ロベール・フォンタナ作 「イソップの物語り」 une fable d'Ésope 1878年のパリ万国博覧会出展作 パリ、グピル社によるアンティーク・フォトグラヴュール


原画の作者 ロベール・フォンタナ(Robert Fontana)

版元 パリ、グピル社(Goupil et Cie, Paris)


パブリシャー フィラデルフィア、ゲビー・アンド・バリー社(Gebbie & Barrie, Philadelphia)


画面サイズ  縦 200 mm  横 252 mm



 1878年5月1日から同年10月31日まで、パリのシャン・ド・マルス(Le Champ-de-Mars)において、万国博覧会(L'Exposition universelle de 1878)が開かれました。本品はこの博覧会に出品されたロベール・フォンタナの作品「イソップの物語り」(une fable d'Ésope / Aesop Narrating His Fables)を、パリのグピル社が美しい大判フォトグラヴュールとし、フィラデルフィアのゲビー・アンド・バリーから出版されたものです。


 この作品において、短躯の男性イソップは、六人の少女たちに物語を語って聞かせています。少女たちは笑いさざめきながらも物語の世界に引き込まれ、身を乗り出して熱弁をふるうイソップを、魅入られたように見つめています。イソップの横顔は庶民的で、キリシア・ローマ彫刻の理想化された容貌とは全く異なりますが、娘たちを魅了するその眼には、知性の輝きが宿っているはずです。





 フランス語「フォトグラヴュール」、英語「フォトグラヴュア」は、わが国でいう「グラビア」(フォトグラビア)と同じ言葉です。しかしながら「グラビア」が実際には輪転機による産業的オフセット印刷であるのに対し、アンティーク・フォトグラヴュア(古典的フォトグラヴュール)は手作業で製版を行う平版であり、両者はまったく異なります。





上の写真は現代のグラビア印刷を拡大して撮影したものです。写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。美術画集等を肉眼で見ると十分に美しく見えますが、現代のグラビア印刷は網点で構成されており、強力なルーペで拡大するとこのように見えます。





 上の写真は本品の一部を拡大して撮影したものです。写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。写っている面積は、グラビア印刷の拡大写真と同じです。古典的フォトグラヴュールにはもともと網点が存在せず、明暗の階調は無段階の滑らかさで再現されます。フォンタナが描いた油彩の筆遣いや、カンヴァス(画布)の折り目までが、忠実に再現されていることが分かります。網点による現代の美術印刷は、画家の筆遣いやカンヴァスの折り目を実物以下のサイズで再現することはできません。無段階の階調を有する古典的フォトグラヴュールは、原画におけるあらゆる細部のテクスチャを、ありのままに記録し、再現します。

 本品は劣化しない中性紙に刷られています。そのため、およそ百四十年前のアンティーク版画であるにもかかわらず、たいへんきれいな状態を保っています。紙の上下の余白部分が少し波打っており、また数か所に薄いしみがありますが、保存状態は十分に良好です。紙の波打ちは余白部分だけですから、そのままでも気になりませんが、マットを使って額装すればまったく見えなくなります。


 当店では無酸のマットと無酸の挿間紙を使用し、美術館水準の保存額装を提供しています。下の写真は額装例で、外寸 40 x 31センチメートルの木製額に、緑色ヴェルヴェットを張った無酸マットを使用しています。この額装の価格は 24,800円です。

 額の色やデザインを変更したり、マットを替えたりすることも可能です。無酸マットに張るヴェルヴェットは赤や青、ベージュ等に変更できますし、ヴェルヴェットを張らずに白や各色の無酸カラー・マットを使うこともできます。




《イソップについて》

 「イソップ」という英語読みで名を知られるアイソーポス(希 Αἴσωπος)は、紀元前620年頃に奴隷として生まれた人物です。出生地には諸説あって、ギリシア人とも、リュディア人、トラキア人、フリギア人とも言われています。これらはいずれも現在のギリシアから中近東にかけての地域です。

 イソップはふたりのギリシア人に仕えましたが、その知恵に感心した二番目の主人イアドモンはイソップを解放しました。知恵ある人として名声を獲得したイソップは各地を広く旅し、リュディア王国の首都サルディスではクロイソス(Croesus, d. c. 547 B.C.)の宮廷を訪れて、やはり王を訪ねてきていたソロン(Solon, c. 638-c. 558 B.C.)やタレス(Thales, 624-546 B.C.)とも会話したと伝えられています。

 イソップはデルフォイのアポロンの神託を侮辱したとしてデルフォイ人の反感を買い、紀元前 561年に岩から突き落とされて死んだといわれています。


 ずっと後の時代に編纂された伝記によると、イソップはたいへん醜い人であったといいます。そのような伝記は信憑性がたいへん薄く、史的イソップを復元する上では役に立ちませんが、この絵のイソップは後の時代の伝承に従って、まったく飾り気のない姿で描かれています。しかしそれゆえに彼の知恵の輝きはかえっていっそう強調され、物語を聞く乙女達の楽しげな様子と相俟って、きらりと輝く作品に仕上がっています。この作品は 1878年のパリ万国博覧会に出品されたものです。


参考 Robert Fontana, The Evocation of Souls




 版画を初めて購入される方のために、版画が有する価値を解説いたしました。このリンクをクリックしてお読みください。





フォトグラヴュールの本体価格 28,000円 (額装別)

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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