十二時側と六時側に、それぞれひとつずつ突起(ラグ)がある女性用時計のバンド。金属部分の材質は12カラットのホワイト・ゴールド・フィルドで、手彫りの天然石製スカラベ4個をベゼル・セット(覆輪留め)しています。ゴールド・フィルド(金張り)とはベース・メタルに金の薄板を熱で圧着したもので、現代の金めっき(エレクトロプレート)に比べると、金の厚さは数十倍、時には百倍にも及びます。
本品の留め金にはメーカーの刻印 ("Van Dell") と並んで「12カラット・ゴールド・フィルド」"12K
G. F." の刻印があり、金属部分の 1/20に相当する重量の 12カラット・ゴールド(十二金)を使用していることがわかります。12カラット・ゴールド(十二金)は純度12/24、すなわち純度50%の金と言う意味で、十八金や十四金に比べて、耐摩耗性に優れます。本品の金張りも良い状態で、特筆すべき問題はありません。
スカラベは石を手彫りしたものです。スカラベとはエジプトに分布するオオタマオシコガネ (scarabaeus sacer) のことで、再生と永遠の命を象徴します。石の種類については、本格的な鑑別はしていませんが、赤はルーペで層状構造が見えるのでアゲート(めのう)、青はラピスラズリ、黄色はタイガー・アイ(虎目石)でしょう。緑はよくわかりません。偏光器で見ましたが、複屈折性はありません。非晶質の鉱物、あるいはガラスかもしれません。
ちなみにアゲートはふたご座または6月の石、国によっては5月の石とされています。またラピスラズリは日本で12月の石とされています。月ごとあるいは星座ごとの石(いわゆる誕生石)については、こちらをご覧ください。
バンド両端の、ラグに接続する部分は、径の大きな環になっていますので、幅広のラグにも対応します。ただし極端に幅広のラグや、ラグの孔からラグ先端部までの距離が長いものに使う場合は、環の交換が必要となる可能性もございます。不安な場合はご相談くださいませ。
このバンドは留め金部分を伸縮させて、14~15センチメートルの範囲で長さを調整できます。その範囲を超えて短くしたい場合は、コマを取るか、金具を交換すれば可能です。また長くしたい場合は、スカラベ入りの予備のコマを追加することができます。いずれの場合もご相談くださいませ。
このバンドの留め金はディプロイアント式(折りたたみ式)ですので、着脱時にもバンドは環状のままです。したがって時計を落下させる危険性が少なく、衝撃に弱い機械式時計に安心してお使いいただけます。1950年代頃のヴィンテージ品ですが、問題無く実用できるコンディションです。