アレクサンドル・カバネル作 「ポーシャ」 パリ、グピル社による高品位フォトグラヴュール 1883年

Portia - The Casket Scene from "the Merchant of Venice"


原画の作者 アレクサンドル・カバネル(Alexandre Cabanel, 1823 - 89)


画面サイズ  縦 172 mm   横 252 mm



 シェイクスピア作「ヴェニスの商人」("The Merchant of Venice")第三幕第二場、バッサーニオが箱を選ぶ場面。フランスの画家アレクサンドル・カバネル(Alexandre Cabanel, 1823 - 1889)による油彩画を、フォトグラヴュールにした作品です。

 本品のフォトグラヴュールは、グピル社によります。グピル社(Goupil & Cie)は十九世紀フランスの美術商として最大の規模を誇った美術関連会社で、フォトグラヴュールをはじめとする版画の工房「アトリエ・フォトグラフィーク」(Ateliers Photographiques) をパリ近郊に有し、パリ本店のほか、1840年にロンドン、1848年にニューヨークに支店を開設し、やがてベルリン、ウィーン、ハーグ、ブリュッセルにも進出しました。

 本品のパブリシャーは、フィラデルフィア(ペンシルヴェニア州)のゲビー社(Gebbie & Co, Philadelphia)です。この版画は 1883年に同社が刊行した画集「フランス美術の名作」("The Masterpieces of French Art")に収められた作品です。


《この版画のテーマについて》




 「ヴェニスの商人」第三幕第二場の一場面。バッサーニオがポーシャと結婚する権利を得るために、目の前に置かれた金の箱、銀の箱、鉛の箱から、ポーシャの肖像画が入った箱を当てようとしています。選んだ箱にポーシャの絵が入っていれば、バッサーニオはポーシャと結婚することができます。もしも入っていなければ、一生独身を貫かなければなりません。すでにモロッコの王子とアラゴンの王子がこのテストに落ちています。

 バッサーニオを愛するポーシャは、不安と苦悩に身をよじらせています。劇の後半では弁護士の扮装でアントニオの裁判に乗り込む気丈で聡明な彼女ですが、いまは不確かな運命に心をかき乱されて、気を失わんばかりに悩み苦しむか弱い乙女にしか過ぎません。不安に張り裂けそうな心臓に手を当て、顔を背け、目を開けることさえできずにいるポーシャ。箱を選ぶバッサーニオを、固唾を飲んで見守る人たち。画面右上には音楽隊も楽器を構えて結果を待っています。


《原画の作者について》

 アレクサンドル・カバネル(Alexandre Cabanel, 1823 - 1889)は南フランスのモンペリエに生まれ、幼い頃から優れた画才を発揮しました。1839年にパリに出てピコ(François-Edouard Picot, 1785 - 1868)に師事し、1843年のサロン展に「ゲッセマネの苦悩」を出展、また1845年には「ピラト邸のキリスト」でローマ賞を獲得しました。1852年のサロン展に出品した「モーセの死」には、イタリア滞在の影響が表れています。

 1855年にはレジオン・ド・ヌール勲章を受賞し、1865年、1867年、1878年の三回にわたってサロン展でラ・グランド・メダイユ・ドヌールを受賞します。アングル(Jean Auguste Dominique Ingres, 1780 - 1867)の 「オダリスクと奴隷」(1839年)に影響を受けているとも言われる 「ヴィーナスの誕生」(1862年)はナポレオン三世に、また大作「失楽園」(1867年)はルートヴィヒ二世に買い上げられました。


(下) Alexandre Cabanel, The Birth of Venus, a slightly smaller version painted for John Wolfe in 1875, Oil on canvas; 106 x 182.6 cm, The Metropolitan Museum of Art, New York




 カバネルは建築の内装にも手腕を発揮します。ルーヴル美術館内ラ・カビネ・デ・デサンの天井画「フローラの勝利」("Le Triomphe de Flore", 1873)はアングル派のしっかりとした輪郭線、フランス・ロココの天井画を思わせる画面構成と色彩が美しく調和した名作です。

 カバネルはすぐれた美術教育家として数百人に及ぶ弟子を育てました。ベル・エポックのフランス絵画はすべてカバネルの影響下にあると言っても過言ではありません。


《額装について》



 版画は未額装のシートとしてお買い上げいただくことも可能ですが、当店では無酸のマットと無酸の挿間紙を使用し、美術館水準の保存額装を提供しています。上の写真は額装例で、外寸 40 x 31センチメートルの木製額に、青色ヴェルヴェットを張った無酸マットを使用しています。この額装の価格は 24,800円です。

 額の色やデザインを変更したり、マットを替えたりすることも可能です。無酸マットに張るヴェルヴェットは赤や緑、ベージュ等に変更できますし、ヴェルヴェットを張らずに白や各色の無酸カラー・マットを使うこともできます。


 版画を初めて購入される方のために、版画が有する価値を解説いたしました。このリンクをクリックしてお読みください。


《参考写真 アレクサンドル・カバネルによる作品》

(下) Jean Auguste Dominique Ingres, Odalisque and Slave, 1839, Oil on canvas, 74.5 x 100 cm, Fogg Art Museum, Harvard University, Cambridge, Massachusetts




(下) Alexandre Cabanel, Phaedra, 1880, Oil on canvas; 194 x 286 cm, National Gallery of Australia, Canberra





フォトグラヴュールの本体価格 28,800円 (額装別)

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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