ウィリアム・エティ作 「ルーシー・アシュトン」 ヘンリー・ロビンソンによるスティール・エングレーヴィング 1833年

Lucy Ashton


原画の作者 ウィリアム・エティ (William Etty, R.A. 1787 - 1849)

版の作者 ヘンリー・ロビンソン (Henry Robinson, fl. 1827 - 1875)


画面サイズ  縦 120 mm  横 90 mm



≪原画の作者について≫

  ウィリアム・エティ(William Etty, R.A. 1787 - 1849)はヨークに生まれたイギリスの画家です。自然の風景や版画、石膏像などのデッサンを通して独学で練習を積んだあと、ウィルキー(Sir David Wilkie, 1785 - 1841)、ヘイドン(Benjamin Robert Haydon, 1786 - 1846)、コリンズ(William  Collins, 1788 - 1847)、コンスタブル(John Constable, 1776 - 1837)らとともに王立アカデミー美術学校に学び、さらに当時名声の絶頂にあった トーマス・ローレンス(Sir Thomas Lawrence, 1769 - 1830)の弟子となりました。ローレンスの影響はかなりあとの時代までエティの作品に認めることができます。

 エティは最初はなかなか評価されませんでしたが、1820年以降王立アカデミー展覧会で徐々に注目を集め、1824年に王立アカデミー準会員、1828年に正会員に選ばれました。エティの作品は卓越した色遣いが特徴です。


参考 サー・トーマス・ローレンスの作品

The Calmady Children, 1823. Oil on canvas. 78.4 x 76.5 cm. Bequest of Collis P. Huntington, 1900. Metropolitan Museum of Art, New York




参考 エティの他の作品

Nude Woman Asleep, c. 1828-1830, Oil on canvas, 48.5cm x 63.3cm, National Gallery of Victoria




The Dangerous Playmate, exhibited in 1833, Oil on mahogany, support: 26.7 x 27.9 cm, Tate Britain




Window in Venice, during a Festa, exhibited in 1831, Oil on canvas, support: 61.0 x 50.2 cm, Tate Britain




The Repentant Prodigal's Return to His Father, c. 1841, oil on panel, 85 x 114 cm, University of Oxford, The Ashmolean Museum




≪このエングレーヴィングと「ラマムーアの花嫁」の時代背景≫

 このエングレーヴィングはウォルター・スコット(Sir Walter Scott 1771 - 1832)の悲劇的小説「ラマムーアの花嫁」(The Bride of Lammermoor, 1819)の主人公であるルーシー・アシュトンを描いています。

 17世紀のイギリスは2回の革命を経験します。クロムウェルがピューリタン革命(1649年)によって国王チャールズ一世を処刑し、王制はいったん廃止されますが、クロムウェルの抑圧的な統治に国民の不満が高まって、1660年に王政復古が起こります。

 しかし王はピューリタンを抑圧したばかりかカトリック教会の復興と王権の強化をはかったために、これに反発した議会はプロテスタントの王と女王をオランダから招き、カトリック教徒である国王ジェームズ二世はフランスに亡命しました。これが名誉革命(1688~89年)です。

 「ラマムーアの花嫁」には対立する二つの家系が登場しますが、古くからの貴族であるラヴェンズウッド家はカトリック寄りのトーリー党、新興中産階級のアシュトン家はプロテスタントのホイッグ党という当時の政治的対立が絡む悲劇なのです。


≪「ラマムーアの花嫁」のあらすじ≫

 この物語のヒロイン、アシュトン家の令嬢ルーシーは、スチュアート朝を支持する貴族ラヴェンズウッド家の青年エドガーと恋に落ちます。彼女の父親は打算も手伝ってこの結婚に賛成しますが、ホイッグ党支持者である母親はルーシーをホイッグ党員である別の男と結婚させようとし、ルーシーを騙してエドガーが自分を捨てたと思い込ませて、自分が薦める結婚をどうにか承諾させます。

 ルーシーの結婚式の当日、外国から帰って来たエドガーはルーシーの夫と兄に決闘を挑み、悲しみのあまり気が狂ったルーシーはその夜に夫を刺して、自分も死んでしまいます。一方エドガーも決闘に向かう途中に流砂に飲み込まれてしまいます。


 1669年に起こった実話に基づくこの小説は当時たいへんな人気を呼んで、いくつかのオペラの原作になりました。よく知られているのはドニゼッティ(Gaetano Donizetti, 1797 - 1848)の「ランメルモールのルチア」 (Lucia di Lammermoor ナポリ・サン・カルロ歌劇場 1835年9月26日初演)です。この作品はドニゼッティの五十作めで、大当たりを取りました。


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本体価格 エングレーヴィングの価格 36,000円 (額装別)

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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