トランジショナル・ウォッチ
transitional watches




【上】 スイス製高級トランジショナル・ウォッチ 15石 銀無垢デミ・ハンター・ケース 磁器製手書き文字盤 当店の販売済み商品


  ウォッチ(携帯用時計)という言葉はもともと懐中時計を指していましたが、20世紀に入るとムーヴメントが小型化され、小型の時計を手首に着けるのが女性の間で流行し始めます。これが腕時計の誕生で、初期の腕時計は懐中時計と同じ形をしています。


【下】 トランジショナル・ウォッチの一種である「コンヴァーティブル・ウォッチ」。女性用懐中時計にバンドを付けたもので、バンドを外せば懐中時計あるいはペンダント時計として使えます。当店の販売済み商品




 1910年代後半になると、女性の間で腕時計の人気が高まり、現在と同様に3時の位置に竜頭(りゅうず)を付けた腕時計専用機が製作されるようになります。

【下】 1920年代の女性用腕時計。当店の商品です。




 この時代の男性は懐中時計を使っていました。女性のものである腕時計を男性が身に着けるには大きな心理的抵抗がありました。20世紀初頭の社会通念では、男性が腕時計を着けるのは一種の女装のようなものであったのです。第一次世界大戦の際、軍が腕時計の機能性に注目して将校用に採用したことをきっかけに、男性用腕時計も少しずつ作られるようになりましたが、保守的な社会通念はなかなか変わりませんでした。


【下】 ロンジンの1912年製懐中時計を腕時計に改造したもの。当店の販売済み商品




 男性の間で腕時計が嫌われたのには、技術上の理由もありました。ウォッチはもともと懐中時計ですから、ムーヴメント(機械)はすべて円形でした。ところが腕時計を使ってみようという男性の間では、懐中時計とは違ったデザインを求める気持ちが強く、レクタンギュラー(長方形)やトノー(樽型)の需要が大きかったのです。

 そこで円形ムーヴメントを四角いケースに入れた時計が作られるようになりますが、円形ムーヴメントの直径を、細長いレクタンギュラーまたはトノー型ケースの幅に合わせなければならないために、小さな女性用ムーヴメントを男性用時計に転用せざるを得ませんでした。

 大まかに言って、ムーヴメントが大きいほど丈夫さ、正確さも向上します。社会に出て働く男性にとって、正確な時計は必需品でしたから、男性用腕時計に小さな円形ムーヴメントを使う方法には、この点で無理がありました。


【下】 円形ムーヴメントを使った男性用レクタンギュラー腕時計。当店の販売済み商品




 腕時計が男性の間で本格的に普及し始めるのは、1920年代後半頃以降のことです。




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