（下の二枚） 文字盤を外して、ムーヴメントの日の裏側を撮影
クロノメートル・デュ・ミヌール フランスの鉱夫用懐中時計 ケース径 51ミリメートル 19世紀末から20世紀初頭
7石のクラブトゥース脱進機を搭載した良質の懐中時計。およそ百年前のフランスで使われていたものです。
本品のムーヴメント（機械）は 18リーニュで、ケース（時計の外側）の直径は 51.0ミリメートル、ガラスを含む最大の厚さは 15.5ミリメートルです。ケースはマユショール（maillechort 銅、ニッケル、亜鉛の合金）でできており、クロムめっきが施されています。マユショールは日本語では「洋銀」といい、わが国の現行五百円硬貨をはじめ、各国の貨幣にも使われる優れた合金です。本品のケースにも腐食その他特筆すべき問題は何も生じていません。クロムめっきはところどころで磨滅しています。裏蓋とダストカバーは蝶番（ちょうつがい）式で、正しい角度に開きます。ベゼルはこじ開けで開けるようになっています。ベゼルに緩みはありません。吊り輪（ボウ）にも緩みはありません。
本品の文字盤は白色ガラスのエマイユによる琺瑯（ほうろう）文字盤で、黒色アラビア数字によるインデックスを配します。文字盤の保存状態は極めて良好で、一本のヘアライン（ひび）さえ無い完品です。
インデックスは手書きで、外周には小さな数字で「分（ふん）」を表示しています。インデックス外側には金粉及び銀色の金属粉を膠（にかわ）に溶いて、ドットを描いています。五分ごとに配された銀色のマーカーは、小さなピラミッド型をしています。
短針と長針は「ルイ十四世針」と呼ばれる優雅な形です。針は良好な状態で、折れ、曲がり、錆（さび）等の問題は一切ありません。
現代の時計の秒針は「センター・セカンド」といって、短針、長針と同様に、時計の中央に取り付けられています。これに対して懐中時計の秒針は「スモール・セカンド」といって、六時の位置に取り付けられています。時計の中央に秒針を取り付ける方式のムーヴメントを制作するのは技術的に困難で、「センター・セカンド」が普及するのは1960年代です。アンティーク懐中時計の秒針はすべて「スモール・セカンド」方式で、本品も例外ではありません。
本品は電池ではなくぜんまいで動く「機械式時計」ですので、一日一回、竜頭（りゅうず）を回してぜんまいを巻く必要があります。本品の竜頭はアンティーク懐中時計に特有の玉ねぎのような形で、突出部分に軽い磨滅がありますが、十分に使える良い状態です。時刻合わせは「ダボ押し式」です。一時の辺りに突出している小さなボタンを爪の先で押し込んだ状態で竜頭を回すと、時刻合わせができます。小さなボタンを押し込まずに竜頭を回すと、ぜんまいが巻き上げられます。
ガラスに微細なきずはありますが、ガラス交換を要するほどではなく、十分に良い状態です。ガラスは厚めで、縁が斜めにカットされています。
なお英語で「ハンター・ケース」（hunter case 「猟師用ケース」の意）、フランス語で「サヴォネット」（savonnette 「石鹸」の意）と呼ばれる蓋付ケースの懐中時計は、ガラスが厚さ 1ミリメートル以下と極端に薄いために破損しやすく、いったん破損すると交換用ガラスが見つからないので、当店では極力扱わないようにしています。本品のように蓋が無い「オープン・フェイス型」の懐中時計はガラスが厚く、またもし壊れた場合にも交換用ガラスが入手可能ですので、安心して使えます。
本品のムーヴメント（時計の機械）は現代の機械式時計と同じ「クラブトゥース脱進機」を搭載しています。石数は七石で、調速脱進機においてルビーが必要な部分にはすべてルビーを入れています。上の写真は時計を動作させて撮影しました。天符に注目いただければ分かるように、天真に曲がりはありません。ひげぜんまいにも乱れはありません。
香箱受け（上の写真で手前に写っている部分）には「クロノメートル・デュ・ミヌール」（CHRONOMÈTRE DU MINEUR フランス語で「鉱夫用時計」の意）の文字が刻まれています。鉱夫がいったん坑内に入ると、複数の作業現場間の連絡が難しくなりますから、時計は必需品でした。本品は百年以上前のもので、当時は時計が非常に高価でしたから、おそらく鉱山会社が作業現場のリーダーに支給したのでしょう。
本品は真正のアンティーク時計ですが、たいへん古い年代にもかかわらず優れた保存状態で、十分に実用できます。文字盤と針、ガラスのいずれにも特筆すべき問題はありません。厚さは二つ折り携帯電話と同程度で、スマートにポケットに収まります。
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48,000円 オーバーホール込 現状売り 販売終了 SOLD
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