非常に繊細な銀線細工によるブレスレット。素材はスターリング・シルバー(純度 925/1000の銀)です。フランスにあったものですが、フランスの貴金属検質所のポワンソンは刻印されておらず、外国製と考えられます。アンティークというほど古くはなさそうで、ヴィンテージ品と呼ぶほうが相応しいと思いますが、完全な手作業で制作された繊細な美しさは、アンティーク・ファイン・ジュエリーに引けを取りません。
複雑なパターンの線を多用した透かし細工の金属製工芸品には、「網状の金属シートを利用して線細工に似せた製品」と、「針金を曲げて制作した真正の線細工」の二通りがあります。後者は一つひとつの細かい部品から手作りされるため、制作に非常な手間がかかります。それゆえ金属製の透かし細工には網状の金属シートが使われるのが普通です。しかしながら本品は太さが異なる太さの針金を用いた真正の線細工で、職人による完全な手作り品です。本品の制作は次のような工程で行われています。
1. 細い針金をねじってミル打ち状のパターンを作り出す。 2. ねじっていない針金を曲げて、大きい花弁と小さい花弁の外枠を作る。 3. 1.の針金を曲げたり、ぜんまい状に巻いたりして組み合わせながら、2.の枠内に順次鑞付け(ろうづけ 溶接)して、透かし細工による大小の花弁を作る。 4. 3.で作った大きい花弁五枚を互いに鑞付けして、大きな五弁の花を作る。花弁には本物の花と同様の反りを付ける。 5. 3.で作った小さい花弁五枚を互いに鑞付けして、小さな五弁の花を作る。花弁に角度を付けて立体性を強調する。 6. 4.で作った大きな花の上に 5.で作った小さな花を重ねて鑞付けし、二重の花にする。 7. 先端に銀の珠を付けた八本の銀線を束ねて、蕊(しべ)を作る。 8. 6.で作った二重の花の中心に、7.で作った蕊を直立させて鑞付けする。これで一輪の花が完成する。 9. それぞれの花に二か所ずつ、金具を通すための環を鑞付けする。 10. 9. で鑞付けした環にリンクを通す。ひとつひとつのリンクを鑞付けして閉じ、五輪の花を連ねる。五輪が連なったそれぞれの端に、十個の銀の環で作った金具を取り付ける。 11. 真ん中の花の裏側に、"925" と刻印した銀の円盤を鑞付けする。 |
本品の制作地は不明ですが、イタリアやフランスの銀線細工と同じ技法で作られています。イタリアやフランスにおいて、ジュエリーのモティーフとなる五弁の花といえば、何よりもまず薔薇を思い浮かべます。本品の花は植物種を特定できるほど写実的な作風ではありません。しかしながらヨーロッパの伝統的モティーフである薔薇は、本品においても意匠の基体となっています。
ヨーロッパ文化において、薔薇は「愛」と「無垢」の象徴です。すなわちアフロディーテーの花である薔薇は、愛を象徴します。棘の無いロサ・ミスティカ(ラテン語で「神秘の薔薇」)は、無原罪の御宿り(聖母マリア)を象徴します。
ブレスレットの全長はおよそ十八センチメートルです。重量は十三グラム強で、五百円硬貨二枚分に相当します。ブレスレットの両端は環になっていて、リボンで括れるようになっています。金属製の留め金を希望される場合は、ブレスレット本体と同じスターリング・シルバー製の留め金を無料でご用意いたします。
ブレスレットと同意匠、同素材の指輪がありますので、ご希望の方には無料でお付けいたします。この指輪もブレスレットと同様に繊細な銀線細工で作られており、花弁の一枚に補修がありますが、商品写真でご覧いただける通り、まったく目立ちません。指輪のサイズは調整が可能で、どの指にも嵌めることができます。
花の直径はおよそ十八ミリメートルです。ブレスレットの銀線細工に破損等の問題はありません。指輪は補修されていますが、アンティークが好きな方であれば気にならないはずです。指輪は差し上げます。
上の写真で中央に写っているのは、ロック・クリスタル(無色の天然水晶)です。撮影時に指輪の台として使ったものですが、ご希望であればこちらもお付けいたします。お気軽にお申し付けください。