ジャン=バティスト・エミール・ドロプシ作 「マロニエの木陰にて」 美術品水準のメダイユによる美麗ブローチ 直径 28.0 mm


メダイユの直径 28.0 mm

 フランス  19世紀末から20世紀初頭



 典雅な女性の半身像を取り巻くように、小鳥とマロニエの木を配した美麗なブローチ。五百円硬貨よりもひと回り大きなメダイユを、ブロンズあるいは真鍮の枠に留めています。





 典雅な衣をまとった女性は、肩のあたりに右手を挙げています。女性を慕うように飛んできた小鳥が、いままさに女性の右手に留まろうとしています。小鳥を愛しげに見守る女性のまなざしには、優しく包み込むような愛が籠められています。

 背景に彫られた葉の形から、女性がマロニエ(marronnier 和名 トチノキ)の木蔭にいることがわかります。フランスでもわが国でも、マロニエは校庭によく植えられます。堂々たる巨木に育ち、実が食用ともなるマロニエは、子供を見守り恵みを与える守護の象徴です。本品の浮き彫りにおいて、小鳥に優しいまなざしを注ぐ女性は、マロニエと重なるように彫られて、子供を守る「マテルニテ」(maternité フランス語で「母性」)を象徴しています。

 フランス語の「マテルニテ」には「聖母子像」という意味もありますが、この作品においても、女性と小鳥の組み合わせを、聖母子像の変形と捉えることも可能です。すなわちこの小鳥がゴシキヒワだとすれば、女性と小鳥の組み合わせは聖母子像に他なりません。またこの小鳥が「小さき者」の象徴(「マタイによる福音書」6章26~30節)であるとすれば、小鳥を慈しむ女性像は「マドンナ・デッラ・ミゼリコルディア」(Madonna della misericordia イタリア語で「憐れみの聖母」)の変形に他なりません。





 女性の左肩の後ろ、メダイユの縁に近いところに、メダイユ彫刻家ジャン=バティスト・エミール・ドロプシ (Jean-Baptiste Émile Dropsy, 1848 - 1923) のサイン (E. Dropsy) が刻まれています。ジャン=バティスト・エミール・ドロプシは 1880年代から1920年代のフランス・メダイユ彫刻界を代表する彫刻家のひとりで、数々の美しい聖母像をはじめ、カトリック信仰をテーマとした作品群が特によく知られています。





 本品の制作年代は、19世紀末頃のベル・エポック期です。典型的なアール・ヌーヴォー様式ではありませんが、浮世絵を思い起こさせる東洋的でエキゾチックな女性の顔立ちに、ジャポニスムの影響を読み取ることができます。




(上・参考画像) 「ティトル・フィクス」ブランドのビジュ(ジュエリーとアクセサリー)。1907年の広告。

 「ティトル・フィクス」(TITRE FIXE) または「フィクス」(FIX) はサヴァール・エ・フィス社 (Savard et fils) の商標です。同社を創業したジュエリー職人フランソワ・サヴァール (François Savard) は、1829年、真鍮またはブロンズの表面に金を張った素材(「オール・ドゥブレ」 or doublé あるいは「プラケ・ドール・ラミネ」plaqué d'or laminé)を発明しました。フランソワ・サヴァールの発明は息子オーギュスト (Auguste Savard) に受け継がれ、1893年以降、「ティトル・フィクス」(TITRE FIXE) または「フィクス」の商標で全盛期を迎えました。「ティトル・フィクス」または「フィクス」は金が厚いために磨滅しにくく、変色も起こらない高品質のジュエリーで、19世紀半ばから20世紀前半のフランスにおいて人気を集めました。





 本品は百年以上前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、良好な保存状態で、特筆すべき瑕疵(かし 欠点)はありません。針はスプリング式ではありませんが、着用中に外れる心配は無く、充分に実用可能です。高名なメダイユ彫刻家による稀少な作品であり、手放しがたい逸品です。





25,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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