「われら再び来たらん」 トリコロールのエマイユによるブロンズ製ブローチ ヴィシー政権期


25.5 x 19.0 mm

フランス  1940年代前半



 空を舞い飛ぶ愛らしいツバメを、トリコロールのエマイユ(七宝)で表した美しいブローチ。トリコロール (tricolore) というフランス語の原意は「三つの色」ですが、フランスのシンボルである青、白、赤の組み合わせを指して、特にこのように呼びます。

 このブローチはブロンズでできており、エマイユは不透明ガラスによるシャンルヴェです。制作時期は1940年代前半、すなわちヴィシー政権期です。自由に大空を舞うツバメたちは、西に向かっているように見えます。ブローチの下部に、「われら再び来たらん」(Nous reviendrons.) とフランス語で書かれています。





 第二次世界大戦初期の1940年6月22日、フランスはドイツに対して実質的に降伏し、ドイツ軍による占領を受け容れました。崩壊したフランス共和国(レピュブリーク・フランセーズ République française)に替わって「フランス国」(エタ・フランセ État français)が樹立されましたが、「フランス国」を率いるヴィシー政権はドイツの傀儡(かいらい 操り人形)政権でした。

 これに対して祖国を脱出したシャルル・ド・ゴール将軍 (Charles André Joseph Pierre-Marie de Gaulle, 1890 - 1970) は、ロンドンに亡命政府「自由フランス」(la France libre) を結成していました。フランス国内の愛国者たちはジャン・ムーラン (Jean Moulin, 1899 - 1943) らの元でド・ゴールと連携し、ドイツが撤退するまでレジスタンス(対独抵抗運動)闘争を続けることになります。


 本品はこのような時代に製作されたブローチです。青、白、赤によるフランス国旗の直接の起源は、共和主義者であった画家ダヴィド (Jacques-Louis David, 1748 - 1825) が、国民公会の求めに応じて 1794年に考案したもので、ヴィシー政権時代の「フランス国」国旗もこの三色を使っていましたが、西方、すなわちロンドンに向いているように見えるツバメの向きと、「われら再び来たらん」という言葉は意味深長です。一見して無邪気なアクセサリーに見える小さなブローチですが、当時のフランス人にとって、本品を身に着けることは、ささやかなレジスタンスであったのでしょう。

 本品は70年も前に作られたものですが、たいへん良好な保存状態で、特筆すべき問題はありません。商品写真は実物を30倍以上の面積に拡大していますので小さな疵(きず)などがよく見えますが、実物を肉眼で見ると充分に綺麗です。裏側の針の機能にも問題はまったく無く、充分に実用可能です。





9,500円 販売終了 SOLD

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