アール・ヌーヴォー様式による四弁の花 青色石を使ったエパングル・ア・クラヴァット 立体的で丁寧な作りの高級品


メダイユ部分の直径 10.5 mm  全長 約 7 cm

フランス  19世紀末から20世紀初頭



 1900 - 1910年代のエパングル・ア・クラヴァット (épingle à cravate)。「エパングル・ア・クラヴァット」はもともと男性用のネクタイピンですが、19世紀末以降は女性のスカーフ留めとしても使われるようになりました。





 本品はいくつもの部品を鑞(ろう)付けし、一点一点手間をかけて作られたエパングル・ア・クラヴァットで、この時代のフランスで制作されたジュエリーにいかにもふさわしく、典雅なアール・ヌーヴォー様式により、巴(ともえ)風の枠の中に日本風の植物がデザインされています。本品を制作した彫刻家は、過度の様式化を避け、直径わずか 1センチメートルのメダイユに、左右非対称で自然な花の姿を透かし彫りしています。葉にも花弁にも脈管が再現され、柔らかな花弁のテクスチャと三次元的に波打つ様子が、生きている植物そのままの自然さで巧みに表現されています。





 花の中心部にはシングル・カットの青色石が覆輪留め(ベゼル・セット)され、覆輪(ベゼル)にミル打ちが施されています。青色石はおそらくガラスのような人造石で、覆輪ゆえにいっそう濃い色に見えますが、光が入射すると、最高のカシミール産サファイアのように、すみれ色がかった青に輝きます。





 エパングル・ア・クラヴァットはフランス語で「ネクタイ用ピン」という意味で、もともと男性のものでしたが、19世紀末から1930年代頃までは男女ともに愛用されました。したがって使い方もネクタイ留めのみに留まらず、スカーフ留めや上着のボタンホールの飾りなど、さまざまに工夫して楽しむことができます。下の写真は、男性がエパングル・ア・クラヴァットでネクタイを留める場合の使用例を示したものです。





 下の写真はパリのアクセサリー商 E. ブリエ(E. Boullier)がティトル・フィクスの商品を掲載した 1907年頃の広告で、本品の類品が掲載されています。

 ティトル・フィクス(TITRE FIXE)またはフィクス(FIX)は、サヴァール・エ・フィス社(Savard et fils)の商標です。同社を創業したジュエリー職人フランソワ・サヴァール(François Savard, 1803 - 1875)は、1829年、真鍮またはブロンズの表面に金を張った素材オール・ドゥブレ(仏 or doublé)あるいはプラケ・ドール・ラミネ(仏 plaqué d'or laminé)を発明しました。この発明がサヴァール・エ・フィス社設立のきっかけとなりました。

 フランソワの発明は息子オーギュスト(Auguste Savard)に受け継がれます。 1895年、オーギュストはゲレ(Guéret ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏ラ・クルーズ県)に機械化された工場を設置し、それまですべて手作業であったジュエリー製作に機械を導入しました。これ以降、サヴァール・エ・フィス社のジュエリーはティトル・フィクス(TITRE FIXE)またはフィクスの商標で全盛期を迎えました。サヴァール・エ・フィスのジュエリーは金が厚いために磨滅しにくく、変色も起こらないので、十九世紀末から二十世紀前半のフランスにおいて人気を集めました。


(下・参考画像) 「ティトル・フィクス」ブランドのビジュ(ジュエリーとアクセサリー)。1907年の広告。




 本品はおよそ百年前のフランスで制作された品物ですが、特筆すべき問題の無い良好なコンディションです。 実用性の点でもまったく問題ありません。アンティークのエパングル・ア・クラヴァットは針先のカバーが無くなっているのが普通ですが、本品はオリジナルのカバーが完全な状態で残っており、新品同様の状態で大切に保管されていた品物であることがわかります。





本体価格 24,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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