真珠 その六 巻貝の真珠
huîtres perlières marines et leur perles ― 6. conques et leur perles




(上) 美しいアワビ真珠


 宝石質の真珠を作る貝は、ほとんどの場合、二枚貝です。これまでに解説した海産真珠貝はすべてウグイスガイ科の二枚貝ですし、淡水産真珠貝はすべてイシガイ科の二枚貝です。しかしながらごく一部の巻貝は美しい真珠を作ります。

 二枚貝と同様の真珠を作る巻貝としては、アワビが挙げられます。またカリブ海産のピンクガイはコンク・パール(英 conch pearls 巻貝真珠)と呼ばれる宝石質の稜柱層真珠を作ります。





 アワビはミミガイ科の貝の総称で、特定の種の和名ではありません。メキシコに産するクジャクアワビをはじめ、アワビは見事な真珠層を持つものが多く、非常に美しい真珠を作ります。アワビの養殖真珠は、貝殻の内側に張り付く半円真珠です。

 上の写真は半球形の核を用いた養殖アワビ真珠ですが、アワビからは天然真珠も採れます。アワビの天然真珠は極めて美しい多色の照りを有します。多くは大きく細長く、また先端が尖っているゆえに、江戸時代には角(つの)真珠と呼ばれて好事家に珍重されました。





 ピンクガイ(strombus gigas)は大型の巻貝で、バミューダからフロリダ州南部、西インド諸島を含むカリブ海域に分布します。英語ではピンク・コンク(英 a pink conch)またはクイーン・コンク(英 a queen conch)といいます(註1)。ピンクガイは十九世紀に流行したカメオ細工用にヨーロッパに輸出され、近年では中華料理などの食用にも採集されています。

 ピンクガイはごく稀に小さな真珠を抱えていることがあり、これをコンク・パールと呼んでいます。コンク・パールは貝のどの部位で作られるかによって異なり、多くがピンクからオレンジ色ですが、クリーム色、白、茶色、黒のものもあります。形状ほぼ球形に近いもの、卵形や紡錘形に近いものなどさまざまです。コンク・パールは稜柱層でできていて真珠光沢を有しませんが、絹糸状の光沢が美しく、ときに火焔状の魅力的な模様が浮かび出ています。

 コンク・パールは養殖真珠を作ることが出来ず、すべて天然真珠です。真珠を有するピンクガイは千個に一個、あるいは一万個に一個と言われており、稀に見つかる真珠も宝石質のものはごくわずかです。それゆえコンク・パールはかつての天然真珠と同様の貴重品であり、その重量はモンメではなく、カラットで表されます(註2)。


註1 英語において、コンク(英 conch)はスイショウガイ科(Strombidae ソデボラ科)の総称である。

註2 1 momme = 3.75 g  1 ct = 0.2 g  現行五円硬貨の重量は、一モンメである。



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