ロドヴィコ・マッツォリーニ 「聖フランチェスコのいる聖家族」 フレデリック・F・ウォーカーによる1830年代のスティール・エングレーヴィング

Lodovico Mazzolini, "La Sacra Famiglia con San Francesco" (The Holy Family with St. Francis) 1830s



原画の作者 ロドヴィコ・マッツォリーニ (Lodovico Mazzolini, 1480 - c. 1530)

版の作者 F. F. ウォーカー (Frederick F. Walker, 1805 - ?)


画面サイズ  縦 149 mm  横 107 mm


イギリス  1830年代



≪原画の作者について≫

 ロドヴィーコ・マッツォリーニ (Lodovico Mazzolini, 1480 - c. 1530) はルネサンス時代のフェラーラ(イタリア)の画家です。

 同じくフェラーラの画家、ドメニコ・パネッティ (Domenico Panetti, 1470 - 1513) の弟子であり、建築物や構造物を背景にした絵にフェラーラ派の特徴が表れています。当時の人々の生活を描いた風俗画が得意であったようで、ひとりの人物を大きく描いた絵よりも、このエングレーヴィングのように何人かの人物が登場する絵に本領を発揮しています。


≪この版画のテーマについて≫

 14・15世紀以来、ヨーロッパではイエス・キリストの家族(聖家族)が家庭の規範として仰がれ、様々な図像として親しまれるようになります。この絵もそのような作品のひとつであり、画面の右側にイエスとマリア、ヨセフが描かれています。イエスが生まれたときヨセフが何才であったかは聖書に記されていませんが、イエスの生物学的父でないことを強調するためか、ヨセフは年老いた姿で描かれることが多いです。若いマリアの右側にいる老人はヨセフです。

 聖家族を訪ねているのは洗礼者ヨハネの家族です。ヨハネの出生については「ルカによる福音書」に詳しく書かれています。その記述によると、ヨハネはイエスよりも数ヶ月先に、エルサレム神殿の老祭司ザカリアとその妻エリサベトとの間に生まれました。ザカリア、エリザベト夫妻は聖家族の親類です。ヨハネは成人して「洗礼者ヨハネ」となり、メシア(救世主、キリスト)の到来を人々に告げ知らせて、イエスに洗礼を授けます。当時のパレスチナの支配者ヘロデ王の悪行を激しく非難したために捕らえられ、美女サロメが舞の褒美としてヨハネの首を欲しがったために処刑されました。この絵で幼児ヨハネはキリストの象徴である子羊を抱いています。

 ヨハネの右側にいるのは、ずいぶん若く描かれていますが、ザカリアです。ザカリアの顔はアシジの聖フランチェスコ (St. Francesco d'Assisi, 1181-1226) をモデルに描かれています。フランチェスコは裕福な商家に生まれ、友人たちにも女性たちにも人気のある快活な青年でしたが、20歳のときに回心を経験し、全てを捨てて神に仕える生活を始めました。フランチェスコは最も人気のある聖人のひとりで、数え切れないほど多くの美術作品、文学作品のテーマになっています。ミッキー・ローク主演の映画(Francesco, 1989)にもなっているので、その生涯をご存知の方も多いのではないでしょうか。


 この絵の背景には凱旋門のような形の大理石の建造物が描かれ、フェラーラ画派らしい特徴が表れています。またいずれの人物の衣も暗い色であるために、キアロスクーロ(人工的な光を使った明暗法)がいっそう美しい効果を上げています。


参考 原画 Madonna and Child with Saints Elizabeth, Francis and the Infant John the Baptist 1520年代 板に油彩 53 x 39.4 cm ロンドン、ナショナル・ギャラリー蔵




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