羊皮紙とレイド・ペーパー 近世初期までの紙と書物

《中世ヨーロッパからルネサンス期まで》

 中国で発明された植物性の紙が西洋に伝わったのはルネサンス期です。中世ヨーロッパでは羊皮紙が使われていました。羊皮紙とは、羊の皮を軽石で削って、紙のように薄くしたものです。
 中世ヨーロッパにおいては、羊皮紙が高価であったことに加えて識字率も非常に低かったため、一般の人が書物を読むということがありませんでした。ルネサンス期になってグーテンベルクが活版印刷を発明する以前は、したがって、書物はすべて手で書き写されていました。書物の需要が少なかったので、この方法でも対応できたのです。

 当時、書物を所有したのは教会と王侯貴族で、専門の職人によって数々の非常に美しい作品が生み出されました。特に北フランスからネーデルランドにかけての地域では、有力な貴族が競って美しい時祷書(祈祷書)を作らせたことで知られています。


《ルネサンス期から近世初期》

 初期の植物性の紙は「レイド・ペーパー」(laid paper)と呼ばれ、光にかざすと、手漉きの和紙と同様にスノコの痕を観察することができます。「ニュルンベルク年代記」(1492年)等のインキュナブラ(INCUNABULA 初期の印刷物)はすべてレイド・ペーパーに刷られています。

 レイド・ペーパーは1800年代以降には使われなくなりますので、ある印刷物にレイド・ペーパーが使われていれば、およそ200年あるいはそれ以上昔のものであると判断することができます。
 さらに専門的に、紙が製造された年代と場所、製造業者を特定するには、ウォーター・マークと呼ばれる透かしを手がかりにします。


 レイド・ペーパーに見られるウォーターマーク (F. J. ベルトゥーフ 「少年絵本」第2巻より 《四足獣の部35 図版02/42》 1795年 ワイマール 




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