第一部 初期地球の環境変化と、生命の誕生

3. 海の誕生と、その影響

 月ができたときの衝撃で地球がどろどろに融けていた時代、大気には水蒸気と二酸化炭素のほかに、硫化水素(りゅうかすいそ)塩化水素(えんかすいそ)も含まれていた。時間が経って地球の表面が冷えると、水蒸気が液体の水になり、初めて雨が降った。これは硫酸や塩酸の雨で、200℃ぐらいの温度だった。雨は千年間降り続いて、ができた。

 

 硫酸と塩酸の海水は岩を溶かしてしまう。岩から溶けたカルシウム、ナトリウムは硫酸や塩酸と結びつき、酸性の水を中和する。中和した水には大気中の二酸化炭素が溶け込む。二酸化炭素は海水の中でカルシウムイオンと結びついて炭酸カルシウムとなり、海底に沈殿(ちんでん)して石灰岩(せっかいがん)になった。下に書いたのは、その反応式だ。この反応によって大気中の二酸化炭素が急に減ったので、二酸化炭素による温室効果もほとんどなくなり、大気と海の温度は現在と同じぐらいまで下がった。

 

* Ca2+ (aq) + CO32− (aq) → CaCO3

 

 物質が化合物の成分としてとらえられて自由にふるまえなくなることを、「固定」(こてい)される、という。二酸化炭素が石灰岩に固定されるだけで、大気と海の温度がそんなに大きく下がるのか、疑問に思う人もいるだろう。しかし、ある試算(しさん ためしに計算してみること)によると、いま地球上にあるすべての石灰岩が溶けて、二酸化炭素を大気中に放出した場合、気温は三百度上昇する、と言われている。大昔にはこれと逆のことが起こって、気温が急激に下がったのだ。





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