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ダニエル=デュピュイの遺作 「1900年 モネ・ド・パリ」 アール・ヌーヴォーのブロンズ製メダイユ


直径 50.4 mm  厚さ 最大 4.5 mm  重量 59.7 g

フランス  1899年



 19世紀最後の年であり、19世紀と20世紀、二つの世紀が交差する年でもある西暦1900年を記念して制作されたアール・ヌーヴォーの美麗メダイユ。19世紀後半のフランスに活躍し、メダイユの黄金時代を築いた彫刻家のひとり、ダニエル=デュピュイ (Jean-Baptiste Daniel-Dupuis, 1849 - 1899) の遺作です。

 ダニエル=デュピュイは、多分野に才能を発揮したメダイユ彫刻家で、フランス共和国からはコインや紙幣の製作を依頼され、またさまざまな公式メダイユの制作にも携わりました。本品もそのような作品の一つで、1900年の節目を迎えるにあたり、パリ造幣局から発行された作品です。





 メダイユの表(おもて)面には、アール・ヌーヴォーの典雅な女性像が浮き彫りにされています。女性は雲に乗り、大きな書物の表紙に "1900" の文字を書いています。女性の傍らには幼い子供がいて、"1900" の文字を書き込む女性を見つめています。





 女性が表紙に "1900" の文字を書き込んでいる大きな書物は、いままさに始まろうとしている新しい百年紀を象徴しています。

 普仏戦争(1870年)敗戦後のフランスでは、カトリック信仰が復興する一方で、対独強硬派ブーランジェ将軍がクーデター未遂に到るほどに力を得たり(1888年)、ドレフュス事件(1894年)をきっかけに軍部と反ユダヤ主義者の勢力が拡大し、ドレフュスの無実が明白になると共和派が勢力を盛り返すなど、政治的に不安定な状況が続きました。普仏戦争から1890年代半ば頃までのフランスは、このように人心の安定を欠き、明るい時代ではありませんでした。

 1900年の第五回パリ万博からしばらくの間、フランスでは「ベル・エポック」(La Belle Époque フランス語で「美しき時代」)と呼ばれる繁栄の時代が続きますが、1914年には第一次世界大戦が勃発し、フランス中に戦死者、戦災死者、戦争寡婦、戦争孤児が溢れることになります。このメダイユにおいて、新しい百年紀を象徴する書物と、その傍らでやはり新しい百年紀を象徴する幼子に込められたフランス共和国の希望と願いは、その後の歴史を知る我々の胸を打ちます。

 メダイユの右下に、ダニエル=デュピュイの署名 (DANIEL-DUPUIS) が刻まれています。






 メダイユの裏面には、新しい百年紀を象徴する少年が、メダイユやコインの打刻に使うスクリュー・プレスに凭(もた)れ、19世紀から受け継いだ松明(たいまつ)を高々と掲げています。少年は背中に翼を生やし、左手にメダイユまたは貨幣を持っています。周囲には貴金属の延べ板や天秤、ビュラン(彫刻刀)など、造幣局で使用する数々の道具が配されています。

 背中に翼のあるこの少年は、メルクリウス (Mercurius) です。メルクリウス(マーキュリー)は商業、交易を司る守護神として、キリスト教以前のガリアで盛んに崇拝されました。若々しい少年神メルクリウスの姿で表された新百年紀は、フランス経済の発展と国家の繁栄、明るい未来を高らかに告げ知らせています。





 メダイユ彫刻は絵画と違って単色であり、表面の凹凸の差も1ミリメートルの数分の一に過ぎません。それにもかかわらず、卓越した芸術的感覚と職人的技量を持つダニエル=デュピュイは、表(おもて)面の女性の衣や雲は言うに及ばず、裏面のメルクリウスの肌と翼の羽根、松明から立ち昇る炎と煙に至るまで、あたかも眼前に実在するかのように再現します。このような作品を実際に作ってしまう彫刻家の天才に、我々はただ驚嘆するしかありません。

 メダイユの下部左寄りに、彫刻家の署名 (DANIEL-DUPUIS) が刻まれています。



 パリでは1900年の第五回万国博覧会を機に国際貨幣会議 (Congrès Internationalde Numismatique) が開かれました。ダニエル=デュピュイはこの会議をテーマとした四角形のメダイユを、本品と同時期の1899年に製作しています。ところが、ダニエル=デュピュイは、1899年11月、精神を病んだ自身の妻によって射殺されてしまい、その時点で制作中であったメダイユは、友人であったアルフォンス=ウジェーヌ・ルシュヴレル (Alphonse-Eugène Lechevrel, 1850 - 1924) の手で完成されることになります。国際貨幣会議をテーマとした上述の四角いメダイユも、ダニエル=デュピュイによって一応の完成を見ていましたが、鋳造前の最後の仕上げはルシュヴレルが行いました。私は本品が制作・鋳造された際の詳しい事情を知りませんが、本品の仕上げもルシュヴレルが行ったのかもしれません。

 このメダイユは19世紀末のフランスで鋳造されたアンティーク美術品ですが、細部まで良く保存され、真正のアンティーク品ならではの重厚なパティナ(古色)が、全体を均一に被っています。商品写真は実物の面積を数十倍に拡大しており、小さな疵(きず)を判別できますが、実物を肉眼で見ると充分に美しく、特筆すべき瑕疵は一切ありません。

 ご希望により、別料金にてメダイユを額装いたします。額装料金は使用する額によって異なります。





メダイユの価格 35,000円 (税込・額装別)

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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