アロンゾ・チャペル作 「ジョン・スミス大尉の命を救うポカホンタス」 細密エッチングとエングレーヴィングによる佳作

Pocahontas Saving the Life of Capt. John Smith


原画の作者 アロンゾ・チャペル (Alonzo Chappel, 1828-1887)

画面サイズ  縦 186 mm  横 136 mm


スティール・インタリオ  1866年



【原画の作者について】

 アロンゾ・チャペル(Alonzo Chappel, 1828-1887)はニューヨークに生まれ、すでに9歳のときには1枚10ドルで依頼者の肖像画を描いていました。12歳のときには1枚25ドルに「値上げ」しましたが、それでもアロンゾ少年が描く肖像画は人気がありました。
 彼は歴史にも強い関心があり、アメリカ史上のできごとを残らず絵にしたいという野心を持っていました。彼は出版社と契約を結んでアメリカ史に取材した絵を描き、出版社は彼の絵をもとにエングレーヴィングを製作しました。アロンゾの絵はいまでも社会科の教科書に使われています。また「ワシントン大統領の就任式」という作品はワシントンの大統領就任150周年記念切手にも採用されています。彼が描いた絵は、植民地時代から19世紀までのアメリカ史に残る重要なできごとをすべて網羅しています。


参考 原画 Pocahontas Saving the Life of Capt. John Smith, 1861 カンヴァスに油彩 25 x 32.5 cm, The Art Museum of Western Virginia




【ジェイムズ・タウン建設当初のアメリカ先住民と白人の関係について】

 チェサピーク湾の南端付近に注ぎ込むジェイムズ川を少しさかのぼったところにジェイムズ・タウン国立史跡公園があります。ここは1607年にイギリスからの植民がジェイムズ・タウンを築いた場所です。

 この場所はもともとアルゴンキン・インディアンの一部族である パマンキ族の土地でした。この頃にはチェサピーク湾に白人が出入りするようになって1世紀近くがたっており、パマンキ族の若者がスペイン船に連れ去られて洗礼を受け、ドン・ルイス・デ・ベラスコ(Don Luis de Velasco)という名前になってイエズス会の宣教師と一緒に10年後に故郷に戻ってくるという事件もすでに起きていました(1571年)。このときパマンキ族は宣教師たちを攻撃し、ドン・ルイスを連れ帰って、ヨーロッパ人について詳しい知識を得ていました。


 1607年にパマンキ族を率いていたのはポウハタン(Powhatan)という族長でした。彼はチェサピーク湾周辺の30部族の征服者として強大な権力を有しており、諸部族がヨーロッパ人と行なう交易をすべてコントロールしていました。
 ヨーロッパ人がもたらす物資、特に金属製の農具や武器、日用品などは非常に有用であったことに加えて、パマンキ族がヨーロッパ製品の取引をコントロールするならば、内陸に住む諸部族に対するポウハタンの権威も高まります。このような理由で、ポウハタンは自らの支配地にジェイムズ・タウン植民地ができるのを許容する考えでした。

 またポウハタンはパマンキの援助がなければ白人は生活できず、したがってパマンキは白人をコントロールできると考えていました。事実その通りで、ジェイムズ・タウンの入植者達は自力で食料を調達できなかったのです。
 しかし入植者たちはパマンキに弱みを見せまいとして、かえって高圧的な態度を取るようになりました。「敵地」パマンキの村に入るときには襲われないための予防策としてパマンキの子供を人質に取る、食料の取引をいやがる部族を脅迫して無理矢理取引に応じさせるなどです。
 ジェイムズ・タウンができた当初のパマンキと入植者の関係は、ポウハタンが率いるパマンキとジョン・スミスが率いる入植者たちが、このように危うい力の均衡のもとでかろうじて平和を保っているという状況だったのです。


【この作品のテーマについて】

 ポカホンタス(Pocahontas, c. 1595-1617)は本名をマトアカ(Matoaka)といって、族長ポウハタンの娘でした。(ポカホンタスはあだ名で 「おてんば娘」の意味です。)
 彼女は1607年、12歳か13歳のときにジェイムズ・タウン入植者のリーダーである軍人ジョン・スミス(John Smith, 1580-1631)と出会いました。ジョンが捕虜になって彼女の村に連れてこられたのです。
 ジョンは歓待されたあと、平たい石の上に押しつけられて棍棒で殴り殺されそうになりました。このとき少女ポカホンタスは身をもってジョンを庇ったといわれています。

 ジョンが本当に殺されるところだったのか、それとも単なる儀式であったのかは説が分かれています。アメリカ先住民のあいだでは他の部族と友好関係を結ぶ儀礼として殺害するふりをするということが行なわれていたらしく、実際似たような儀礼で殺されかけているところを族長の娘に庇われて助かったという白人男性がジョン以外にもふたりいます。
 しかしジョンがポカホンタスと親しくなってパマンキの風習に通じたあとでも、自分がポカホンタスに救われたと信じ続けていたこと、ポカホンタスもジョンの考えを訂正しようとはしなかったことを考えると、ジョンは実際に生命の危機にあったのではないでしょうか。


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