フレデリック・オーガスタス・ヒース Frederick Augustus Heath, 1810 - 1878



(上) "There sleeps Titania"  after Robert Huskisson, an engraving by Frederick Augustus Heath, 1848


 フレデリック・オーガスタス・ヒース(Frederick Augustus Heath, 1810 - 1878)は、人物画と歴史画を得意とするエングレーヴァーです。

 フレデリック・オーガスタス・ヒースはチャールズ・シオドシアス・ヒース(Charles Theodosius Heath, 1785 - 1848)の息子であり、仕事を始めて数年間は父のアトリエで訓練を受けたと考えられます。一人前のエングレーヴァーとして独立後、最初の仕事の一つが、1840年5月1日に発行された世界最初の郵便切手、「ザ・ペニー・ブラック」(the penny black)の制作でした。「ザ・ペニー・ブラック」の制作後、ヒースはトーマス・ウィンズ(Thomas Uwins, 1782 - 1857)の原画に基づく「ナポリの結婚式」(the Neapolitan Wedding)を製版しています。これは「ジ・アート・ユニオン・オヴ・ロンドン」(The Art Union of London 註1)のために制作された作品で、1845年に製版が始まり、1847年末頃に完成しました。

 1847年の王立アカデミー夏期展覧会で、それまで無名であった画家ロバート・ハスキスン(Robert Huskisson, 1820 - 1861)が、シェイクスピアの「ア・ミッドサマー・ナイツ・ドリーム」(夏至の夜の夢)に取材した板絵「ゼア・スリープス・タイタニア」(英 "There sleeps Titania" 「そこにタイタニアが眠っている」)を発表し、高い評価を得ました。ヒースは美術誌「ジ・アート・ユニオン」("The Art Union" 「ジ・アート・ジャーナル」の前身)のために、この作品をエングレーヴィングにし、翌 1848年の同誌上で発表しています。なおヒースが製版したエングレーヴィング「ゼア・スリープス・タイタニア」は、1872年のインペリアル版「シェイクスピア作品集」("The Works of Shapespere (sic.)", Imperial Edition, 1872)にも使用されました。

 フレデリック・オーガスタス・ヒースは 1863年から 1874年まで、王立アカデミー夏期展覧会で作品を発表しました。また 1864年から 1879年までの十六年間に、「ジ・アート・ジャーナル」("The Art Journal"誌上において、次の六点を含む十三点の作品を発表しています。

     1864年    エドワード・マシュー・ウォード(Edward Matthew Ward RA, 1816 - 1879)の原画に基づく「アリス・リール」("Alice Lisle"
     1867年    エドワード・マシュー・ウォード(Edward Matthew Ward RA, 1816 - 1879)の原画に基づく「オラニエ公上陸の報を受けるジェイムズ二世」("James II receiving news of the landing of Prince of Orange"
     1868年    トーマス・ファエド(Thomas Faed RSA, 1826 - 1900)の原画に基づく「ゴウイング・ホウム」("Going home"
     1889年    ウィリアム・マルレディ(William Mulready RA, 1786 - 1863)の原画に基づく「結婚式のガウン選び」("Choosing the wedding gown"
     1877年    ジョージ・ダンロップ・レスリー(George Dunlop Leslie RA, 1835 - 1921)の原画に基づく「戦場からの知らせ」("News from the war"
     1879年    ポール・セニャック(Paul Seignac, 1826 - 1904)の原画に基づく「葡萄畑の女王さま」("Queen of the vineyard"

 十六年間に十三点という数からすると、一つの作品を一年余りで製版したことになり、ヒースの有能さと勤勉さがよくわかります。ポール・セニャックの原画に基づく「葡萄畑の女王さま」はヒースが制作した最後の作品で、かなり粗い仕上げです。この作品が発表された 1879年は、ヒースが亡くなった翌年に当たります。



註1 「ジ・アート・ユニオン・オヴ・ロンドン」(The Art Union of London)は 1837年から 1912年まで存続した組織で、美術愛好家の登録を募り、会員は年に一度、エングレーヴィングを受け取れる仕組みになっていました。



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