シャルル=エドゥアール・ドロール作 「船に乗り込むマノン・レスコー」 驚くべき細密フォトグラヴュール パリ、グピルによる高品位アンティーク版画 1883年

The Embarkment of Manon Lescaut


原画の作者 シャルル=エドゥアール・ドロール (Charles-Edouard Delort, 1841 - 1895)


画面サイズ  縦 180 mm  横 263 mm



 驚くべき細密さで仕上げられたパリ、グピル社のフォトグラヴュール。アベ・プレヴォ(Antoine-François Prévost d'Exiles, L'Abbé 1697-1763)が実体験を反映させて書いた小説、「マノン・レスコー」 (Histoire du Chevalier des Grieux et de Manon Lescaut, 1731) に取材しています。原画は美しくアカデミックな作風で知られるフランスの画家、シャルル=エドゥアール・ドロール(Charles-Edouard Delort 1841-1895)の作品で、1875年サロン・ド・パリの入選作です。

 グピル社(Goupil & Cie)は十九世紀フランスの美術商として最大の規模を誇った美術関連会社で、フォトグラヴュールをはじめとする版画の工房「アトリエ・フォトグラフィーク」(Ateliers Photographiques) をパリ近郊に有し、パリ本店のほか、1840年にロンドン、1848年にニューヨークに支店を開設し、やがてベルリン、ウィーン、ハーグ、ブリュッセルにも進出しました。本品のフォトグラヴュールは、グピル社によります。

 本品のパブリシャーは、フィラデルフィア(ペンシルヴェニア州)のゲビー社(Gebbie & Co, Philadelphia)です。この版画は 1883年に同社が刊行した画集「フランス美術の名作」("The Masterpieces of French Art")に収められた作品です。





 アベ・プレヴォは非常に多作で、1969年に全集の刊行が始まりましたが、文学史上の彼の名声は「マノン・レスコー」ただ一作によってであると言っても過言ではありません。「マノン・レスコー」は十七世紀に発展を始めた新しい文学形式である小説の地位を不動にした作品であり、文学史上で最も重要な心理小説、風俗小説のひとつです。





 物語は青年シュヴァリエ・ド・グリューが美少女マノンに一目ぼれする場面に始まります。奔放なマノンは修道院に入ることになっていたのですが、ド・グリュ-の熱烈な誘いに動かされてパリに駆け落ちします。パリでの生活は貧しく、マノンはいったんド・グリューのもとを去って裕福な財務官ジェロントの愛妾になるのですが、愛のない生活に空しさを覚えるようになった頃にド・グリューと再会し、ふたたび愛し合うようになります。ジェロントはこれを知って怒りと嫉妬に燃え、姦通と窃盗の罪でマノンを告発し、マノンは恐ろしい未開の新大陸アメリカへの追放(流刑)を宣告されてしまいます。





 マノンがル・アーヴルからアメリカに向かう船に乗せられようとするまさにそのとき、マノンのもとに駆けつけたド・グリューは全てを捨ててマノンとともにアメリカ行きの船に乗り込みます。ふたりは愛し合うあまりに数々の罪を犯し、そのためにアメリカでも逃亡生活を強いられます。荒野をさまようド・グリューとマノン。やがて飢えと渇きに衰弱したマノンはド・グリュ-に永遠の愛を誓いながら彼の腕に抱かれて息絶え、ド・グリューは愛するマノンのなきがらをアメリカの大草原に埋葬します。


 この小説は当時たいへんな評判を呼び、デュマの小説「椿姫」では主人公マルグリット・ゴーチエの愛読書として登場します。またマスネとプッチーニはオペラにしていますし、映画「情婦マノン」(H.G.クルーゾー監督 1949年)、「恋のマノン」(J. オーレル監督 1967年)、バレエ「マノンの物語」(ケネス・マクミラン振付 1974年)の原作にもなっています。

 このフォトグラヴュールでは新世界に向かう船に乗り込もうとするド・グリューとマノンが描かれています。ふたりは小さなボートの上で堅く身を寄せ合い、もう二度と目にすることのない故国フランスをじっと見つめています。


《参考写真 シャルル=エドゥアール・ドロールの作品》



(上) Charles-Edouard Delort, A Toast to Love, oil on canvas, 100.3 x 73 cm, Private collection

(下) Charles-Edouard Delort, A Voluptuous Smoke, oil on canvas, Public collection




《額装について》



 版画は未額装のシートとしてお買い上げいただくことも可能ですが、当店では無酸のマットと無酸の挿間紙を使用し、美術館水準の保存額装を提供しています。上の写真は額装例で、外寸 40 x 31センチメートルの木製額に、青色ヴェルヴェットを張った無酸マットを使用しています。この額装の価格は 24,800円です。

 額の色やデザインを変更したり、マットを替えたりすることも可能です。無酸マットに張るヴェルヴェットは赤や青、ベージュ等に変更できますし、ヴェルヴェットを張らずに白や各色の無酸カラー・マットを使うこともできます。


 版画を初めて購入される方のために、版画が有する価値を解説いたしました。このリンクをクリックしてお読みください。





フォトグラヴュールの本体価格 36,800円 (額装別)

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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