ジェイムズ・カーター James Carter, 1798 - 1855




 ジェイムズ・カーター(James Carter, 1798 - 1855)はロンドン郊外のショアディッチ(Shoreditch)に生まれました。建築物を専門のテーマとするエングレーヴァー、エドマンド・ティレル(Edmund Tyrrel / Turrell, fl. 1800, + 1835)に弟子入りし、修行中であった 1819年に優れたデッサンを評価され、王立美術協会(the Royal Society for the Encouragement of Arts, Manufactures and Commerce, RSA)から銀メダルを受賞しています。カーターがエドマンド・ティレルに弟子入りしたのは、ティレルが草創期のスティール・エングレーヴィングにおいて最も活躍していた時期であり、この技法をいち早く自分のものにするうえで最良の時代でした。またティレルの下で学んだ建築物のエングレーヴィングは、カーターにとって後々大きく役立ちました。




(上) リチャード・ウィルスン作 「ヴィッラ・アドリアーナ」 255 x 178 mm スティール・エングレーヴィング 1850年 当店の商品です。


 十九世紀半ばに新生した「ジ・アート・ジャーナル」誌は、同誌の主要エングレーヴァーのひとりとして、ジェイムズ・カーターを抜擢しました。ジェイムズ・カーターが同誌に寄せた最初の作品は、フレデリック・グドール(Frederick Goodall, RA, 1822 - 1904)の「村祭り」("The Village Festival")で、1848年に版の制作を始め、1850年に版画が完成しました。エングレーヴィングによる「村祭り」は最高水準の作品として激賞されましたが、1853年に同誌で発表したウォード(Edward Matthew Ward, RA, 1816 - 1879)の「南海の泡」("The South-Sea Bubble")は、前作をも凌ぐ傑作と称えられました。ジェイムズ・カーターは「ジ・アート・ジャーナル」のために合計四点のエングレーヴィングを制作しており、あとの二点は 1850年に発表した「ヴィッラ・アドリアーナ」("Hadrian's Villa" after Richard Wilson, R.A)と、1853年に発表した「秘密の釣り場所」("Angler's Nook" after Patrick Nasmyth)です。

 ジェイムズ・カーターは「ジ・アート・ジャーナル」の仕事は亡くなる年まで続けたほか、各地の美しい風景を収録して人気があった1830~40年代の版画集「ザ・ランドスケイプ・アニュアル」「ピクチャレスク・アニュアル」にも作品を提供しています。また風景画だけではなく、肖像画にも優れた作品を残しています。



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 リチャード・ウィルスン作 「ヴィッラ・アドリアーナ」 ジェイムズ・カーターによるスティール・エングレーヴィング 1850年




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