第二部 生物進化史

2. 遺伝と、進化の基本的な仕組み

 細菌のように原始的な生物も、脊椎動物のように高等な生物も、親と子は同じ種類の生物だ。金魚の親からは金魚が生まれる。猫の親からは猫が生まれる。親の性質と特徴が子供に正しく伝えられている。親の性質が子供に伝わることを遺伝という。

 

 生物の体の中で遺伝を担当しているのは遺伝子だ。遺伝子はデオキシリボ核酸という物質で、全ての生物の細胞にしまわれている。遺伝子は体の設計図だ。

 

 遺伝子は設計図だから、生物が生まれてから死ぬまで、ずっと変わらない。もしも生きている途中で遺伝子(設計図)が変われば、AさんがだんだんBさんになったり、猫が犬になったりしてしまう。

 

 

 遺伝子は親の特徴を子供に伝える役割も果たす。子供が両親に似ているのは、お父さんとお母さんから半分ずつ、遺伝子をもらうからだ。

 

 子供を作るとき、親の遺伝子(デオキシリボ核酸 DNA)の情報は、ふつうは正確にコピーされる。設計図の写し間違い(突然変異 とつぜんへんい)はめったに起こらない。もしも写し間違いが起こった場合、間違った設計図に基づいて作られた子供は、卵の中やお母さんのおなかの中で死んでしまったり、うまく育たなかったりする。

 

 しかしとても珍しい事だが、間違った遺伝情報(設計図)によって作られた子供が親よりも優れている場合がある。「優れている」とは「普通の子供よりも生き残り易く、子孫を増やしやすい」という意味だ。だから、ある生物のグループに優れた子供が生まれると、やがてそのグループは、優れた子供の子孫でいっぱいになる。まるで優れたリーダーに従うように、優れた子供と同じ性質を持つ生物へ、グループ全体が少しだけ改良されるのだ。小さな改良(小さな進化)でも、積み重なれば驚くような進化が起こる。これが進化の基本的な仕組みだ。

 

 

 小さな改良が積み重なって起こる進化は、ダーウィンの時代から研究されてきた。しかしごく最近になって、生物は遺伝子組み換えにより、突然(とつぜん)飛躍的な進化を成し遂げる場合があることがわかって来た。

 

 遺伝子組み換えによる飛躍的な進化は、ふたつの方法で起こる。ひとつは別種の生物の遺伝子を受け取り、自分の遺伝子に組み込んでしまう方法だ。生物間の遺伝子組み換えは、動物と植物、ウイルスと動物のように、系統がかけ離れた生物の間でも、人為的な介在無しに起こることが知られている。もうひとつの方法はレトロトランスポゾンという遺伝子の働きによる。レトロトランスポゾンの説明は、別の機会にゆずる。





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