バルト海産の美品 艶やかな光沢の琥珀ネックレス 透明なコニャック色のバロック・アンバー 全長 約 45 cm


重量 21.4 g


留め金を含む全長 約 45センチメートル



 バルト海産琥珀(こはく、アンバー)のネックレス。本品はフランスにあったヴィンテージ品ですが、もともと付いていた簡単な金具を高級感のある銀製の留め金に取り換え、糸もワイヤに変更しました。使用したワイヤの直径は 0.36ミリメートルのステンレス・スティール製で、絹糸に通したのと同様のしなやかさを保ちつつ、たいへん丈夫に仕上がっています。





 本品の留め金は銀製ですが、金めっきを掛けたものを選びました。金色の留め金を選んだ理由のひとつは、温かみのある琥珀の色に合わせたからです。もう一つの理由は、二世紀の雄弁家ルキアノス(Λουκιανὸς ὁ Σαμοσατεύς)が、オグミオスについて伝える話を思い起こしたからです。

 オグミオス(Ὄγμιος)は雄弁術を司るケルトの神で、琥珀と金でできた鎖で聴衆の心を繋ぎ留めます。琥珀と金でできた鎖は、鉄の鎖とは違って、簡単に引きちぎることができます。オグミオスが使う琥珀と金の鎖は、人々を強制的に従わせるのではなく、人々の心を惹きつける言葉の力を象徴します。本品の留め金を交換するときにこの話を思い出し、琥珀が人の心に愛を芽生えさせて、このネックレスを身に着ける人の方へと引き寄せてくれるようにとの願いを込めて、金色の金具を選びました。





 本品の留め金は薔薇を模(かたど)ります。薔薇の留め金を選んだのにも二つの理由があって、一つには、薔薇は愛の象徴であるからです。


 電気は「エレクトリシティ」(英 electricity)、「エレクトリシテ」(仏 électricité)といいますが、これらの近代語は古典ギリシア語「エーレクトロン」(希 ἤλεκτρον 琥珀)に由来します。自然哲学の祖ミレートスのタレース(Θαλῆς ὁ Μιλήσιος, c. 625 - 547 B.C.)は、或る種の黄色い石、すなわち琥珀を摩擦すると、微細な塵を引き付けることに気付きました。タレースはこれが静電気の働きに拠ることを知りませんでしたが、琥珀が物を引き付ける性質に関して、タレースの既述は最初の観察記録となりました。

 物質の表面から電子を放出させるのに必要なエネルギー量は、物質の種類によって異なります。皮革や毛髪は電子を放出しやすく、琥珀は電子を放出しにくい物質です。電子を放出しやすい物質と放出しにくい物質をこすり合わせると、前者はプラス、後者はマイナスに帯電して、電子が前者から後者に移動します。電子が二つの物質の間を移動すると、互いに引き付け合う電気的な力(クーロン力)が物質間に生じます。これが摩擦によって静電気が起こり、物が引きつけ合う理由です。

 クーロン力の数学的記述は十八世紀の物理学者クーロン(Charles-Augustin de Coulomb, 1736 - 1806)の功績であり、タレース以来の歴史を考えればごく最近のことに過ぎません。古代や中世にはこのような電磁気学的説明は知られず、琥珀は物を惹きつける神秘的能力ゆえに愛の石と考えられて、その粉末は媚薬にも使われました。





 最大のギリシア哲学者のひとりアリストテレスは、愛こそが物を動かす原動力であると考えました。或る人を愛する人は、命じられたわけでなくても、愛する人のために動きます。愛される人は、指一本動かすことなく、愛する人を動かします。「愛が物を動かす」というアリストテレスの説は、このように身近な事柄からも裏付けられます。

 それゆえ他の物を動かす琥珀はまさに「愛される石」であり、「愛の原動力の石」であるといえます。このような文化史的背景に鑑みて、「愛の石」である琥珀のネックレスの留め金には、薔薇のモティーフがふさわしいと考えました。なぜならば薔薇はアフロディーテ―の花であり、古代ギリシア以来、愛を象徴するからです。


 薔薇を選んだもうひとつの理由は、本品がもともとポーランドで作られたはずだからです。当店で扱うアンティーク品はフランスのものが多いのですが、本品もフランスのもので、フランスにある琥珀ジュエリーは大抵の場合ポーランドで作られています。

 ポーランドの守護聖人は聖母マリアです。聖母マリアは無原罪の御宿りであるゆえに、の無いロサ・ミスティカ(神秘の薔薇)に譬えられます。すなわち薔薇はアフロディーテーの花であるだけでなく、聖母マリアの花でもあるのです。それゆえポーランド製の琥珀ネックレスには、薔薇のモティーフがよく似合います。





 本品は留め金を含む長さが約四十五センチメートルで、使い易いサイズです。琥珀には合成樹脂による類似石、化石化を完了していないコーパル、カットや穿孔の際に発生する琥珀屑を高温高圧で固めた再生琥珀など、様々な類似品がありますが、本品は真正のナチュラル・アンバーです。写真では分かりにくいですが、本品の実物を見ていただければビーズのところどころに原石の名残があって、良質のナチュラル・アンバーであることがお分かりいただけます。





本体価格 15,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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