フリードリヒ・マックス・トラウツ 「鞆港」("Tomo, Hafen an der Inlandsee")、「瀬戸内海」("Inlandsee bei Tomo") 1930年のヘリオグラヴュール

Friedrich Max Trautz, "Japan, Korea und Formosa : Landschaft. Baukunst. Volksleben", Atlantis-Verlag, Berlin, 1930


「鞆港」("Tomo, Hafen an der Inlandsee") の画面サイズ: 21.5 x 16.5 cm

「瀬戸内海」("Inlandsee bei Tomo") の画面サイズ: 21.5 x 15.5 cm

リーフ全体のサイズ: 27 x 22.5 cm



 1920年代末に撮影されたと思われる鞆(とも)港、及び鞆近在の農村風景。このリーフは1930年にベルリンで出版された写真集、「日本、朝鮮、台湾 風景、建築、民俗」("Japan, Korea und Formosa : Landschaft. Baukunst. Volksleben")の一葉で、質が良い中性紙の両面に、ヘリオグラヴュール(die Heliogravüre 高品位のグラビア)で刷られています。ドイツで刷られたものですが、作品の下部中央に大きく日本語の表題を書き、左右に小さな文字でドイツ語、フランス語、英語、イタリア語を添えています。





 鞆港を含む鞆の浦は瀬戸内海にあり、広島県福山市に属します。作品「鞆港」(ドイツ語の表題は"Tomo, Hafen an der Inlandsee" 「瀬戸内海の港、鞆」)には、「打瀬船」(うたせぶね)で賑わう港の風景が写っています。帆走する船の力で底引網(そこびきあみ)を曳く漁法を「打瀬網(うたせあみ)漁」といいますが、打瀬船はこの打瀬網漁に使われる和船で、前世紀中頃まで日本各地で見ることができました。





 作品「瀬戸内海」(ドイツ語の表題は"Inlandsee bei Tomo" 「鞆付近の瀬戸内海」)には、海に臨む丘の斜面で畑仕事をする夫婦が前景に、海に浮かぶ数隻の和船が遠景に、それぞれ写っています。季節は春先でしょうか。明るい日差しが海面に反射して、きらきらと輝いています。


 写真の撮影者は高名な日本学者フリードリヒ・マックス・トラウツ博士 (Dr. Friedrich Max Trautz, 1877 - 1952) です。トラウツ博士はベルリン日本研究所の初代所長を務めたあと、昭和9年(1934年)、京都にドイツ文化研究所 (Deutsche Kultur-Institut) が創設されると、初代所長に就任しました。ボン大学には博士が収集した日本関係の膨大な資料、トラウツ・コレクションが所蔵されています。

 なお京都のドイツ文化研究所は、現在の京都大学人文科学研究所の源流の一つです。左京区北白川東小倉町にある人文研別館は、昭和5年に建てられたスペイン風の建物で、住宅地の中に突然現れるその姿はまるで別世界のような美しさです。京都に残る昭和の名建築のひとつです。


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 本品はモノトーンのヘリオグラヴュール(die Heliogravüre)です。これは本来の意味のグラビア印刷で、非常に高精細、高品位の印刷技術です。私は強度の近視で、普通の人には見えない微細なものが裸眼でよく見えますが、本品の網点は肉眼で判別できません。


 80年以上前の紙製品にもかかわらず、本品の保存状態は極めて良好で、特筆すべき問題は何もありません。紙は良質の中性紙であり、酸性紙のような劣化は今後も起こりません。





9,500円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。別料金にて額装も承ります。




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