ターナーによるヨーロッパの風景画


 水彩画で有名なJ. M. W. ターナー (Joseph Mallord William Turner, R.A. 1775 - 1851) の作品は、数百点が版画となっています。

 当時イギリス中産階級の間ではランドスケイプ・アニュアルズと呼ばれる豪華な旅行書が流行していましたが、ターナー作品の版画を掲載した美しい本はとりわけ人気があり、旅行書に使われた版をさらに別の出版社が購入して新しい作品集を出すこともありました。このようにして出版された画集のひとつが1875年の ≪ザ・ターナー・ギャラリー≫ で、イギリス各地とドイツ、イタリアの風景、船の絵や肖像画など120点のエングレーヴィングが含まれています。


 

 ターナーの版画の収集に関しては、テート・ブリテンが有名です。


【連作 「フランスの河川」】

 「フランスの河川」は1833 - 35年に3巻に分けて刊行され、「ロワール逍遥」(Wandering by the Loire, 1833)1巻と、「セーヌ逍遥」(Wandering by the Seine, 1834 - 35)2巻に分かれます。これらの作品群は1821年から32年にかけて数回にわたってフランスを旅行した際のスケッチに基づいており、そのエングレーヴィングは円熟した50歳代のターナーの作風を遺憾なく発揮していると高く評価されてきました。 (Herrmann, Turner Prints, pp. 166-81, Warrel, Turner on the Loire, Rawlinson, cat. Nos. 432 - 92)

ヴィクトリア時代の代表的批評家であるラスキンも1865年7月10日付の手紙で「フランスの河川」シリーズをターナー版画のなかでも最高の作品群であるとたたえており、さらに1870年代末には「『セーヌ』に描かれた風景はターナーの最高傑作であり、芸術作品として最も質の良いものである。また『ロワール』の作品群には『セーヌ』の作品群の繊細さはないが、より雄大で重みを感じさせる。」と述べています。(Ruskin, Works, 13.449)

 ターナーの版画は、原画が美しいだけではなく、版の作者の卓越した技ゆえに世界中の美術品コレクターを魅了しています。以下はいずれも「フランスの河川」に属する作品ですが、ターナーの筆が描き出す風景の美を楽しむことができると同時に、ときに人間業とは思えないエングレーヴァーの技量に圧倒されます。


 ル・アーブル Havre 1834年




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