パリ中心部サン=ドニ通り (rue St.-Denis) 32番地の菓子店「シャ・ノワール」(Chat Noir 黒猫屋)の小さな絵。質が良く厚みのある中性紙に刷られています。
表(おもて)面には、ニワトリの格好をした可愛らしい少女の前に、大きなウフ・ド・パーク(イースター・エッグ 復活祭の卵)があり、ドラジェ(アーモンドを砂糖で包んだもの)らしきお菓子があふれ出ています。少女の頭上には、次の言葉が書かれています。
Au Chat Noir, Spécialité pour Baptême, 32, rue St. Denis, Paris 洗礼祝いのお菓子は《シャ・ノワール》で パリ、サン=ドニ通り32番地
画面下の縁にはパリ、ベランジェ通り5番地にあったリトグラフの版元、J. ミノ (J. Minot, Cie) の名前が書かれています。この版元の名前が
"Lith. J. Minot & Cie, 5, rue Beranger, Paris" と表記されている絵は、1885年から
1889年の間に刷られたものです。画面中央下にあるマーク "VM" は、ヴァレ・ミノ(J. ミノ)のモノグラムです。
裏面は文字広告になっており、洗礼を受ける幼児に名付け親から贈られる可愛らしい瓶入りのドラジェをはじめ、贈答用のキャンディーやマロン・グラッセを扱っていることがわかります。サン=ドニ通り32番地の建物外壁には、現在でも「ドラジェはシャ・ノワールで」("Dragees
au Chat Noir") の文字を見ることができます。
本品は130年近く前のパリで製作されたものですが、それほどまでに古い物とは思えないほど良好な保存状態です。