(上) 写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。
稀少品 ラファエロ・サンツィオ作 「椅子の聖母」 Ch. シューラーによる1875年のスティール・エングレーヴィング
Raffaello Sanzio, "Madonna della Sedia", 1875
原画の作者 ラファエロ・サンツィオ (Reffaello Sanzio, 1483 - 1520)
版の作者 Ch. シューラー (Ch. Schuler)
画面サイズ 直径 183 mm
イギリス 1875年
数々の美しい聖母像を描いたラファエロ(Reffaello Sanzio, 1483-1520)がその活動の後期に制作した盛期イタリアルネサンスの至宝、「椅子の聖母」(c.
1514-16 板に油彩、直径 71 cm、フィレンツェ、ピッティ美術館蔵)。ラファエロは三十七歳の誕生日に世を去った夭逝の画家ですが、この作品は亡くなる少し前、三十歳代前半に制作されています。
聖母と幼児イエスが向かい合うこの絵の構図では、聖母の頭から肩、腕にかけてのラインとイエスの肩から足先のラインが円形という板の形と完璧な調和を見せており、ラファエロの天才的な造形力が遺憾なく発揮されています。聖母子の右にいる幼児は洗礼者ヨハネで、らくだの毛衣を着て、キリスト受難の象徴である十字架を携えています。
(上) Madonna della Sedia (Madonna della Seggiola), 1514, oil on wood, diameter 71 cm, Galleria Palatina (Palazzo Pitti),
Florence
「椅子の聖母」はラファエロの数々の作品の中でも特に美しいもののひとつです。ドミニク・アングル(Jean Auguste Dominique
Ingres, 1780 - 1867)は「ラファエロとラ・フォルナリーナ」("Raphael et la Fornarina")を含む四点の作品に「椅子の聖母」を描き込んでいます。
(下) Dominque Ingres, Raphaël et la Fornarina, 1814, oil on canvas, 66 x 55 cm, Fogg Art Museum at Harvard University
また主にイギリスで活躍したドイツ出身の新古典主義の画家、ヨハン・ツォファニー(Johann Zoffany, Johannes Josephus Zauffely, 1773 - 1810)が描いたウフィツィ美術館の展示室の絵には、ラファエロの「ひわの聖母」("Madonna del Cardellino", 1505/06)、「砂漠の洗礼者ヨハネ」("St John the Baptist in the Wilderness", 1518)、「教皇レオ10世とふたりの枢機卿」("Ritratto di Leone X con i cardinali Giulio de' Medici e Luigi de' Rossi", 1518/19)と並んで、「椅子の聖母」が描き込まれています。
(下) Johann Zoffany, "The Tribuna of the Uffizi", 1772/78, oil, 123.5 x 155.0 cm, Royal Collection, Windsor Castle
いずれも長命であったレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロとは違って、ラファエロは短い生涯を燃やし尽くすように生きました。しかしあたかも神がそれぞれの天才に同じ量の仕事を与えられたかのように、ラファエロは結婚もせず、持てるすべての力を注いで人類の至宝ともいうべき数々の美しい絵画を生み出しています。ルネサンスの美術史家ヴァザーリは「この気高い芸術家が死んだとき絵画も死んだと言ってよい。彼が目を閉じたとき、絵画もまた盲いてしまったのだ」と書いています。
ヴァティカン宮殿「署名の間」をはじめ三つの≪ラファエロの部屋≫の装飾を見れば分かるように、ラファエロは豊かな教養を持った天才であって、ときに誤解されるように「思想性が無い画家」ではけっしてありません。しかしラファエロが思想性よりも純粋な美の追求を優先したことも事実で、あくまでも明るく美しい彼の絵には誰の心にも訴えかける魅力があります。
「椅子の聖母」を描いた頃にカスティリオーネ伯にあてた手紙の中で、ラファエロは「美しい女性を描くにはもっと多くの美女を見なければなりませんが、美女は常に不足しているので、私は心の中のイデアを使って描いています。」と語っています。
当時のイタリアではネオ・プラトニズムが流行していました。プラトンの哲学において美のイデアとは現世の美を超越した完全な美であり、カンヴァスの上には実現しようのないものですが、ラファエロの魂は美のイデアを想起して憧れ、それに少しでも近付こうとしているのです。
ときには思想性を捨象してまでも純粋な美をひたすら追い求める彼の芸術は、憂鬱なミケランジェロの作品と比べると一見明るく現世肯定的であるように見えますが、これをプラトニズムの立場から見直すならば、ラファエロはひたすらイデア界に憧れ、イデア界の影に過ぎないこの世界を捨てて、イデア界にのみ生きようとしているのだと解釈することもできるでしょう。
版画は未額装のシートとしてお買い上げいただくことも可能ですが、当店では無酸のマットと無酸の挿間紙を使用し、美術館水準の保存額装を提供しています。上の写真は額装例で、外寸
40 x 31センチメートルの木製額に、青色ヴェルヴェットを張った無酸マットを使用しています。この額装代金は
24,800円です。
上の写真ではマットを重ねて奥行を出しています。二重マットによる額装は、マット一枚分の代金が追加になります。上の写真はあくまでも例で、額の色やデザインを変更したり、マットを替えたりすることが可能です。無酸マットに張るヴェルヴェットは緑やベージュ等に変更できますし、ヴェルヴェットを張らずに白や各色の無酸カラー・マットを使うこともできます。
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