ヨンガー・エ・ブレッソン 《セルニー 生命をもたらす月の時計》 真珠母貝文字盤 ステンレス・スティール製ケース 裏スケルトン 直径 37ミリメートル 新品



 ヨンガー・エ・ブレッソン(Yonger & Bresson)は 1975年にパリで商標登録され、現在はフランスのアンブル社(MONTRES AMBRE S.A.)が展開する時計ブランドです。ヨンガーは英語のヤンガー(younger)に由来し、進化し続ける時計の若々しさを表します。ブレッソンは写真家アンリ・カルティエ・ブレッソン(Henri Cartier Bresson, 1908 - 2004)に由来します。アンリ・カルティエ・ブレッソンの作品は細部の克明な描写で知られ、時計の正確さと相通ずるものがあります。




 時計内部の機械をムーヴメント(英 a movement)といいます。フランス語ではムーヴマン(仏 un mouvement)ですが、この商品説明では便宜上英語のムーヴメントを使います。

 ヨンガー・エ・ブレッソンはもともとスイスのETA社やセイコー、シチズンなどの他社製ムーヴメントを使用していましたが、 2011年に独自の自動巻ムーヴメントを開発しました。ヨンガー・エ・ブレッソン製自動巻ムーヴメントには現在三種類があり、設計、製作、組み立てのすべてが、モルトーのアンブル社で行われています。モルトー(Morteau ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏ル・ドゥ県)はスイスとの国境に近いフランス東部の町です。


 本品はアンティーク品ではなく、当店がアンブル社から直輸入した新品です。





 ヨンガー・エ・ブレッソンは自社製ムーヴメントを搭載した機種にフランスの城の名前を付けています。セルニー(Cerny イール=ド=フランス地域圏エソンヌ県)はパリの南四十一キロメートルにある町で、シャトー・ド・ヴィリエ(le château de Villiers)と呼ばれる城を有します。シャトー・ド・ヴィリエは元の名をヴィリエ=ル=シャテル(Villiers-le-Châtel)といい、1006年に記録を遡ります。





 ムーヴメントを保護する金属製の容器(時計の外側)をケース(英 case)といいます。フランス語ではボワチエ(仏 boîtier)ですが、この商品説明では便宜上英語のケースを使います。本品のケースはステンレス・スティールでできています。丈夫で美しく、アレルギーも起こしにくいステンレス・スティールは、時計ケースの素材として優れています。





 ケース裏蓋はねじ込み式で、中央部分がガラス窓となっており、回転錘(かいてんすい ローター)の動作や、規則正しい天符(てんぷ)の振動を見ることができます。回転錘と裏蓋のベゼル部分には、ヨンガー・エ・ブレッソンの王冠マークが彫られており、ローター真(回転錘の軸)の末端にも王冠を模(かたど)る装飾が見られます。

 裏蓋のベゼルにはファブリケ・アン・フランス(仏 FABRIQUÉ EN FRANCE フランス製)、エタンシュ・ア・トロワ・バル(ÉTANCHE À 3 BARS 三気圧防水、30メートル防水)、サフィール(仏 SAPHIR サファイア)、トゥタシエ(仏 TOUT ACIER 鋼製ケース)の文字、及び本品の品番(YBD8524)が刻まれています。

 サファイアの表記は、本品の文字盤側の風防、いわゆるガラスが、人工サファイアでできていることを表します。人工のサファイアは天然のサファイアと同じ物質で、モース硬度「九」と引っかきに対して非常に強く、めったなことで瑕(きず)がつきません。サファイア製風防は高価ですが、瑕がつかないのは大きな利点です。





 時計ムーヴメントにおいて、輪列(カナと歯車の列)を所定の位置に保持するための大きな板状部品を、日本語で受け、フランス語でポン(仏 un pont 橋)、英語でブリッジ(英 a bridge 橋)といいます。本品の受けは小さな同心円状装飾で覆い尽くされています。この装飾をフランス語でペルラージュ(仏 perlage)といいます。ペルラージュとは真珠仕上げというほどの意味で、回転するゴム製チップを受けに押し付けて製作します。小さな同心円はそれ自体が綺麗な同心円状に配列されており、熟練した時計職人の丁寧な手仕事がよくわかります。





 時計において時刻を表示する数字や目盛りを記した板状の部品を、文字盤(もじばん)または文字板(もじいた)といいます。文字盤の周囲十二か所にある長針五分ごと、短針一時間ごとのマークを、インデックス(英 index)、アンデクス(仏 index)といいます。本品のインデックスは重厚なローマ数字で、文字盤全体にたいへんクラシカルな趣を与えています。

 一見してわかるように、本品の文字盤はたいへん凝った作りです。ローマ数字のインデックス部分は環状に盛り上がり、最外周には立体的な網状装飾があしらわれています。インデックスよりも内側は、フランス語でナークル(仏 nacre)と呼ばれる螺鈿(らでん 真珠母の象嵌)となっています。螺鈿は撮影が難しく、写真にうまく写りません。本品の螺鈿は実物を見ると写真よりもはるかに美しく、お買い上げいただいた方には必ずご満足いただけます。


 文字盤の上部には王冠マークの下にヨンガー・エ・ブレッソンのブランド名、及びオトマティーク(仏 AUTOMATIQUE)の表記があります。フランス語オトマティークは、英語オートマティック(自動巻)と同じ意味です。ローマ数字インデックスの外周には五分あるいは五秒ごとにアラビア数字を記したインデックスがあり、最下部にファブリケ・アン・フランス(仏 FABRIQUÉ EN FRANCE フランス製)と書かれています。

 本品の時針と分針は優雅なリーフ型です。柳の葉のようなリーフ型はドレス・ウォッチに採用される美しい形で、筆者(広川)はこの針がいちばん好きです。秒針は長い側の反対方向にも少し伸びて、ヨンガー・エ・ブレッソンのシンボルである王冠が末端を飾っています。本品はヴィンテージ・ウォッチを思わせるデザインですが、ブランドのシンボルをあしらった秒針は、本品に唯一みられる現代的な特徴です。

 クォーツ式(電池式)の時計はステップ運針といって、秒針が一秒ごとに間歇的に動きます。クォーツ時計を耳に当てると、一秒ごとに秒針を動かす音がチッ、チッ、チッ…と聞こえます。これに対して本品のような機械式(ぜんまい式)時計の秒針はスイープ運針(連続運針)といって、秒針は滑らかに動きます。本品を耳に当てると、小人が鈴を振るように愛らしい音がチクタクチクタクチクタク…と聞こえてきます。





 現代の時計は電池で動くクォーツ式が普通です。しかしながらクォーツ式時計は 1970年代以降に出現した品物で、それよりも以前の時計は電池ではなくぜんまいの力で動いていました、ぜんまいの力で動く時計を機械式時計、英語でメカニカル・ウォッチ(英 a mechanical watch)、フランス語でモントル・メカニーク(仏 une montre mécanique)といいます。本品は現代の品物ですが、珍しいことにクォーツ式ではなく、ぜんまいの力で動くモントル・メカニーク(機械式時計)です。

 機械式時計には手巻式と自動巻式があります。時間を計る仕組みはどちらもまったく同じですが、自動巻きは回転錘(かいてんすい)という自由に動く錘(おもり)をムーヴメントに取り付け、その動きによってぜんまいが自動的に巻き上がるように工夫されています。本品はモントル・ア・ルモンタージュ・オトマティーク(仏 une montre à remontage automatique)、すなわち自動巻時計です。





 文字盤の六時の位置には窓があって、大きな輪が勢いよく回るのが見えます。これは天符(てんぷ)といって、機械式時計で最も大切な部品です。静止写真では分かりませんが、天符は一方向に回るのではなく、振り子のように振動(往復運動すること)しています。機械式クロックが振り子で時間を測るのと同じように、機械式ウォッチは天符で時間を測ります。本品の天符は一時間あたり二万八千八百回の振動を正確に繰り返し、時を測っています。

 本品のように良質の機械式時計は、ムーヴメントの摩耗してはいけない部分にルビーを使います。天符の中心に見える赤い石がルビーです。ルビーはたいへん硬い鉱物ですので、高級時計の部品として使用されます。外側から見えない部分も含めて、本品のムーヴメントには二十九個のルビーが使われています。ルビーの数は十七個あれば良いとされているので、二十九個は充分すぎるほどの数です。





 ぜんまいを巻いたり時刻を合わせたりする際のツマミを、竜頭(りゅうず)といいます。三時の位置から突出するツマミが、竜頭です。玉ねぎ型の竜頭は懐中時計の時代によく見られたデザインで、本品にクラシカルな表情を添えています。竜頭には青色ガラスの装飾が付いています。

 竜頭は現代のクォーツ式(電池式)時計にも付いていますが、電池を入れ替えたとき以外、滅多に触ることがありません。クォーツ式時計の竜頭は操作し易く作る必要がないのでサイズが小さく、竜頭から機械内部に延びる心棒(竜真)もごく細いものとなっています。これに対して機械式時計の竜頭は操作しやすいように大きく作られており、竜真も太くて耐久性があります。本品は自動巻きですが、腕をあまり動かさないと、ぜんまいの巻き上げが不足することがあります。またぜんまいが完全に巻き戻って停止した時計を再び動かすには、最初にぜんまいを手動で巻く必要があります。そのような場合に備えて、本品は手巻きも可能になっています。竜頭は大きめで快適に操作できます。ぜんまいを巻くのはとても簡単で、誰にでもできることですので、初めての方でも心配は無用です。

 なお自動巻の時計を常に回転させてぜんまいを巻き続ける装置が市販されていますが、使おうと思ったときに時計が止まっていても、ぜんまいを手動で巻き上げれば良いだけですから、あのような機械は不要です。時計を常に作動させていないと機械が傷むということもありません。しばらく使わない場合は、動かさずにしまっておいて構いません。クォーツ式時計を長期間放置すると電池の液漏れで故障することがありますが、機械式時計にはそもそも電池が入っていないので、液漏れによる故障もあり得ません。機械式時計は予想以上に使い易く、初めての方でも快適にご愛用いただけます。









 本品のバンドは革製で、ディプロイアント式(折り畳み式)尾錠が付いています。尾錠にはヨンガー・エ・ブレッソンのマークとロゴ、ファブリケ・アン・フランス(フランス製)、トゥタシエ(ステンレス・スティール製)の文字が刻まれています。ディプロイアント式尾錠はベルトの穴の位置を変えることにより、サイズを自由に調整できます。バンド幅は 18ミリメートルで、お好みにより他の色、他の素材の汎用バンドに変更することも可能です。バンドが傷んだ場合も簡単に取り替え可能ですのでご安心ください。またディプロイアント式尾錠が好みに合わない場合は、よりシンプルな汎用尾錠にも取り替えできます。

 本品のサイズはケースの直径 37ミリメートル、厚さ 12ミリメートルで、仕事にもカジュアルにも使えます。大きすぎず厚すぎないので、スーツで仕事をする場合も、シャツの袖が引っかからずスマートに着用できます。着用例の上の写真は男性、下の写真は女性がモデルです。







 黒い文字盤の中央で美しい光を反射する真珠母の円盤は、あたかも夜空に輝く月のようです。真珠母は真珠と同様に生命と再生の象徴ですし、月もまた永遠の再生、永遠の命を象徴します。我が国では月でウサギが餅を搗きますが、餅は穀霊の依り代であり、我が国の民間信仰は祖霊が滅びることなく穀霊になると考えています。中国では月のウサギは西王母の仙薬を搗きますが、これは不老不死の薬です。月に帰ったかぐや姫が竹取りの翁と媼に贈ったのも、この仙薬に他なりません。

 ルーマニア出身の宗教学者でシカゴ大学神学部教授を務めたミルチャ・エリアーデ(Mircea Eliade 1907 - 1986)は、ブカレスト大学での講義を基にした 1949年初版の著書「宗教史論」("Traité d'histoire des religions")において、月が人間の女性をはじめあらゆる生命にリズムを与える多産性の源であると論じ、さらに月と水、螺旋が等しい象徴性を有すると論じています。それゆえ真珠母の円盤が月に見えても不思議はないし、針が永遠に回転を続ける時計を飾るのに、真珠母でできた月はこの上なくふさわしい装飾であるといえます。真珠母の円盤を嵌め込んだ本品の文字盤は、永遠に再生し続ける生命の神秘的象徴となっています。

 当店の時計は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(金利手数料無料)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。遠慮なくご相談くださいませ。





79,000円 税込み

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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