ジルコン zircon

 ジルコンは色の範囲が非常に広い宝石のひとつで、無色、黄、赤、ゴールデン・ブラウン、リーフ・グリーン、スカイ・ブルー等のものがあります。このうちジルコンならではの金剛光沢(ダイヤモンドと同様の光沢)がもっとも美しく、ジュエリー用宝石として人気があるのが無色、ゴールデン・ブラウン、スカイ・ブルーの石です。

 ジルコンの化学式は ZrSiO4 ですが、ウラン含有鉱物コフィナイト coffinite (化学式U(SiO4)1-x)およびトリウム含有鉱物トーライト thorite(化学式 (Th, U)SiO4)と混合結晶を作ります。非常に古いサンプルにおいてはウランおよびトリウムに由来するアルファ線によって結晶格子が破壊され、非晶質に近いメタミクトという状態になっています。したがってジルコンにはふたつのタイプ、すなわち結晶格子の破壊が始まっていないハイ・タイプと、結晶格子の破壊が進行したロウ・タイプ(メタミクト)、およびそれらの中間段階のものがあり、個々の石によって硬度、比重、屈折率がかなり異なります。一個の石の部分によって硬度が異なる場合さえあり、研磨作業の際に注意を要します。これは宝石のなかでもきわめて特異で、ジルコンにのみみられる現象です。

 ジルコンは強い複屈折にもかかわらず、ほとんど二色性を示しません。ただしブルー・ジルコンのなかには深いスカイ・ブルーと無色あるいは黄灰色の顕著な二色性を示すものがあります。分散度は 0.039 と非常に高く、ダイヤモンド並みの強烈なファイア(七色の光)を放ちます。なお不思議なことにジルコンはハイ・タイプでもロウ・タイプでも同じ分散度を示しますが、この理由は分かっていません。

 ロウ・タイプのジルコンを 1450℃付近まで加熱すると比重と屈折率がハイ・タイプの値に戻り、スペクトルの吸収線も明瞭になります。これはアルファ線で結合を解かれた珪素とジルコニアが再結合し、ジルコン結晶を作るためです。ジュエリー用宝石として重要なゴールデン・ブラウン及びスカイ・ブルーのジルコンは、ヴェトナム産の赤褐色の結晶を加熱処理することで得られます。なお加熱処理したジルコンを長時間放射線にさらすと元の赤褐色に戻ってしまいますので注意が必要です。

 ジルコンの類似石(イミテーション)としてはブルー・ジルコンの代用にされる合成ブルー・スピネルがありますが、スピネルには複屈折がないこと、チェルシー・カラー・フィルターを使うとかすかなオレンジ色が見えることにより、容易に判別することができます。

ジルコン ハイ・タイプ
比重 4.70 屈折率 1.925-1.984 モース硬度 7.5

ジルコン ロウ・タイプ
比重 4.00 屈折率 1.810-1.815 モース硬度 6.5