淡水バロック・パールのペンダント 《七色の於菟(おと) にゃんこ珠 29 x 25 mm》 強い真珠光沢 スターリング・シルバー製金具


環を含む重量 7.0 g

真珠のサイズ 縦 29.0 x 横 25.0 mm  最大の厚さ 8 mm



 七色の真珠光沢を有する淡水バロック・パールのペンダント。上部の金具はスターリング・シルバー製です。真珠は中国産、環は国産です。





 真珠母貝には海産のものと淡水産のものがあります。海産の真珠は母貝の種類で区別して、あこや真珠、白蝶真珠、黒蝶真珠、マベ真珠等と呼ばれます。淡水産の真珠貝にも数種がありますが、それらが作る真珠はたいていの場合、母貝の種類を区別せずに、淡水真珠と総称されています。

 かつての真珠養殖はあこや真珠、淡水真珠とも日本でのみ行われていましたが、およそ四十年前からはいずれも海外で養殖が始まりました。特に淡水真珠養殖はかつて日本の独擅場でしたが、現在の日本ではほぼ行われなくなり、舞台は完全に中国に移っています。中国産淡水真珠の品質は目覚ましく向上し、海産真珠を凌ぐ美しさの珠が産み出されています。


 本品は淡水産の養殖真珠で、円盤状の核が入っています。サイズから判断して、本品はセカンド・オペレーションによって得られた真珠かもしれません。養殖真珠の核は淡水二枚貝の殻を加工したものであり、海産養殖真珠も淡水産養殖真珠も、ファースト・オペレーション及びセカンド・オペレーションに際して、淡水二枚貝の殻でできた核が挿入されます。





 淡水産養殖真珠の特徴は、海産養殖真珠に比べて養殖期間が長いゆえに真珠層が厚く、優れた照り(艶)を有することです。海産養殖真珠の養殖期間は短く、あこや真珠は七か月、長い場合でも一年半で浜揚げされます。それゆえ海産養殖真珠は体積の九割以上が核で、あこや真珠の場合、真珠層の厚みは一ミリメートルもありません。

 一方、淡水真珠はあこや真珠よりもはるかに長い時間をかけて養殖され、真珠層は格段に厚くなります。先ほど本品がセカンド・オペレーションによって得られた可能性に言及しましたが、それでも養殖期間は三、四年以上に及びます。長期に亙る養殖の結果、本品の表面は厚い真珠層に被われています。セカンド・オペレーションによる黒蝶真珠や白蝶真珠の真珠層は薄くなりがちですが、淡水真珠である本品の真珠層はきわめて厚く、強い照り(真珠光沢)を有します。実際のところ本品は照りが強すぎて、写真を綺麗に撮影できません。肉眼で見る本品は七色の真珠光沢を有します。本品の美しさは写真で伝えることができず、実物をご覧いただくしかありません。





 天然真珠の時代から、バロック・パールは様々なものに見立てて愛玩されました。本品の形は丸々とした猫の後ろ姿に似ています。短い尻尾はチャーム・ポイントです。

 我が国では平安時代に狸と書いてネコと訓読し、現代の猫の意味、とりわけ飼い猫の意味に使っていましたが、鎌倉時代になるとネコに狸の字は使われなくなり、飼い猫か否かを問わず猫の字が用いられるようになりました。その一方で室町時代の辞書「下学集」(1445年)には、猫を世俗で於兎(おと)と呼ぶとの記述がみられます。兎の本字は菟で、於兎は於菟とも書きます。この於菟とは今から二千八百年ないし二千五百年前の春秋時代、長江中流域の楚で、虎のことを呼んでいた方言です。いっぽう中国から我が国に伝わった動物名で於兎(於菟)は乙の意に解されました。この場合の乙は小さいという意味ですから、我が国において猫は小さな虎と看做されたことがわかります。

 しかるに田中貴子氏「猫の古典文学史」(ISBN 978-4-06-292264-7)p. 25 によると、南宋の陳全卿が撰した「祖庭事苑」は、猫が虎の叔父であるとしています。また清代に黄漢(こうかん)という人が著した「猫苑」は、猫が虎の師匠であると述べています。これらの書物は猫を小さな虎と考えるのではなく、虎を大きな猫と看做しています。つまり小さな猫こそ本流であり、堂々たる体躯の虎はいわば二流の猫と扱われているわけで、筆者(広川)はそのことを面白く感じます。





 猫が小さな虎であるにせよ、虎が大きな猫であるにせよ、いずれにしても猫と虎は同類です。したがって本品は猫のペンダントであるとともに、虎のペンダントでもあります。

 古代エジプトにおいて、猫の姿の女神バステトは人間の守護者でした。出土品の一例である小刀には、蛇の頭を切断しようとする猫が彫られています。古代エジプトでは、西に沈んだ太陽は夜間に船で地下を移動し、翌朝に東から昇ると考えられていました。しかるに地下には太陽神に敵対する闇の蛇アポフィス(Ἄποφις)がいて、地下を通る太陽神の船を転覆させようと試みます。小刀に彫られた猫は優れた運動能力を活かしてアポフィスと戦っています。闇の蛇と戦い勝利する猫は、人間の守護者そのものです。

 中国で虎は五行説と結びつき、四つの方角と中心を五頭の虎が守護していると考えられました。「三国志演義」や「水滸伝」において五人の武将に与えられた五虎大将の呼び名は、四方と中心を守る五頭の虎から引き継いだものです。五虎大将は強力な守護者であり、無敵の猫である虎の徳を表しています。





 養殖真珠が未だ登場せず、天然真珠しかなかった時代の真珠は、すべてバロック・パールでした。したがって天然真珠の時代に、バロック・パールを球形の真珠に劣るものとする考えはありませんでした。最もよく知られたバロック天然真珠は、メキシコ湾から見つかってフェリペ二世に献上され、その後も様々な君主に受け継がれて、やがてペレグリナ(西 la Peregrina さすらい女、巡礼女)と呼ばれるようになった真珠でしょう。ラ・ペレグリナは 2011年 12月にサザビーズで競売にかけられ、およそ九億二千三百万円で落札されました。本品のようなサイズのバロック・パールが普通の人の手に入るようになったのは真珠養殖のおかげですが、同じ物が存在しない一点ものの魅力は、天然真珠の時代から変わっていません。





  本品は直径 25ミリメートル、厚さ 8ミリメートルと大きなサイズですが、真珠は他の宝石よりも比重が小さいので、ペンダントの重量は五百円硬貨とほぼ同じ七グラムに収まっています。金具はスターリング・シルバー製(925 silver)を使いました。銀の純度は撥環(ばちかん)の裏側に刻印されています。





 宝石の光沢は撮影が難しいですが、とりわけ本品の厚い真珠層は非常に強い光沢を有し、写真では綺麗に再現できません。実物が放つ七色の真珠光沢は写真で見るよりもはるかに美しく、お買い上げいただいた方には必ずご満足いただけます。





ペンダント・トップの本体価格 54,000円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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