クラシカルな琺瑯(ほうろう)文字盤と、アール・デコ様式の針 懐中時計《オメガ 38 5L. 11》 十五石 直径 48.3 mm スイス 1930年代後半


突出部分を除くケースの直径 48.3 mm

ケースと風防を含む全体の厚み 12.0 mm


重量 43.1 g



 上品なサイズとデザインの男性用ドレス・ウォッチ。1930年代後半に、スイスのオメガ社が制作したオープン・フェイスの懐中時計(文字盤側に蓋の無い懐中時計)です。ムーヴメント(機械)の状態、外見とも、極めて優れた保存状態です。





 文字盤はアラビア数字でインデックスを描いた琺瑯(ほうろう)文字盤で、本品が制作された当時のオリジナルです。インデックスは白を背景にくっきりと黒いゴシック体フォントを採用することにより、良好な視認性を確保しています。

 下の写真ではガラスをベゼルごと外し、文字盤を露出させています。琺瑯文字盤とはエマイユを施した文字盤、すなわち金属製円盤の表面に白色不透明ガラスを融着させた文字盤をいいます。金属とガラスは熱膨張率が大きく異なるので、多くの場合、長い年月が経つ間に、温度変化によるヘアライン(微細な亀裂)が入ります。しかるに本品の琺瑯文字盤にはヘアラインが全く見られず、製作当時のままの状態を保っています。





 文字盤の上部にはオメガ社のマーク(ギリシア文字の大文字の「オメガ」)、及び「オメガ スイス製」(OMEGA FAB. SUISSE) の文字が記されています。"OMEGA FAB. SUISSE" は「モントル・オメガ、ファブリケ・アン・シュイス」("montre Omega, fabriquée en Suisse" フランス語で「オメガ、スイス製」)の略記です。





 本品の長針と短針はブルー・スティールで、細長く引き伸ばしたダイヤモンド型の中ほどを、両側から切り欠いたユニークな形状です。筆者(広川)が知る限り、この針の形は 1930年代のオメガ製懐中時計に特有で、アール・デコ様式の強い影響を受けています。オメガ社は本品を製作するにあたって、十九世紀以来のクラシカルな懐中時計デザインを基調としながらも、伝統と流行の適度なバランスを意識し、同時代の要素を採り入れています。





 六時の位置にはスモール・セカンド(小秒針)用の小文字盤があります。スモール・セカンド針もブルー・スティールです。

 時計の中心に秒針を取り付けるのは技術的に難しく、現代の時計のように秒針が真ん中に付く時計が普及したのは1960年代のことです。1950年代頃までの時計の秒針は、懐中時計も腕時計も、スモール・セカンド針(小秒針)と呼ばれる短い針が六時の位置に付いています。

 スモール・セカンド針は文字通り小さく、腕時計では視認性に劣ります。したがって1950年代頃までは、秒単位で時間を計測する必要がある場合、ストップ・ウォッチを使っていました。しかるに本品は大きなサイズの男性用懐中時計ですので、腕時計の場合よりもずっと大きなスモール・セカンド針が付いています。インダイアル(六時に位置する小文字盤)の周囲には秒単位の刻み目があって、計測に実用できます。





 本品のケースは、ベゼル、側面、裏蓋ともステンレス・スティールでできています。裏蓋にはアール・デコ様式の彫金が施されています。彫金装飾は摩滅により溝が浅くなっていますが、頑丈なステンレス・スティール製ケースは繊細なムーヴメントをよく守り、本品はいまも順調に動作しています。

 ボウ(英 bow 吊り輪)の材質はステンレス・スティールではありません。途中で取り替えたものかもしれませんが、実用上の問題は何もありません。





 裏蓋を開くとステンレス・スティール製のダストカバーがあり、ムーヴメントを埃から守っています。裏蓋の内側には、隅を円く落とした正三角形の内側にオメガのロゴ(ギリシア文字の大文字オメガ、その下に "OMEGA")、その下にフランス語と英語による「スイス製」の表記、中央部にケースのシリアル番号が刻印されています。なお一般に 1930年代の時計において、ケースのシリアル番号はムーヴメントのシリアル番号とは無関係です。

 ダストカバーの裏側は写真に撮影していませんが、回転工具のバフ掛けにより、多数の小円が並ぶ装飾的なパターンを描いています。





 本品は十五石手巻ムーヴメント、「オメガ 38 5L. 11」を搭載しています。「38 5L. 11」というキャリバー名はオメガ社における 1948年以前の表記法に基づいており、「38 5L.」は地板の直径が 38.5ミリメートル、すなわち十七リーニュであることを示します。





 「オメガ 38 5L. 11」のひげぜんまいは、巻き上げひげ(ブレゲひげ)です。巻き上げひげが歪むと修正が困難ですが、本品のひげは綺麗に巻いています。天符は大きな振り角で元気に作動しています。上下の写真は天符を振動させて(時計を動作させて)撮影しました。天輪は高速で回転していますが、全くぶれることなく、静止しているかのように写っています。このことから天真に曲がりが無いことがお分かりいただけます。鼓車、キチ車にも問題はありません。裏押さえも折れていません。竜頭に摩耗はありません。





 本品はおよそ八十年前に制作された真正のアンティーク時計ですが、外見、内部の機械とも良好な保存状態で、日々実用することが可能です。ガラスには数か所に小さな瑕(きず)がありますが、写真にうまく写らない程度の小瑕ですし、あまり細かいことを気にしていては実用できないので、そのままにしてあります。使っているうちに瑕が増えれば、あとで取り替えればよいと思います。

 シンプルな計時のみに機能を限った本品は、クロノグラフ等の複雑時計に比べてメンテナンス性に優れています。また計時のみの時計は、各種の時計中、最も地位が高いドレス・ウォッチです。それゆえ本品は洋装、和装、フォーマル、カジュアルなど、どのような服装に合わせても違和感がありません。

 アール・デコ様式のケース彫刻と針、クラシカルな文字盤を併せ持つ本品は、1930年代ならではのデザインです。アンティーク品の愛好家は、「その時代にしか作られ得なかったもの」と出会うことを喜びとします。本品は 1930年代の空気を色濃くまといつつも、充分に実用可能であり、日々愉しみを与えてくれる優れたアンティーク時計に仕上がっています。





189,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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