われています。





 本品が搭載している手巻ムーヴメント、「ブローバ キャリバー 5AD」は信頼性の高い高級機で、同サイズの数機種の原型となりました。特に本機に搭載されているムーヴメントは「ファイヴ・アジャストメンツ」(5 ADJ.)という仕様で、「キャリバー 5AD」のなかでも特に丁寧に制作・調整されています。

 当時のブックレットには、ブロバ社の時計のムーヴメントが特別な鋼鉄を使用して製作されており、その鋼鉄は金よりも高価であること、ムーヴメントを構成する百個以上の部品は一万分の一ミリメートルの精度で製作されていること、歯車のピッチ(歯と歯の間隔)は百分の一ミリメートル以下であること、チラネジという部品は、一個のシンブルに一万四千個も入ってしまうこと、などが書かれています。





 上の写真でムーヴメントの左上部分に金色の大きな環が見えています。これは天符(てんぷ)という部品で、機械式時計の心臓に相当する調速脱進機の一部です。「ブローバ キャリバー 5AD」の天符は「振動数一万八千」(f = 18000 A/h)といって、一秒間に二・五回、一時間に九千回の割合で、振り子のように往復する回転運動を繰り返します。




(上) フランスの古いシンブル(デ・ア・クードル dé à coudre) 高さ 24ミリメートル 外径 20ミリメートル 当店の商品


 天符には小さな物がたくさん突き刺さっているように見えます。このひとつひとつが、「チラネジ」と呼ばれる極小のマイナスネジです。上記のブックレットで「シンブルに一万四千個が入る」と書かれているのは、このネジのことです。シンブル(英 thimble)とは上の写真に写っているようなカップ状の指貫(ゆびぬき 針の後ろを押す道具)で、ティースプーン位の容量です。



 ミッド・センチュリー当時、本品のように質の良い時計の価格は、初任給の三か月分以上に相当しました。現代の貨幣価値でいえば、六、七十万円といったところでしょうか。クォーツ式(電池式)の安価な時計が容易に手に入る現在から見ると、昔の時計は想像もつかないほど高価な品物であったわけですが、製造後数十年経った時計でも普通に使えるという「一生もの」のクオリティを備えていたのであって、いわゆる「ブランド代」ゆえに品質に比べて価格が高すぎる商品とは事情が異なります。初任給三か月分の価格が付いた商品には、初任給三か月分の実質的な値打ちがあったのです。

 ちなみに機械式時計は現在でも作られています。高級品を紹介する雑誌などで見かける数十万円から数百万円の時計が、機械式時計です。クォーツ時計は数年の寿命で、かなり良いものでも十年余りで回路が壊れて修理不能になりますが、機械式時計は数十年以上のあいだ動く「一生もの」です。良質の機械式時計の「初任給数か月分」という値段は、昔も今も変わりません。



 バンドを取り付けるための突起を「ラグ」(英 lugs)といいます。現代の女性用時計は昔の男性用時計に相当するサイズで、十二時側と六時側に二本ずつのラグが突出し、「ばね棒」と呼ばれる部品を使って、革や金属でできた幅広のバンドを取り付けるようになっています。しかしながら 1930年代から1970年代頃までの女性用時計は一円硬貨よりも小さなサイズですので、ラグは十二時側と六時側に一本ずつ突出する「センター・ラグ」方式であるのが普通です。本品もセンター・ラグ方式で、十二時側と六時側に一本ずつ突出したラグに、コード・バンドと呼ばれる紐製バンドを通すか、金属製バンド末端のリングを引っ掛けて取り付ける仕組みになっています。





 昔も今も、時計会社は時計のみを作り、バンドは作っていません。新品の時計を買ったときに付いているバンドは、バンドのメーカーが時計会社に納入したものです。それゆえアンティーク時計のバンドに関しても、そのバンドがもともと付いていた「オリジナル」かどうかということは、全く気にする必要がありません。革やファブリックのバンドは消耗品ですから、いずれにせよ新品に交換する必要があります。金属製バンドは長持ちしますが、この場合も時計とバンドの組み合わせに必然性はありません。「オリジナル」のバンドがアンティーク時計に付いている場合でも、元の所有者が自分の好みやサイズに合わせてバンドを付け、それが残っているだけのことです。したがって自分の好みのデザイン、材質、サイズのバンドを選んで取り付けるのが、アンティーク時計との正しい付き合い方です。

 写真に写っているバンドは金属製のヴィンテージ品で、当店にて取り付けたものです。このバンドを付けた状態で計測すると、時計を含めたサイズ(手首回り)は約十六センチメートルです。このバンドは留め金の前後に二個ずつ、バネ式の駒がついていますので、これを増減すればサイズ調整が可能です。

 金属製バンドに比べてドレッシーさが増すのが、コード・バンド(黒い紐のバンド)です。コード・バンドは時計を引き立たせてくれますし、普段使いにもドレスアップした装いにも似合います。

 別のバンドへの交換は、無料で対応します。当店はアンティーク時計用バンドの在庫が豊富ですので、時計のお買い上げ後に別のバンドを追加購入していただき、バンドの「着替え」をしていただくこともできます。





 アンティーク時計を安心してご購入いただくために、全般的な解説ページをご用意いたしました。アンティーク時計を初めて購入される方は、こちらをお読みくださいませ。





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