時祷書リーフ

feuillet d'un livre d'heures à l'usage d’Amiens


羊皮紙にインク、金箔  15世紀半ば

イタリア製素材の特注フレームに二重の緞子マットとゴールドのカラーマットを使用して額装済


額の概寸: 28×22 cm


アミアン司教区の様式による時祷書のリーフ。ルネサンス以前のものですので、印刷ではなくすべて手描きで製作されています。茶色のインクを使用してゴシック典礼書体で本文を書き記したうえに、3色のインクと金箔で美しいイルミネーション(彩飾)を施しています。

 時祷書とは平信徒のための祈祷書で、日々決まった時刻になすべき祈りを記しています。聖職者にとっての聖務日課書にあたります。14、15世紀のフランドルや北フランスでは、富裕な王侯貴族の間で豪華な時祷書が流行し、史上名高い《ベリー公の豪華時祷書》のような数々の美しい作品群が制作されました。

 羊皮紙作りから始まって、筆写、描画、彩色、箔打、製本の全てを手作業で行っていた中世のこと。このような時祷書は富の象徴でもあり、1冊の価格を現代の貨幣価値で表せば数千万円、高価な品では1億円を超えるようなものもありました。


 本品はカトリーヌ・ド・メディチ(1519-1589年)が所有していた時祷書から取られたリーフで、罪を悔い改めるダヴィデ王の賛歌、旧約聖書の詩篇第37篇(現行の聖書では第38篇)が記されています。

 カトリーヌはフィレンツェの名門メディチ家の出身で、ヴァロア・アングレーム家のフランス国王アンリ2世に嫁しました。いずれも短命であった3人の国王(フランソワ2世、シャルル9世、アンリ3世)の母后、摂政として、約30年にわたって宗教改革期のフランスに実権をふるいました。カトリーヌの死後、女婿であるブルボン家のアンリ4世が国王に即位し、ナントの勅令を公布してユグノー戦争を終わらせたことにより、宗教改革後のフランスは統一国家への道を歩み始めます。

 リーフの内容は次の通りです。言語はラテン語で、日本語訳は筆者(広川)によります。



PSALMUS XXXVII


Non est sanitas in carne mea a facie irae tuae.
Non est pax ossibus meisa facie peccatorum meorum.

Quoniam iniquitates meae supergressae sunt caput meum
sicut onus grave gravatae sunt super me.

Putruerunt, et corruptae sunt cicatrices meae
a facie insipientiae meae.

Miser factus sum et curvatus sum usque in finem,
tota die contristatus ingrediebar.

Quoniam lumbi mei impleti sunt illusionibus
et non est sanitas in carne mea.



詩篇 第37篇


我が肉に健やかなるところ無し。汝の憤り給ひたるゆへに。

我が骨に安らぎ無し。重ねたる罪ゆへに。

我が重ねたる科は頭を越へ、重き荷が如くに我がうへに積もりて重し。

我が傷は膿みたり。愚かなる行なひゆへに。

我、惨めなるさまにて身を屈むること深く、絶へず嘆きつつ歩むなり。

我が腰けがれに覆はれ、我が肉には健やかなるところの無ければ。




販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




ルネサンス期以前の写本 商品種別表示インデックスに戻る

中世と近世の美術工芸品 一覧表示インデックスに戻る


美術工芸品の商品種別表示インデックスに移動する



アンティークアナスタシア ウェブサイトのトップページに移動する




Ἀναστασία ἡ Οὐτοπία τῶν αἰλούρων ANASTASIA KOBENSIS, ANTIQUARUM RERUM LOCUS NON INVENIENDUS